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パンチドランク・ラブ

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(原題:Punch-Drunk Love 2002年/アメリカ 95分)
監督・脚本/ポール・トーマス・アンダーソン 撮影/ロバート・エルスウィット 編集/レスリー・ジョーンズ 音楽/ジョン・ブライオン
出演/アダム・サンドラー、エミリー・ワトソン、ルイス・ガスマン、フィリップ・シーモア・ホフマン、メアリー・リン・ライスカブ

概要とあらすじ
「ブギーナイツ」「マグノリア」のポール・トーマス・アンダーソン監督の第4作。食品会社のマイレージ・キャンペーンの盲点を突き、プリンを大量に買い込んで金儲けした男の実話を元に、7人の姉に抑圧されっぱなしの真面目だがサエない男が、運命の恋に出会っての大騒動を描く。アダム・サンドラー扮する主人公と恋人の純愛場面で流れる曲は、ロバート・アルトマン監督の「ポパイ」でオリーブ役シェリー・デュバルが歌った歌。(映画.comより



愛の拳でやっつけちゃうぞ!

たとえベルリン国際映画祭で金熊賞を獲ろうとも
ポール・トーマス・アンダーソン監督作『マグノリア(1999)』
好きになれない理由は
空からカエルが降ってくる有名なシーンはもとより、
セックス教の伝道師や元クイズ王の男などなどの
登場人物たちの設定の特殊さが
奇をてらっているようにしか思えず
まるでバカにされているように感じるからです。
解釈を拒むために配置された意味ありげなアイテムや設定が
鼻につくのです。
だからといって、かの松本人志が『パンチドランク・ラブ』を評して
「映画の基礎ができていない」という
かなり殺傷力の高いブーメランを放り投げたのには
開いた口がふさがらず、ましてや賛同する気もないのですが。

さて。
『パンチドランク・ラブ』においては
もっとも意味ありげに存在し続けるハーモニウム(小型オルガン)
『マグノリア』と同様のいらだちを感じないわけではありません。
もちろん、ハーモニウムがストーリー上で
バリー(アダム・サンドラー)リナ(エミリー・ワトソン)
恋の橋渡しになったりしないのが不満なのではなく
ハーモニウムがハーモニウムである必然性が理解できないので
その思わせぶりな態度にいらっとくるのです。
暗い事務所にハーモニウムを持ち込んだバリーの顔に
ふっと光が当たり、バリーの笑顔が浮かび上がるのをみると
バリーにとってなにかしらよい徴であることは
間違いないのですが。

とはいえ、不可解なことが多いこの作品が
『マグノリア』ほど鼻につかずに受け入れられるのは
終始、夢のような(もしくは夢そのもの)演出だからです。

冒頭、デスクしかない倉庫で電話をしているバリーが
暗闇を抜け、シャッターを開けて通りに出ると
遠くから近づいてきた赤い車が突然爆発し、クラッシュ。
驚くバリーの前へまた別の赤いタクシーが急停車し
さきほどのハーモニウムを置いて去っていきます。
バリーは動揺したそぶりをみせるものの
次のカットでバリーはまた別の電話をしています。
そこへ現れるのがリナ。
車を預かってほしいというやりとりのあとで
バリーはようやくハーモニウムを取りに行き、
両手で抱えて戻ってくるのですが、
戻ってきた場所にはデスクだけではなく、
在庫の山と事務所用のプレハブスペースがあるのです。

すでにこの時点で現実の物語なのか
バリーの夢の中なのか判然としなくなっています。
全編にわたって差し込むフレアが幻想的な世界観を後押ししますが
そもそもバリーがマグボトルまで用意して
早朝から(もしくは一晩中)倉庫にいる
のが不可解で
あたかもリナがやってくるのを待ち受けているかのようです。
普段の彼と違うという(普段の彼がどんな服装か知らないが)
昔のやすきよみたいなブルーのスーツを着こんだバリーに
変化が訪れているのは明らかです。

バリーがマイレージのクーポンがついたプリンを買いあさるのは
実在の人物がモデルになっているそうですが
旅行の予定もなく、飛行機に乗ったことすらないバリーが
マイレージに目をつけるのは、商品の価格との差額による利益よりも
どこか違う場所へ旅立ちたいという願望
表しているのではないでしょうか。

口うるさい7人の姉に囲まれて育ったバリーが突発的に見せる暴力
彼の鬱屈の深刻さを表していると思いますが
同時に7人の姉の存在が女性不信の原因にもなっています。
自分を認めてくれるリナとの出会いによって、
いらだちを爆発させるためだけだったバリーの暴力は
愛する人を守るための力へと変化していきます。
寂しさを紛らわすためにたった一度だけ利用した
テレフォンセックスの美人局にひっかかり、追い詰められたバリーは
ハワイへ出張中のリナのもとへ逃げるため
ここぞとばかりにマイレージのクーポンを使おうとするものの
手続きに2ヶ月かかるといわれ、
怒りを爆発させて壁を殴りつけるのですが
そのとき、バリーの拳についた傷は
「LOVE」という文字を形作っていました。

なぜか阿波踊りみたいな祭りで盛り上がるハワイで
互いの愛を確かめ合ったバリーとリナのふたりは
ハワイから帰ってきたところを4人組に襲撃されるものの
バリーが愛の拳で返り討ちに。
病院で治療中のリナをほったらかして
すべてのカタをつけるため、遠く離れたユタ州にいる
美人局の親分(フィリップ・シーモア・ホフマン)と対峙。
バリーの腹の据わったキレ方に親分が降参して
一件落着したものの、ほったらかされたリナは
ひとりで病院から帰宅してしまいます。
慌てたバリーはなぜかハーモニウムを抱えてリナのもとへ急ぎ、
すべてを打ち明けて和解します。
そしてその直後、バリーの仕事場の倉庫にあらわれる
リナのシルエット。
ハーモニウムの前に座るバリーに近づき
「さあ、始めましょう」
とリナがいうと、エンドロール。

やっぱり、ハーモニウムが
バリーにとって重要なアイテムであることは
間違いなさそうなのですが
ハーモニウムに託された意味をはっきりと解釈することは
僕にはできませんでした。
ハーモニウムという楽器は、オルガンとは違い
足ではなく、左手でジャバラの鞴(ふいご)を操作して空気を送り
右手で鍵盤を操作するとのこと。
つまり演奏するのは右手のみということになるので
リナが現れたことによって
バリーは両手でメロディーを奏でることができるね、と。
だから「さあ、(演奏を)始めましょう」と。
……っていうようなこじつけが
できないわけでもなさそうな気がしないでもないが
はしたない深読みはこのくらいにしておきましょう。

「パンチドランク・ラブ」とは「強烈な一目惚れ」
写真を一目見ただけでバリーの虜になってしまうリナの心理は
周囲からみれば不可解きわまりないのですが
そもそも恋愛なんて当人たちにしか理解できないものでしょう?
なんつって。





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