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ゼロ・グラビティ

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(原題:Gravity 2013年/アメリカ 91分)
監督/アルフォンソ・キュアロン 脚本/アルフォンソ・キュアロン、ホナス・キュアロン 編集/アルフォンソ・キュアロン、マーク・サンガー 撮影/エマニュエル・ルベツキ 美術/アンディ・ニコルソン 衣装/ジャイニー・ティーマイム 音楽/スティーブン・プライス
出演/サンドラ・ブロック、ジョージ・クルーニー、エド・ハリス

概要とあらすじ
「トゥモロー・ワールド」「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」のアルフォンソ・キュアロン監督が、宇宙空間に投げ出されてしまった宇宙飛行士たちの極限的状況を最新VFXと3D技術を駆使して描いたSFドラマ。スペースシャトルのメディカル・エンジニア、ストーン博士とベテラン宇宙飛行士のマットは、船外作業をしていたところで予想外の事故に遭い、宇宙空間に放り出されてしまう。空気も残りわずかで地球との交信手段も断たれ、たった1本のロープでつながっているだけの2人は、絶望的な状況の中から生還を目指すが……。ストーン博士役にサンドラ・ブロック、マット役にジョージ・クルーニー。撮影は「トゥモロー・ワールド」ほかキュアロン作品を多数担当する名匠エマニュエル・ルベツキ。脚本はキュアロン監督と、監督の息子ホナス・キュアロンによる。(映画.comより)



どうせ死ぬんだから、生きよう

わかってます。わかってます。
『ゼロ・グラビティ』は
間違いなく3Dで観るべき映画
だってことは。
わかっちゃいるけれど、
ある3D映画でパニックに陥ったのをきっかけに
いまだにそのトラウマを引きずっている僕は
3D映画はもうごめんだと心に誓っているのです。
ましてや『ゼロ・グラビティ』は3Dというだけでなく
カメラが宇宙空間を上下左右関係なしにぐりんぐりん回るんですから
どんなに評判がよく、画期的な作品だといわれても
絶対に観ないと決めておりました。

でも、やっぱり気になる。やっぱり映画館で観たい。
でも怖い。死にたくない。どうしよう……
なんて思っていると、2D上映があることを発見!
これなら大丈夫かも! ということで観てまいりました。
結果からいうと、僕には2Dで十分にお腹いっぱい。
ていうか、この作品を3Dで観るのはやっぱり僕には無理だったと
胸をなで下ろしています。

『ゼロ・グラビティ』が「体感映画」といわれるように
立体感や奥行きを表現したこれまでの3D映画と違って
観客がその場にいるような臨場感を味わえるのですが
その臨場感は3Dの効果によるものというより
無重力を表現するための登場人物と小物の浮遊感や
縦横無尽に動き回るカメラワークによるところが大きいと思います。
「3Dで観たらもっとすごいぜ」といわれても
聞こえないふりをします。

登場人物は、ライアン・ストーン(サンドラ・ブロック)
マット・コワルスキー(ジョージ・クルーニー)
ふたりだけ。(プラスもう一人いるけど)
ストーリーも、宇宙で突然の事故にみまわれた二人が
どうやって地球に帰還するのかを描くという
いたってシンプルなもの。
無限に広がる宇宙を舞台にしているのに
まるで密室劇のようなこの作品は
そのシンプルさゆえに多くの隠喩を内包できるようになっています。
また、91分という短めの上映時間
単にあっさりと簡潔に見せるのが目的ではなく
映画の中の時間と映画を観ている時間を同じにして
「体感」を重視した結果だと思われます。
(スペース・デブリ(宇宙ゴミ)が襲ってくる周期が90分なので
実際には時間は少しジャンプしているはずだけど)
ライアンのエピソードを表現するために
ライアン(とその娘)の地上での生活を
フラッシュバックするようなシーンがあっても不思議ではないのですが
それをしないのも「体感」を優先しているからではないでしょうか。

それにしても、宇宙空間に投げ出されて自由に身動きもとれず
通信もできない孤独と絶望は半端ない。
LINEで「既読」なのに返信が来ないときの孤独とはわけが違います。
とんでもなく危機的な状況のうえに
酸素がないという地味だけど致命的な問題が
カウントダウンしながら迫ってきて、文字通り息苦しいのです。

国際宇宙ステーションのソユーズにたどり着いたライアンが
宇宙服を脱ぎ捨てて、タンクトップとショーツ姿になるシーンは
『バーバレラ(1968)』のエロチックなオープニングや
『エイリアン(1979)』のリプリーの下着姿を思い起こしますが
その後ライアンが見せるあからさまな胎児のポーズ
この作品のテーマを宣言しています。
間違いなく『2001年宇宙の旅(1968)』を意識したはずのこのシーンで
ここからライアンは新たに生まれ変わるということがわかります。

宇宙飛行士として未熟なライアンは
悪戦苦闘しながらなんとか生き延びようと懸命にもがくものの
なんとか助かった〜と思ったら、やっぱりダメだ!
それでも、なんとか切り抜けた〜と思ったら、やっぱりダメだ!
という難関がたたみかけるようにライアンを襲ってきて
もういいや、死んじゃお。と思うライアンの気持ちはよくわかります。
犬の鳴き真似が切ない。

そこに突然再登場するマット(ジョージ・クルーニー)に
観ている僕も本当にほっとしましたよ。ははは。
自分が宇宙にいくときは絶対に一緒に行きたいと思うほど
頼りになるベテラン宇宙飛行士のマットですが
じつはそれはライアンが遠のく意識の中で見た幻。
がっかりですが、マットはライアンに重要なヒントを与え
ライアンは最後まで生きることを諦めないと決心するのです。
幻になっても頼りになるマット。

胎児となったライアンが生まれ変わって新たに誕生するまでを
単純に追って描いているわけではありませんが
生命の誕生や生きることそのものをイメージさせる描写に溢れています。
炎に包まれながら大気圏に突入するライアンは
「母なる地球」という子宮に突き進む精子のようにも見えるし、
ついにライアンが着水した海は羊水を表現していると
監督自身が発言しています。
(ここでもまた、やっぱりダメだ!という展開が!)
砂浜で立ち上がろうとするライアンがおぼつかないのは
急に無重力から重力のある地上に戻ったせいでしょうが
ハイハイをする赤ちゃんのようにも見えました。
パンフレットの町山智浩さんの解説によれば
海から陸へと上がるライアンの姿には
生物の進化までもなぞられているとのこと。

映画の世界にどっぷりはまって観ていた僕は
冒頭の13分という長回しにも意識が及びませんでしたが
ときおり、一体どうやって撮影してるんだろ?と感じていました。
映画を観た後に調べてわかったことですが
あらかじめCGアニメーションで
カメラアングルから俳優の動きまでを綿密に決めてから撮影する
プリビズ(プリビジュアライゼーション)と呼ばれる手法が
使われているそうで
CGを使った実写映画というよりも
実写を混ぜたCGアニメーションといったほうがいいような気もします。
ま、実写かアニメーションかという区別自体が
もはや意味がないのかも知れませんね。
画面に映るもののほとんどがCGによって作られているのですが
メイキングを観て驚いたのは
サンドラ・ブロックとジョージ・クルーニーが被っていた
ヘルメットのバイザー部分(透明な部分)がないのです!
あれごとCGかよ!? 周囲の写り込みも息で曇るガラスも!?
うへえ。
俳優は12本のワイヤーで吊されて演技をしていたそうですが
それってもはや操り人形だよな、って思ったら
やっぱりパペッティア(操り人形師)も撮影に参加していたようです。

それにしても原題の「Gravity(=重力)」に
なぜ邦題で「ゼロ」とつけたんでしょうかねえ。
たしかに無重力状態の表現がキモである作品ですが
作品がもっとも伝えようとしているのは
重力があるところに命が生まれるということだと思われるので
原題と意味を真逆にしてしまうのはいただけませんな。

この作品を観ると、重力の有り難みを噛みしめますが
そもそも人間の身体は重力を前提として作られていますよね。
重力があるから、口が上でケツが下なのですよ。
あなた、これが逆だったらと考えてごらんなさい。
いろいろ大変ですよ。

ビジュアルのすごさに圧倒されながら
しかも生きるということの本質を問いかける作品で
僕は純粋に勇気をもらいました。
映画館で(平気なら3Dで)観るのが最適ですが
DVDが発売されたら何度でも見直すことになるでしょう。

もし、宇宙に行くことになったら
なにかに捕まって離さないだけの
握力を鍛えておいたほうがいいでしょうな。









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コメント

忙しかった

眼鏡をかけてる身には3D眼鏡と2重になり
頭が重くなるので苦手な3Dですが
今回は監督の意図を汲んで久々に3DIMAXにて観ました。
…まぁ、忙しい映画でした。
私もオープニングの長いワンカットも気がつかず、
リアルタイムに進む話の中、字幕と映像を追って行くのが精一杯で
2枚目に徹しない演技が大好きなサンドラ・ブロック演技も堪能出来ずじまい。
まさにハァハァって感じで見事に監督の意図にはめられました。
でもそんな忙しい観賞だったからこそ、
犬の鳴き声を真似するシーンはほんの少し落ち着いて観れるシーンだったから心に染みましたね。
G・クルーニーは儲け役!でも超ハマっていたから許しましょう。
それにしても人間の技術はこんな映画も撮れるようになったんだ。
思い返しても凄い映像でした。

2014/01/16 (木) 20:04:08 | URL | OKU #- [ 編集 ]

Re: 忙しかった

>OKUさん
もう一回、観に行けばどうですか? 2Dで。

2014/01/16 (木) 21:46:43 | URL | のほうず #- [ 編集 ]

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