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囚われのサーカス

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(原題:ADAM RESURRECTED 2008年/ドイツ・イスラエル 109分)
監督/ポール・シュレイダー 製作/エフード・ブライベルグ、ベルナー・ヴィアジング 原作/ ヨラム・カニューク 脚本/ノア・ストールマン 撮影/ゼバスティアン・エドシュミット 音楽/ガブリエル・ヤレド
出演/ジェフ・ゴールドブラム、ウィレム・デフォー、デレク・ジャコビ、アイェレット・ゾラー、ハンナ・ラズロ、ヨアヒム・クロール、モーリッツ・ブライブトロイ

概要とあらすじ
1961年、かつてベルリンで喝采を浴び、人々に愛されていたエンターテイナーのアダム・シュタインは砂漠の真ん中に立つサイズリン研究所に身を置いていた。そこはナチスによるホロコーストを生き残った者達をケアする場所として建てられた精神施設だった。アダムは明晰な頭脳と持ち前の話術で周りを惹きつけ、一見すると施設に不釣り合いのように見えたが、彼には退所できないある<秘密>があった…。(Amazonより)



犬として生きる。もしくは犬として死ぬ。

「映画秘宝(12月号)」のレビューに誘われて
ちょっくら観てみました『囚われのサーカス』
日本劇場未公開ながらDVDが発売された本作は
『タクシー・ドライバー』や『レイジング・ブル』の脚本、
『ザ・ヤクザ』『ミシマ:ア・ライフ・イン・フォー・チャプターズ』 などの
監督作が有名なポール・シュレイダー監督による
ホロコーストを生き延びたコメディアンの物語ということで
『マイ・ライフ・イズ・ビューティフル(1997年)』あたりが
ちらっと思い浮かんだりしましたが
ナチスの極悪非道ぶりは十分に伝わってくるものの
ホロコーストの悲惨さを表現することが主題ではないように思われ、
ナチスに人生を蹂躙された個人の苦悩を
ファンタジックに描いています。

マジックもできる万能コメディアンのアダム(ジェフ・ゴールドブラム)
ベルリンの舞台で人気者でしたが
第二次世界大戦が始まって、妻とふたりの娘と共に
ユダヤ人収容所に送られることに。
そこで、かつてアダムのショーを客として楽しんだこともある
ナチス総司令官クライン(ウィレム・デフォー)と遭遇。
アダムに客いじりをされたときとはうって変わって
別人のように傲慢になったクラインは
アダムを四つん這いにさせ、首輪を付け、
自分のペットとして犬になりきるように命じます。

離ればなれにされた妻と娘たちの命を守るためにも
アダムはクラインの従順なペットになることを甘んじて受け入れます。

かたや、1961年のアダムは
砂漠の真ん中に立てられたホロコースト生存者のための
精神病院
で過ごしています。
洒落た会話とスマートな立ち居振る舞いで病院でも人気者のアダムは
まったく治療を受ける必要がないように見えますが
じつは心に深い闇を抱えていたのです。

ユダヤ人収容所で犬として過ごしていた過去と
精神病院での現在とが交錯しながら物語が進んでいくうちに
病院に隔離され、自分を犬だと思い込んでいる少年と出会い、
アダムの苦悩が明らかになっていきます。

ペットとして犬になりきるという仕打ちが屈辱的なうえ、
ほかのユダヤ人たちがガス室送りにされる列の横で
バイオリンを弾かされる
という人格崩壊ぎりぎりの経験をもつアダムが
簡単には立ち直れないトラウマを抱えているのは
容易にわかりますが
あたかも犬であることが当然のように生きている少年と接することで
アダムの精神が揺さぶられます。

アダムは犬になるという屈辱を受け入れてでも
家族の命を守りたかったはずですが、
結局願いは叶いませんでした。
家族を失った自分の無力を呪い、胸を張って人間に戻れないなら
むしろ本当に犬になってしまいたいと思ったのではないでしょうか。
いつしか、アダムは
クラインに従順であることが自分が生きる目的であるかのように
倒錯してしまい、その自身の倒錯と戦っているように見えます。

「いいケツしてる」看護婦(アイェレット・ゾラー)
犬の真似をさせて交わる隠微なシーンは
アダムが自分は人間だと自分に言い聞かせているようでもありますが
その後、アダムに愛を求める看護婦が
自ら犬になって甘えた鳴き声を出す姿を見ると
一筋縄ではいかない主従関係の複雑さが現れます。
看護婦は犬になることを屈辱だとは考えず
むしろ喜びすら感じているようにみえます。

アダムによって徐々に人間らしさを取り戻していく犬少年は
アダム自身そのもので、実在しているというよりも
アダムのトラウマを具象化した姿だといえるでしょう。

犬にも人間にもなれないアダムに残された道は
自殺しかないと思われましたが
犬少年が完全に人間となったことで
アダムはやっと新しい人生を歩み始めるのです。

憎たらしい役をやらせたら天下一品のウィレム・デフォーは
期待通りに憎たらしかったし、
聴診でスマートなジェフ・ゴールドブラムの
迫真の演技も見事でした。





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