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オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ

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(原題:Only Lovers Left Alive 2013年/アメリカ・イギリス・ドイツ合作 123分)
監督・脚本/ジム・ジャームッシュ 撮影/ヨリック・ル・ソー 美術/マルコ・ビットナー・ロッサー 衣装/ビナ・ダイヘレル 編集/アフォンソ・ゴンサウベス 音楽/ジョゼフ・バン・ビセム
出演/トム・ヒドルストン、ティルダ・スウィントン、ミア・ワシコウスカ、ジョン・ハート、アントン・イェルチン、ジェフリー・ライト

概要とあらすじ
「リミッツ・オブ・コントロール」(2009)以来、約4年ぶりとなるジム・ジャームッシュの監督作。ミュージシャンと吸血鬼を題材に描くラブストーリーで、トム・ヒドルストンとティルダ・スウィントンが、孤独な宿命を背負った吸血鬼のカップルを演じた。吸血鬼でありながら、マルチミュージシャンとして活躍するアダムは、自己破滅的な人間たちの振る舞いを憂えていた。そんなある日、何世紀にもわたり愛し合ってきた恋人で、吸血鬼のイヴと久しぶりに再会。しかし、イヴの妹エヴァが2人のもとを訪れたことをきっかけに、3人の運命がゆっくりと変わっていく。共演にミア・ワシコウスカ、ジョン・ハート、アントン・イェルチン。(映画.comより)



ジャームッシュのおもちゃ箱

なんだかとっても久しぶりに感じる
ジム・ジャームッシュ監督作
『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』

前作『リミッツ・オブ・コントロール(2009)』から
4年ぶりということなので
それほど久しぶりでもないような気もするが
これも自分の記憶力が貧弱なせいか。

吸血鬼とゾンビが登場するということで
おお、ついにジャームッシュがホラーを撮るのかと思いきや
やっぱりジムはあくまでジャームッシュなわけでして
吸血鬼もゾンビもメタファに過ぎません。
ざしずめ吸血鬼は、
ミュージシャンから文学者、科学者にいたるまで
時代が変わっても受け継がれていく
アーティストの魂といったところでしょうか。
吸血鬼のディティールは定型に倣っているのに対し、
ゾンビに関しては普通の人間をゾンビと呼んでいるだけ。
そもそもジョージ・A・ロメロが創り出したゾンビが
自分の意志を持たない魂の抜け殻のような人々を表現したものなので
これも原典に忠実といえば忠実です。

とにかく、ゾンビたちがバカなせいで世界がだめになったと
繰り返し語られるのですが
これがジャームッシュの怨み節のように聞こえて
めずらしく鼻息が荒いように感じます。
自分の好きなペースで、自分の好きなものを作って
しかもそれが世間でも高く評価されているジャームッシュが
世にはびこるゾンビたちのせいで歯がゆい思いをしているとは
思えないのですが
歴代のアーティスト(=吸血鬼)の系譜の中に
自分を置いているのは明らかです。

ビンテージのギターや古いアンプ、
オープンリールのレコーダーにブラウン管テレビなどなど
ジャームッシュ特有の懐古主義アイテムが大量に登場しますが
いままでならそれらをみて、センスいいねえなんて楽しんでいたものの
ゾンビに対する怨み節や
吸血鬼たちの特権的な態度をみせられると
それとて現在に至る効率至上主義の過程で産み落とされたものに過ぎず
そんなに都合よく、キミの好きなタイミングで時代は止まらないよ
と言いたくもなります。
ま、吸血鬼という存在がそのようにゾンビをバカにしながらも
ゾンビたちの血を飲まないと生きていられない、というところに
ジャームッシュの自己批判を感じないわけではありません。

それにしても、この作品は
ストーリーを繫ぐためというより、
作品の世界観を彩るための小ネタが満載です。
ジョン・ハートが演じるキット(=クリストファー・マーロウ)
シェイクスピアの正体ではないかといわれた実在の人物。
アダム(トム・ヒドルストン)が医者の扮装をしていたときの名前、
「ドクター・ファウスト」
ゲーテの「ファウスト」で悪魔に魂を売った錬金術師。
「ドクター・ストレンジラブ」や「ドクター・カリガリ」なんてのも
映画好きならすぐにピンと来る名前です。
黒人の医師が「クリーブランドの出か?」と独り言をいうのは
なんだろうと思っていたら
クリーブランドにはロックの博物館があるのだとか。
そんなもん、知るか!
イブ(ティルダ・スウィントン)
航空券の予約をするときに使う偽名も数学者の名前だったりします。

なんせ、主人公の二人が「アダムとイブ」ですから
なんとも壮大なお話になりそうだなあと思っていたのですが
それほど宗教的な主張が強く反映されているとは思えず
とはいえ考え始めるとドツボにはまりそうなので
愛し合うもの同士の原型としてのアイコンくらいにしておいて
あまり深く追求しないほうがいいような気もします。
それよりも、イブが使っているiphoneの
かじったリンゴのアップルマークを見てニヤっとしましょうよ。

イブの妹・エヴァ(ミア・ワシコウスカ)が登場して
アダムとイブの生活が狂い始めるのですが
エヴァはイブの発音違いなので
(クレジットではエヴァはAvaになっていますが)
エヴァはイブの別人格と考えられそうです。
欲望の赴くままに行動するエヴァがやらした事件によって
アダムとイブはデトロイトのアダムの部屋(=エデンの園?)から
逃げ出さなくてはならなくなるのです。

ラスト。
抱き合う恋人たちに近寄ったイブが
「エクスキュゼ、モア?」と声をかけます。
僕はここで終わったほうがよかったんじゃないかと思うし
いままでのジャームッシュ作品ならここで終わったような気がします。
ところが、この直後にもうワンカットあるのです。
まるで「……だったとさ。ちゃんちゃん」とでもいうように
しっかりと終わらせているのは意外でした。

あいかわらず、音楽に対する愛情に溢れていて
『ストレンジャー・ザン・パラダイス』
スクリーミン・ジェイ・ホーキンスほど
強烈な印象を残すものはありませんでしたが
レバノンの女性シンガー、ヤスミンの歌声も素晴らしかったです。
そもそもデトロイトという街自体がだな……
いや、やめておこう。きりがない。
モータウンとスタックスが……って、ほんとにやめよう。

吸血鬼たちが血を飲んだときの恍惚の表情と禁断症状が
まるでドラッグをやってるみたいだとか、
アダムの自殺願望だとか
追求してみたいところは山ほどあるけれど
見直したら考えが変わるかも知れないので
この辺にしておきます。

とにかくジャームッシュのおもちゃ箱を
ひっくりかえしたような作品
でした。
これだけ自分の趣味を反映させた作品をつくって
それを多くの観客が楽しみに観に行くんだから
あなたのような人は、俗世間をゾンビだなんていわないほうが
今まで通り、スマートだと思うよ、ジム。





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コメント

あーキャスティング

おはようございます。

少し前から、楽しみにしている作品ですが、
地方なので公開待ち状態です。

もう、キャスティングが堪りませんね。
ミア、トム、ティルダ、大好きです。

とってもオシャレな映画のようですね。
期待大です。

2014/01/13 (月) 07:57:19 | URL | ぷっちん #Drcz0VvE [ 編集 ]

Re: あーキャスティング

>ぷっちんさん
コメントありがとうございます。ティルダ・スウィントンの魅力満載ですよ!
ぜひ楽しんでください!

2014/01/13 (月) 08:36:36 | URL | のほうず #- [ 編集 ]

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