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横道世之介

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(2012年/日本 160分)
監督/沖田修一 脚本/沖田修一、前田司郎 撮影/近藤龍人 美術/安宅紀史 編集/佐藤崇 音楽/高田漣
出演/高良健吾、吉高由里子、池松壮亮、伊藤歩、綾野剛、井浦新、國村隼、堀内敬子、きたろう、余貴美子、朝倉あき、黒川芽以、柄本佑、佐津川愛美

概要とあらすじ
「悪人」「パレード」の吉田修一による青春小説を、「南極料理人」の沖田修一監督が映画化。1980年代を舞台に、長崎の港町から大学進学のため上京したお人好しの青年・横道世之介や、その恋人で社長令嬢の与謝野祥子らが謳歌した青春時代を、心温まるユーモアを交えながら描く。主人公の世之介に高良健吾、ヒロイン・祥子に吉高由里子ほか、池松壮亮、伊藤歩、綾野剛らが出演。劇団「五反田団」主宰の劇作家で小説家の前田司郎が共同脚本を担当。(映画.comより



吉高パワー全開の同窓会ムービー

作品のタイトルにもなっている
『横道世之介』という主人公の名前に
キャッチーさと独特の胡散臭さを感じて敬遠していたのですが
なにやら随分と評価が高いようなので
しょうがないから、ちょっと観てやるかくらいの気持ちで
DVDを手にした次第です。

沖田修一監督作品は、『キツツキと雨(2012)』は未見ですが
飯島奈美が料理を担当した
荻上直子監督『かもめ食堂(2006)』などの一連の作品による
料理映画の流行にのって作られたとおぼしき
『南極料理人(2009)』がグズグズの出来で
新作を期待する気にはまったくなれませんでしたし、
主人公を演じる高良健吾吉高由里子
『蛇にピアス(2008)』という
鑑賞していることが拷問のようなクソゴミ映画以来の競演ということで
まったくもって興味を持たなかったのですが
いやはや、この作品は評判通りの良作でした。
監督も俳優も日々成長しているわけですよね。
ま、『蛇にピアス』の場合は監督の無能さが問題なのですが。

舞台となるのは、主に1980年代の東京。
沖田修一監督は1977年生まれということですから
監督自身の体験が反映されているとは思えませんが
『苦役列車』に代表されるようなプチ懐古主義的な作品が
続々作られる背景には
社会の中心を担うべき40代以降の世代が
現在と未来に感じる閉塞感の表れのような気がします。
(『三丁目の夕日』のような、もっとも治安が悪かった時代の
 当たり障りのない部分だけを美化して
 ノスタルジーをすくい上げるような作品は論外ですが)

オープニングに映し出される新宿駅前
サクラヤの看板斉藤由貴の巨大ポスターなどに始まり
モブたちのファッションから小物に到るまで
当時を再現している美術が素晴らしい。
その後、横道世之介(高良健吾)がたどり着く
家具がなにもない1Kのアパートの一室がもたらす
「ここがオレの城」的な新しい生活が始まる高揚感は
いまでも手に取るように思い返すことができます。
(もう二度とあのトキメキには戻れないだろうけど……)

いかにもぼんやりしてそうな世之介ですが
入学式ですぐに友達ができ、直後に可愛い女の子と知り合ったりと
なんだよ、このやろうと癪に障るのですが
その後の加藤(綾野剛)との出会いも含めて
「声をかけたらそれはもう友達」みたいなノリが
単純にうらやましく思えました。

「自然な台詞回し」というものは
えてしてただグダグダになりがちですが
この作品における「自然さ」は絶妙でした。
世之介と倉持一平(池松壮亮)のやりとりに
その面白味がもっとも反映されていると思いますが
僕が気に入っているのは
大人になって結婚生活を送る倉持と阿久津唯(朝倉あき)のシーンで
風呂上がりにビールを飲む倉持につまみを出しながら
唯が言う「ごはんつぶは?」という一言です。
「ごはん」ではなく「ごはんつぶ」。
このかんじ、うまく説明するのが難しいのですが
言葉のチョイスが最高です。
わかってもらえる人はいるでしょうか。

セリフに限らず、とくに手に持ったものを落としてしまう演技は
どうしてもわざとらしく見えてしまうものですが
夜の公園で、加藤(綾野剛)が世之介に
スイカを手渡そうとして落としてしまうシーン
見事としか言いようがありません。
また、世之介が汗の匂いを気にする仕草も
そのことについて、とくに説明することもなく
世之介のコンプレックスを表現していて素晴らしい。

この作品で、もっとも強烈な魅力を放っているのは
やっぱり与謝野祥子に扮する吉高由里子でしょう。
彼女が本来持っている不思議ちゃん的なイメージはそのままに
祥子の話すお嬢様言葉が
エキセントリックだけどバカじゃないキャラクターを
見事に補完しています。
初めてのダブルデートでハンバーガーを食べるシーンでの
世之介がいうことにいちいち大爆笑でウケてくれる祥子なんて
男にとっては最高の女の子です。
積極的な祥子に対して、世之介の過剰な鈍感さが
なんとか物語を引き伸ばそうとしている感は否めませんが
恥ずかしさのあまり、カーテンに隠れる祥子は
あのキャラクターだからベタでも許せる
可愛さに溢れています。
そして、「今日から世之介さんを呼び捨てにします」
宣言した祥子が「世之介! 世之介!」と繰り返すシーンでの
吉高由里子の愛おしさったら、もうたまりません。
そりゃ、メイド(広岡由里子)も泣くわ。

どうしても引っかかるのは世之介の死因です。
2001年の新大久保駅乗客転落事故をモデルにしているようですが
実際の事故でもあり、また被害者の行動から受け取れる
勇敢さや正義感のようなものが
世之介のキャラクターにとって有用とは思えません。
このような事実に基づく深刻さをつけ加えなくとも
世之介を失うことの哀しさは十分に伝わると思うのです。
(ラストの余貴美子によるナレーションも蛇足感が半端ない)
美しい思い出として残るために、
世之介が先立つのは物語上の必然だとは思いますが
「なにやってんだよ、世之介は」と言いたくなるような
もっと、どうしようもない死に方のほうが
よかったんじゃないかと思います。
たとえば、助けた犬に噛まれて死ぬとか。

世之介は「ありきたりな普通の学生」というような
紹介のされ方を目にしますが
倉持と唯のでき婚や、加藤がゲイであることを告白されたときの
世之介の態度を見るにつけ
僕には世之介が「普通=一般的」には思えませんでした。
世之介はまさに天使のような存在で
美しいままであってほしい無邪気な学生時代の思い出を
実体化したような存在
に感じます。
社会人になってからの友人とは明らかに違う、
同窓会で再会する学生時代の友人のような
たとえ何年も会っていなくても通じ合えるだろうという
不思議な確信を持つ共通認識の総体が
世之介のように感じます。
そのような意味で
現在、学生生活を送る青春まっただなかの人には
ピンと来ない人がいるかも知れないなとは思いました。

この作品で、涙するものがあるとしたら
それは世之介の死そのものではなく、
青春としか表現しがたいなにかの死なのです。





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