" />

先生を流産させる会

senseiryuuzan.jpg



(2011年/日本 62分)
監督・脚本/内藤瑛亮 撮影/穴原浩祐 照明/星野洋行 録音/黒須健 美術/原太一 編集/冨永圭祐
出演/宮田亜紀、小林香織、高良弥夢、竹森菜々瀬、相場涼乃、室賀砂和希、大沼百合子

概要とあらすじ
2009年に愛知県半田市の中学校で起こった実際の事件をもとに映画化。郊外の女子中学校に勤める教員のサワコが妊娠し、退屈な毎日に刺激を求めていた生徒たちが色めき立つ。しかし、複雑な家庭環境に育ったミヅキらのグループは、サワコが性交渉をもったことを汚らわしく思い、眉をひそめる。ミヅキらは「先生を流産させる会」を結成し、理科室で盗んだ薬品をサワコの給食に混入するなど嫌がらせを始めるが……。スラムダンス映画祭で上映された「牛乳王子」(08)ほか、これまでいくつかの短編を手がけてきた内藤瑛亮監督の長編第1作。(映画.comより



教育委員会いわく「あくまで稚拙ないたずら」

「“先生を殺す会”よりも“先生を流産させる会”という言葉のほうが、
 遥かにまがまがしく、おぞましい。」

と、内藤瑛亮監督がインタビューで語っているとおり
『先生を流産させる会』というタイトルが放つ気持ち悪さには
並々ならぬものがあります。
一昔前に少し話題になった
「『どうして人を殺してはいけないのか』という質問に
論理的に答えられるか」という問題と同様に
そんなことまで論理を用いないと通用しないのかという
絶望感も伴います。
先生を攻撃して「お礼参り」するのではなく
先生が困ったり悲しむのをみて喜ぶという幼稚さとともに
流産させるということの重大さを理解していない想像力のなさに
唖然とするほかありません。

2009年、愛知県半田市立中学に通う
1年生の男子生徒11人によって結成
された
「先生を流産させる会」をモデルにしたこの作品は
先生の給食に異物を混ぜたり、イスのねじを緩めたりするシーンが
事実に即しているものの
「先生を流産させる会」のメンバーが
男子生徒から女子生徒に大きく変更されているのは秀逸です。
男子生徒の場合、女性教師に対する嫌がらせが
好きな女の子をいじめているような可愛げが出てしまいかねないのが
(実際の事件の男子生徒達に
 可愛げなんて感じていないので誤解なきよう)
女子生徒にすることで女性特有の陰湿さが増し
女性にしかわからない初潮〜妊娠〜出産にまつわる事情も加わって
テーマに深みを与えています。

と、まあ、
タイトルのおぞましさに大きな期待を持って観たわけですが
残念ながら、がっかりしたと言わざるを得ません。

妊娠しているサワコ先生(宮田亜紀)に対して嫌がらせを行なう
「先生を流産させる会」のメンバー5人の女子生徒たちですが
失礼ながら、リーダー格のミヅキ(小林香織)を除いた4人に
全く個性と華がありません。
その没個性が逆に恐ろしいといえなくもないけれど
正直、僕にはひとりひとりの区別もつきませんでした。
ミヅキに扮する小林香織(なんとこのとき小学6年生)をはじめ、
5人とも演技経験が乏しいのは一目瞭然で
表情や仕草からキャラクターを読み取ることはできません。
また、いつもつるんでいるのに
いわゆるガールズトークに興じるシーンがないのも残念なところ。

モンスター・ペアレンツの存在も盛り込まれていますが
たったひとりのバカ親をクローズアップするより
どうせならいろんなバカ親を見せてほしかった。
なぜなら、イカれた母親ひとりだと
あの母親の頭がおかしいだけということになってしまい
親という存在の総体が描けないと感じるからです。
あのバカ親はかなりエキセントリックに描かれていると
そう願いたいところですが
僕の友人の中学校教師に話を聞けば
生徒の親と揉めたら余計なことはせずに
弁護士に相談する段取りになっているそうで
サワコ先生が訴訟費用の保険に入ろうかと悩むシーンは現実なのです。
……なんなんでしょう、ガッコーって。

ミヅキたち5人が指輪と化粧品を強盗するシーンは
制服も着ていることだし、すぐに足がつくはずで拍子抜けですが
その直前の通りがかった子供に向けてカートを転がすシーンでも
ぼけっとした警備員も子供の親も
ミヅキたちになんにも注意しないのはどういうことなのか。
子供を𠮟れない大人を表現したんでしょうか……
ミヅキの内面描写にとらわれすぎている感じがして
周囲の反応にどうにもリアリティーが感じられません。

ラストの修羅場でも、あいかわらず無表情のミヅキでしたが
とにかく非常にテンポが悪く、
アクションとしての緊迫感はまるでありません。
ずっと後ろ姿でミヅキに迫られるサワコ先生からは表情が窺えず、
さらにはもっとも守るべき腹をさらけだして横たわり
やすやすと流産させられてしまいます。

その後も本来ならサワコ先生は痛みでのたうち回るはずですが
股から血を流しながら大の字になっているのは
どうしたことか……

ラストシーンで、サワコ先生とミヅキは
河原みたいなよくわからないところに
流産した子供の遺灰(?)を埋める
のですが
(あんなところに、ふらっとやってきて埋めていいわけないと思うのだが)
お腹の子が死んだら殺した奴を殺すとまで言っていたサワコ先生が
ミヅキと和解したかのようで、がっかりです。
「(子供が)いなかったことになんかできないの」
教訓めいたサワコ先生のセリフで終わりますが
これでは子供に対する母親の想いの重さが感じられず
流産してしまった子供は
ミヅキに教訓を与えるために命を宿ったように思えて残念です。

DVDには、『廃棄少女』という
この作品とほぼ同じ出演者の内藤瑛亮監督によるトホホな短編とともに
舞台挨拶の様子も収録されていましたが
スクリーンの前で撮影の思い出をそれぞれ語るミヅキたち5人は
作品の中よりも、あきらかに活き活きとして個性的にみえました。





にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ 
↑お気に召したらクリックしていただけますと、もんどりうって喜びます。
関連記事
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

«  | ホーム |  »

プロフィール

のほうず

のほうず
映画が好きで観るのはいいが、
かたっぱしから忘れていくので
オツムのリハビリ的ブログ。
******************
当ブログの文章・画像およびイラストの無断転載を禁じます。引用される場合は、出典の表記と当ブログへのリンクを設定してください。

FC2ブログランキング

FC2Blog Ranking

お気に召したら
クリックお願いします。
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

スポンサードリンク

↓過去の記事はこちらから!↓

検索フォーム

QRコード

QR

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

カウンタ