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KILLERS キラーズ

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(原題:Killers 2013年/日本・インドネシア合作 138分)
監督/ティモ・ジャヤント、キモ・スタンボエル 製作/千葉善紀 製作総指揮/ギャレス・エバンス 脚本/ティモ・ジャヤント、牛山拓二
出演/北村一輝、オカ・アンタラ、高梨臨、ルナ・マヤ、黒川芽以、でんでん、レイ・サヘタピー

概要とあらすじ
日本とインドネシアの初の合作映画で、東京とジャカルタを舞台にネットを通じて知り合った殺人鬼同士が交錯していく様を、猟奇テイストやノワールのムードを融合させて描いた長編作。サディスティックなサイコキラーを演じる北村一輝とインドネシア俳優のオカ・アンタラが主演し、高梨臨、でんでんらも共演する。人を殺人の標的としてしか見ていない殺人鬼の野村は、無機質な部屋で女を殺害し、その様子をインターネット上にアップする。ジャカルタでジャーナリストとして活動するバユは、偶然見つけたその動画を見てしまい、残酷さの中に漂う美しさに魅了される。そしてある日、強盗に襲われたバユは身を守るために反撃し、強盗を殺害。その死の瞬間を撮影し、ネットに投稿する。今度はその映像を見た野村がバユに共感を抱いていく。「ザ・レイド」のギャレス・エバンスが製作総指揮。シンガポールで製作したスラッシャー映画「MACABRE」(2009)で注目された若手監督コンビのモー・ブラザース(ティモ・ジャヤント&キモ・スタンボエル)がメガホンをとった。(映画.comより



カズキ! カズキ! カズキ!

『冷たい熱帯魚』『凶悪』の製作陣と
『ザ・レイド』ギャレス・エバンス監督が製作総指揮と聞けば
真っ当な男の子なら観ないわけにはいかない
『KILLERS キラーズ』
なんて思っていたら、映画館の隣の席には
ひとりで来ている25〜6歳と思しき女性が。
あのご婦人は素晴らしいお方に違いありません。
どうせ、北村一輝目当てで来てるんだろうなんて考えるのは
女性をバカにしている証拠です。
彼女は血に飢えたシネフィルなのです!! たぶん!

監督はモー・ブラザースというインドネシアの二人組。
『ABC・オブ・デス』では
地下室で行なわれるオナニー格闘技を撮った監督です。
インドネシアは一時は映画産業が衰退の危機に瀕し、
検閲も厳しいそうですが、幾多の困難をかいくぐって生き延びた
新しい才能が次々と出てきているようです。
日本とインドネシアの才能が意気投合して
ひとつの作品を作るなんて、なんだかうれしいじゃありませんか。
日本国内ではテレビ特番を映画化したTHE MOVIEしか作れないなら
世界中で気の合う奴を見つければいいんですよ。
あたかも、野村(北村一輝)バユ(オカ・アンタラ)
「I Found You」したみたいに。

主人公のサイコパス野村は
北村一輝のためにあるようなキャラクター
といっても
過言ではないでしょう。
北村一輝は『JOKER 厄病神(1998)』の役作りのために
歯を抜いたのは有名な話ですが
やっと、あの生まれもっての三白眼を有効活用するときが来たのです!
彼はどうみてもハンサムだけど
どうみても、まともな人間の顔つきではありません!
(失礼な言い方じゃこと)
長い下睫毛に縁取られた三白眼によるアジア内無国籍顔が、
まさにこの作品にピッタリなのです。

野村は、目をつけた女性をエスコートするように拉致して
いたぶって殺すのをビデオで撮影し、ネットにアップしていますが
「鈍器」とはうまくいったもので、
殺しに使う道具が、ハンマーに金属バット、コンクリートなどなど
いかにも鈍く痛そうなのが特徴。
痛いシーンはいっぱい出てきますが
単に驚かせるようなゴアシーンが多いわけではなく、
いや〜な痛さの表現の多さに監督のこだわりを感じます。
殺人が終わった後、ブラックライトを当てて
壁の指紋まできれいに拭き取って掃除するシーンから
野村の潔癖さが窺えますが
モップで床を拭く野村が履いていた
ちょっとサイズが小さめのスリッパが妙に印象的です。

自閉症の弟をもつ久恵(高梨臨)が登場して
野村の次なる餌食は久恵かと思ったら
野村は久恵を自分と同類だと見込んでいたという意外な展開。
どんでん返しというほどのものではありませんが
クライマックスでの、スタンガンの伏線回収も含めて
素直に驚くことができて見事でした。

かたや、仕事も家庭もうまくいかず鬱屈がたまっている
ジャカルタのジャーナリスト、バユ(オカ・アンタラ)
野村がアップした殺人動画を見て
嫌悪しながらも自分の狂気を覚醒させていくのです。
バユが最も憎んでいるのは
汚職まみれの有力者ダルマ(レイ・サヘタピー)
『ザ・レイド』でも悪党の親分だったレイ・サヘタピーさんは
インドネシア映画界の復興に尽力された、
本当はとってもいい人なんですのよ。念のため。

バユは偶発的に初めての殺人を犯してしまいますが
このタクシー車内での強盗とのやりとり
グズグズなだけに余計に怖い。
このシーンをはじめとして、ホテルの廊下での格闘シーンなど
狭い場所での演出と撮影が本当に素晴らしいです。

サイコパスの凶行を裏付けるのにありがちなのが
幼少期のトラウマだったり、過度なマザコンだったりしますが
この作品ではシスコンでした。
サイコパスの思考を短絡的に根拠づけて
わかりやすい原因を欲しがるのは、とくにマスコミの常套手段で、
あくまで正常な(と思っている)人間の思考によるものです。
ですから、野村の凶行の根拠としてシスコンが登場したときは
またかと正直がっかりしましたよ。
ところが、大好きな姉と決別した野村は
バユのいるジャカルタへ向かうのです!
そう、野村は殺人が好きだから人を殺しているのです!
そうこなくっちゃ!
そもそも野村は殺人を撮影してネットにアップしているのですから
殺人が好きなだけではなく、まさにいまどきネット時代の
自己顕示欲と承認欲求をも併せ持っています。
そうやって、わかりあえる友達を捜している寂しがり屋です。
アップするのが、ランチや猫や雲の写真ではなく
殺人だというだけです。


バユは、野村によって自分の狂気に目覚めましたが
怨みや怒りによって増幅したバユの狂気には一応の大義があるので、
たとえ野村が同類だと見初めても、野村とは根本的に違います。
生活苦に耐えかねて弟と心中を図る久恵もバユと同じですが
この作品は「殺してやりたい」「もう死んでしまいたい」という
少なからず人の心に潜む狂気に
野村を通じてつけ込んでくる
のです。
殺したいんだろ? じゃあ、殺しちゃえよ、と。

黒人のポン引きをトイレでメッタ刺しにして殺したあとで
(このシーンの腹を刺すときの腕のスピードも最高)
警察に尋問されている野村が
ふたりの刑事が会話するうしろでトランクに女性を押し込むという
まるでコントのようなシーン
があって
映画館でも笑い声が聞こえたのですが
あとになって、よく考えてみると
あのシーンで笑ってしまう心理というのもそら恐ろしいもので
まるで「ほら、いま笑ったよね? それがあなたの狂気だよ」
と言われているようで、あのシーンがあることの重要性を感じます。

足が不自由な相手の足を真っ先に攻撃するという
野村の容赦ない狂いっぷりが恐ろしいクライマックスを経て
ラストシーン。
あのヒッチコックみたいなCG、いるかなあ〜? わはは。
なんか、いろいろ台無しになったような気がしなくもないが
その直前の、野村とバユが絡み合って落ちかけているときの
野村の足の挙げ方と構図がかっこよく、
そのまま二人の姿が消えるまでスローモーションでよかったのに。

でんでんの役どころがいまいちピンときませんでしたが
純粋な日本映画とは全く違った趣と
おそらく潤沢ではないであろう予算にもかかわらず
チープなどころか、しっかりと重厚な画づくりで
余計なCGを除けば、傑作と言って申し分ない作品です。







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