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舟を編む

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(2013年/日本 133分)
監督/石井裕也 原作/三浦しをん 脚本/渡辺謙作 撮影/藤澤順一 美術/原田満生 編集/普嶋信一 音楽/渡邊崇
出演/松田龍平、宮崎あおい、オダギリジョー、黒木華、渡辺美佐子、池脇千鶴、鶴見辰吾、伊佐山ひろ子、八千草薫、小林薫、加藤剛、宇野祥平

概要とあらすじ
出版社の辞書編集部を舞台に、新しい辞書づくりに取り組む人々の姿を描き、2012年本屋大賞で第1位を獲得した三浦しをんの同名小説を映画化。玄武書房の営業部に勤める馬締光也は、独特の視点で言葉を捉える能力を買われ、新しい辞書「大渡海(だいとかい)」を編纂する辞書編集部に迎えられる。個性的な編集部の面々に囲まれ、辞書づくりに没頭する馬締は、ある日、林香具矢という女性に出会い、心ひかれる。言葉を扱う仕事をしながらも、香具矢に気持ちを伝える言葉が見つからない馬締だったが……。馬締役で松田龍平、香具矢役で宮崎あおいが出演。監督は「川の底からこんにちは」「ハラがコレなんで」の俊英・石井裕也。(映画.comより



主人公がマジメでも、作品はフマジメ。

数々の賞を受賞し、
キネマ旬報2013年日本映画の第2位にも選ばれた
『舟を編む』
賞レースにまったく興味がない僕は
このような輝かしい賞賛が鑑賞の動機になることはないのですが
面白いと思うかどうかはそれぞれだとして
一定のクオリティが保証されているのを
期待する気持ちがあるのは否めません。
それを認めたうえで、結果から申し上げますと
どうやったらこの作品に高評価が与えられるのか
全く理解できませんでした。
ちなみにキネ旬では、同年の作品『地獄でなぜ悪い』はランク外です。
ありえへん!!

冒頭からオダギリジョー扮する西岡
あからさまな道化ぶりにいやな予感が漂っていましたが
馬締光也(松田龍平)が登場し、
先輩の荒木(小林薫)が定年退職で編集部を去るまでの約30分は
辞書づくりの説明に終始しています。
たしかに、辞書づくりという仕事が特殊なために
一体どんなことをするのか説明する必要があるのは理解できますが
その説明の仕方は、
「朝起きました。朝ご飯を食べました。歯を磨きました」というような
国語が苦手な小学生が書くダメな作文のように
ただただ順を追って状況をセリフで描写しているだけで
取扱説明書を読み聞かされているようです。
それぞれの登場人物の考えや想いも
「大渡海(だいとかい)」という辞書のコンセプトも
すべて懇切丁寧にセリフで語られます。
とくにベテランの松本(加藤剛)が喋りすぎ。
辞書づくりのノウハウから心構えまで
聞かれもしないのに真っ先に語ってしまいます。
辞書づくりにまつわる、そのような態度や思い入れのようなものは
登場人物たちが切磋琢磨していく中で学ぶべきもので、
だからこそ観客も一緒に
ことの重大さに感情移入できるようになると思うのですが。

辞書づくりに開眼した馬締が大量の辞書を買い込んでくるのは
彼のやる気を表現したのかもしれませんが
辞書を作っている編集部には、他社の辞書なんて山ほどあるはずなので
トホホな演出なのはさておき、
「今を生きる辞書」と謳う「大渡海」が
新しく流通した言葉から、ら抜き言葉や間違った言葉の用法まで
盛り込もうとするのはさすがに無理があるし、キリがない。
ましてや、辞書を完成させるには10〜20年はかかると
最初から言っているのですから
その編集作業の間に、さらなる新しい言葉が生まれるのは
容易に想像できるはずで
「大渡海」のコンセプト自体に疑問が浮かび、
辞書というよりは「現代用語の基礎知識」的なもの
目指しているようにしか思えません。
(その「現代用語の基礎知識」もどっかいっちゃいましたが)

辞書づくりのうんちくが終わったと思ったら
香具矢(宮崎あおい)が登場して
今度は包丁うんちくです。
へえ〜って言わせたいんでしょうか。
そんなネタ的なうんちくの羅列によって、
物語への感情移入の度合いが増すわけはありません。

そもそも、馬締(=マジメ)と香具矢(=カグヤ)という
怪獣につけるようなネーミングセンス
人をバカにしているようにしか思えません。
香具矢は満月の夜に登場するので、
そう名づけられたのかもしれませんが(もしくはその逆)
香具矢=かぐや姫ならいつかは月に帰らないといけないはずなのに
香具矢は月に帰るどころか、馬締と結婚します。
この発想の浅はかさに背筋が凍ります。

馬締は香具矢に一目惚れして、恋文を渡すのですが
「私も好きです」と香具矢が馬締の想いを受け入れる動機が
さっぱりわかりません。

終始、もじもじうじうじしている馬締に対して
料理の味見をさせたり、遊園地に誘ったりと
勝手にどんどん近づいてきてくれる香具矢は
馬締にとってあまりにも都合のいい女です。
馬締のことを「みっちゃん」と呼ぶのは、おばあちゃんゆずりで
ふたりの親密度を示す指針にはなるのかもしれませんが
そこは「マジメくん」とかで通さないと
馬締(=マジメ)なんてふざけた名前をつけた意味がありません。

馬締と結婚した後は
香具矢はただの貞淑な妻に成り下がってしまい、
板前を目指す女性の葛藤はどこへやら。

ただの料理のうまい嫁さんです。
香具矢が抱える問題は、物語上何の役にもたっていません。
香具矢にまつわるエピソードはまったく必要がありません。

僕が非常に腹が立ったのは、
徹夜続きの馬締に雑煮をつくって運んできた香具矢に対し、
馬締は「いつもありがとう」とかいうだけで
雑煮にまったく口をつけなかったことです。
喰えよ! 雑煮を! ばかやろう!!

それぐらい辞書づくりが過酷だとでも言いたいんでしょうか。
板前の香具矢が作った雑煮には辞書ほどの価値はないんでしょうか。
ひとの仕事に対する敬意がまったく感じられません。
「ありがとう」なんてセリフで感謝を表現するより
なんにも言わないで、空になったどんぶりを見せたほうが
よっぽど香具矢に対する愛情と敬意が伝わると思うのですが。

最近のオダギリジョーは
「オダギリジョー風」な役柄を任されることが多く
ちょっと気の毒な気もしますが
(彼自身がなにを演じても全部同じだといえなくもないが)
ちゃらんぽらんに見える西岡が
じつは辞書づくりに深い思い入れがあって
転属を命じられて自分を犠牲にしてまでも
「大渡海」を守ろうとする動機もまったく不明です。

一番驚いたのは、三好麗美(池脇千鶴)と西岡が
馬締の部屋に誘われたシーンです。
西岡が馬締に感謝のことばをかけられると
「お前、泣かせるなよ……うえ〜ん!
 おれ、こいつ(麗美)と結婚するぅ!」

……なんですか、この茶番は。
その後、西岡と麗美が寝込んだ後に
香具矢がタッパにつめた煮込みを持って帰ってくるのですが
これ、3人が酔っぱらって盛り上がっているところに
香具矢が帰ってきて、タッパの煮込みをつまみに
4人で飲んだほうがよくありませんか?

そこでお調子者の西岡に
「香具矢ちゃんは馬締のどこが好きなのぉ〜?」って聞かせれば
馬締に惹かれた香具矢の気持ちが少しは理解できたかもしれません。

また、営業マンとなった西岡が、
「大渡海」の編集部をふらっと訪れるシーンも
「これ見てみ。『ダサい』ってやつ。
 この語釈考えたの、おれなの。用例もおれの体験なの」

と、観客がすでに知っている事実を
あらためてセリフで説明する必要がどこにあるんでしょうか。

最大の問題は、馬締にはなにひとつ葛藤がないことです。
重大な校正ミスが見つかり、編集部が窮地に陥るのはたしかですが
いくら馬締が責任を感じようとも、馬締のミスとは言いきれません。
「大渡海」の編集部に配属されたのも
一目惚れした香具矢にあっさりOKをもらって結婚しちゃうのも
馬締はなにひとつ障害にぶち当たることもなく
自分の人生を勝手に盛り上げてくれる善人たちに囲まれて
好きな仕事と好きな女性を手に入れただけです。


ラストで海を眺める馬締に対して、香具矢は
「やっぱり、みっちゃんて、面白いね」というのです。
なにが? アイツノナニガオモシロイノ?

石井裕也監督は『川の底からこんにちは』でもそうでしたが
廃れいく職人技みたいなものが好きなんでしょうか。
世知辛い現代に対する批判みたいなものを
感じないわけではありませんが
遅刻してきたやつに「そんなに慌てるなよ」といわれているような
不快感を感じざるを得ません。
ていうか、原作に問題があるのかしら。
読んでみようとは全然思わないけど。

なんとか褒めるところがあるとすれば
美術くらいかねぇ。





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