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思秋期

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(原題:Tyrannosaur 2010年/イギリス 94分)
監督・脚本/パディ・コンシダイン 撮影/エリック・アレキサンダー・ウィルソン 編集/ピア・ディ・キアウラ 美術/サイモン・ロジャーズ 音楽/クリス・ボールドウィン、ダン・ベイカー
出演/ピーター・ミュラン、オリビア・コールマン、エディ・マーサン

概要とあらすじ
「イン・アメリカ 三つの小さな願いごと」「ボーン・アルティメイタム」などで知られるイギリスの俳優パディ・コンシダインの長編監督デビュー作。人生の折り返し地点を迎えた男女の破滅と希望を描き、サンダンス映画祭や英国アカデミー賞で高い評価を受けた人間ドラマ。男やもめで失業中のジョセフは、酒を飲むと怒りを抑えられず、いざこざや暴力沙汰ばかり起こす日々。そんな自分に嫌気がさし、精神的にも疲弊しきっていたある日、明るく聡明な女性ハンナと出会う。ハンナは自暴自棄になっていたジョセフを癒し、2人は次第に打ち解けていく。しかし、ハンナもまた、心の中に人には言えない闇を抱えていた……。主演は英国の実力派俳優ピーター・ミュランとオリビア・コールマン。(映画.comより)



ティラノザウルスは死んだのか

この『思秋期』という作品の予告編を観たとき、
どうしようもない鬱屈を抱えて自暴自棄になっている初老の男に
自分の愚かな行く末を重ねて興味を持っていたのですが
ま、大筋の予想は間違っていなかったものの
微妙に印象の異なる作品でした。

なんだか、いつも邦題に文句を付けているようで
気が引けるのですが
『思秋期』という邦題からは
そろそろ人生の幕引きの時を迎えた人々の
はかない希望や哀愁のようなものが窺われ、
確かに、それもこの作品の一面ではあるものの
原題の『Tyrannosaur(ティラノザウルス)』に込められた
人の心の中に幽閉された凶暴性を表現するには不十分で
ミスリードではないでしょうか。

ジョセフ(ピーター・ミュラン)
いらついたはずみで愛犬を蹴り殺してしまう
ショッキングな冒頭のシーン
で、
彼がストレスを溜め込んだ凶暴な男であり、
愛している相手を、むしろ愛しているがゆえに
傷つけてしまう人間であることを
すぐに納得できる演出が素晴らしいのですが
その後登場するハンナ(オリビア・コールマン)
ハンナの夫ジェームズ(エディ・マーサン)
ジョセフと同様に愛している相手を傷つけてしまうのです。

ご立派な人に言わせれば
「甘え」だと断じられても仕方ないのですが
最近流行りの(?)自己承認欲求とも相まって
誰にも自分の弱みを見せずに堅牢な意志に従って生きていくのは
並大抵のことではないのです。
あきらかにジョセフを毛嫌いしていた
ガンで死んでしまうジョセフの親友の娘の
父親に対する愛憎が作品の主旨を際だたせます。
生きているうちは憎たらしいと思っていた相手でも
死んでしまえば自然と涙がこぼれてくるものです。

信仰心の強いハンナがいくら神さまに祈ろうとも
現実は一向に改善しないのですが
終盤で、ハンナに送ったジョセフの手紙の
「信仰心がないのに自然と祈っている」
という言葉には非常に共感しました。
何もできないけれど、思いを伝えたいとき
信仰と関係なく、人は祈るのです。
意味も効果もないかも知れません。
それでも、祈るしかないのです。

おそらく、ハンナと出会ったのをきっかけに
ジョセフは自分の怒りにまかせた衝動を抑えようとします。
それは社会生活を送るうえで至極真っ当なことでしょう。
しかし、それはいつまでも反省の色を見せないバカどもを
さらにつけ上がらせることにもなるのです。
逆に、ハンナはそれまで抑えてきた自分の鬱屈を
ジョセフと知り合ったことをきっかけに暴発させてしまいます。
先ほどのジョセフの手紙にあった
「動物は過度に虐待されれば反撃に出る」
という言葉がハンナの心情を表しています。

寝ているハンナに小便を掛ける
ハンナの夫ジェームズは卑劣なDV野郎ですが
それでも、正当な愛し方を知らない弱い人間であるという点においては
同情しないわけではありません。

バカは増える一方だし、
日常生活を機嫌良く過ごすのは至難の業かもしれない現代に
そんなに我慢しなくてもいいんじゃない? と言われているようで、
ある意味、危険な作品でした。

ひとりでも理解者がいれば
随分楽になるんですけどねえ。
生きるのってつらいね。





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