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恐怖と欲望

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(原題:Fear and Desire 1953年/アメリカ 62分)
製作・監督・撮影/スタンリー・キューブリック 脚本/ハワード・サックラー 音楽/ジェラルド・フリード
出演/ケニス・ハープ、フランク・シルベラ、ポール・マザースキー、スティーブ・コルト、バージニア・リース

概要とあらすじ
巨匠スタンリー・キューブリックが、一般に劇場デビュー作とされている「非情の罠」(1955)より以前に発表した監督作で、人間性を失っていく兵士たちの姿を描いた戦争ドラマ。敵陣の森に墜落したコービー、マック、シドニー、フレッチャーの4人は、そこで地元の女性に目撃され、敵国に知られることを恐れて女性を木に縛り付ける。しかし、欲情したシドニーが女性を襲い、女性は隙をついて逃げ出してしまう。シドニーはとっさに女性を射殺してしまうが……。完璧主義者として知られるキューブリックがその出来に満足せず、自らプリントを買い占めて封印してしまったことから、長らく「幻の作品」と言われていた一作。(映画.comより



人に見られたくないものを残しといちゃダメ

スタンリー・キューブリック監督自らが
「アマチュアの仕事」と評して封印していた
劇場映画デビュー作『恐怖と欲望』
キューブリック監督の死後14年経って
「めでたく」公開&DVDリリースとなったわけですが
本人にとってどんなに振り返りたくない過去であっても
ファンにとってはやっぱり見ずにはいられないもの。
死んでしまえば何をされるかわかりませんな。
できることなら、死ぬ前に
ハードディスクの中のあれやこれやを消去してから
死にたいものです。
ま、僕のハードディスクの中身をありがたがる人間は
どこにもいないのですが。

冒頭のナレーションで
「これは史実ではなく、国籍も関係ない、
 普遍的な戦争の物語である」
というように
架空の国籍に所属した架空の兵士たちが
敵陣に飛行機が墜落して森を彷徨う寓話的な物語です。

脚本はキューブリックの手によるものではありませんが
冒頭のナレーションのように
登場人物たちの心の声もナレーションで語られるので
わかりやすい、というより演出に深みがありません。
なんとか敵陣から自陣へ帰還しようと
森の中を右往左往する4人の兵士たちの姿からは
戦争ごっこというかピクニックでもしているふうで
ちらっとゴダールの『カラビニエ』なんかが
頭に浮かんだりしましたが
いまいち緊迫感が感じられず、
つねに強い日差しが当たっているように見えるので
昼夜の区別がつかず、
じつは2日経っているのに時間の経過が伝わりません。

編集的にも、せわしない切り返しによって
登場人物たちの顔のクローズアップが挿入されるのも
かっこいいと言えなくはないけれど
思わせぶりなだけのようにも感じます。
途中で登場する役名のない女(バージニア・リース)
クローズアップは確かに美しいんだけど
女の心理が反映されているとは言い難い。

『恐怖と欲望(原題:Fear and Desire)』というタイトルで
「普遍的な戦争の物語」というのですから
当然、戦争において兵士たちの人間性が
徐々に狂ってくるさまがミソだと思うのですが
その過程が結構強引で投げやりな印象です。
とくに「子猫ちゃん」と呼ばれる
シドニー(ポール・マザースキー)
おろおろして弱みを見せながらも
戦場における人間的な良心を示す役割を託されているのかと思ってると
捕らえて樹に縛り付けた女の見張り役を命じられて
女とふたりっきりになると、気を惹こうと突然おどけ始め
ニタニタ笑いながら女にからんでいくシーンが唐突で
シドニーが狂ってしまったのか、
それとも元々狂っていたのかさっぱりわかりません。

キューブリック監督自身が
「アマチュアの仕事」と言っているのをいいことに
なんだか偉そうに文句ばっかり言いましたが
食事中の敵兵が殺されるシーン
床にこぼれ落ちるスープが血を暗喩してたり、
迷子になった犬の存在など
おっと思うところは随所にありました。

完璧主義者で知られるキューブリックにも
完璧ではない時代があったというだけで
ちょっとほっとするような気になれる作品でした。
キューブリックファンなら一見の価値あり。





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