" />

アフターショック

aftershock.jpg



(原題:Aftershock 2012年/アメリカ 89分)
監督/ニコラス・ロペス 制作/イーライ・ロス 脚本/ニコラス・ロペス、イーライ・ロス
出演/イーライ・ロス、アンドレア・オズファルト、アリエル・レビ、ニコラス・マルティネス、ナターシャ・ヤロヴェンコ、ロランザ・イッツォ

概要とあらすじ
「ホステル」シリーズのイーライ・ロスが製作・脚本・主演を務め、チリで大地震に遭遇したアメリカ人青年が体験する恐怖を描いたサバイバルスリラー。チリ旅行を満喫していたアメリカ人観光客グリンゴと、チリ人の友人アリエルとポロ。3人の美女をナンパして一緒にダンスクラブへと繰り出す彼らだったが、そこへ巨大地震が発生。略奪者や脱獄した凶悪犯罪者、余震の恐怖によって街が地獄絵図と化す中、一行は生き残るべく奮闘するが……。「シッチェス映画祭ファンタスティックセレクション2013」にて上映。(映画.comより)



一番恐ろしいのは人間。

期間限定で開催された
「シッチェス映画祭ファンタスティックセレクション2013」
あっという間に終了してしまい、口惜しく思っていたら
あっという間にDVDレンタル開始ということで
会員カードを握りしめた僕は
そそくさとTSUTAYAに向かったのであります。小走りで。

『アフターショック』は監督こそチリ人のニコラス・ロペスですが
制作と脚本にイーライ・ロスが関わっていて、
さらに主演でもあるとなれば
それなりにゴアでスプラッターな作品を
期待してしまうところですが
なかなかの高評価を耳にしながらも
できるだけ内容に関する情報には触れないように注意して
いざ、鑑賞となったのです。

チャラチャラ浮かれた若者が
その後の展開でそれ相応の罰を受けるのがホラーの定番で
必ずや浮かれたメンバーのなかの誰かに
明らかな死亡フラグがはためいていたりするものですが
この作品においては、それがはっきりとは示されていません。
グリンゴ(イーライ・ロス)
ポヨ(ニコラス・マルティネス)アリエル(アリエル・レビ)
3人の男たちがそれぞれあんまりイケてないのが
僕の劣情を緩和してくれているのかもしれませんが
かろうじて憎まれ役だと思われるのは、
なんでも父譲りの金にものを言わせるポヨと、
その後登場するビッチのカイリー(ロランザ・イッツォ)くらいで
それにしても、お前なんか死んでしまえと
思うほど嫌な連中ではないのです。

確かに、クラブで女目当てに遊び呆けている3人ですが
やっぱりそれほど敵意を感じません。
ポヨは、ちょっと脇に置いといくとして
グリンゴがナンパが苦手だったり、
アリエルが別れた奥さんに未練タラタラだったりするのが
憎めないのです。
クラブで遊んだ翌日、ワイナリー見学に行った3人が乾杯するとき
「チ・チ・チ! リ・リ・リ!」と言い合っていたのを見て
2010年のコピアポ鉱山落盤事故のニュース映像を思い出しました。
(もしくはナイナイ岡村のめちゃイケ復帰を)
このとき、ウータンクランのタトゥーをいれた
ワイナリーのガイド
と知り合って仲良くなるのかと思いきや……
特に関係なし。
単にイーライのお友達(RZA)へのサービスか?

後半で、彼らが大変なことになるのはわかっているのですが
前半30分かけて彼らが楽しむ姿を見ていると
だんだんと彼らがうらやましくなってきて
単に前フリとしての享楽とは思えず、
この男3人と女3人の恋の行方を見続けていたいと思わせるほど
それぞれのキャラクターがしっかりと描かれ、
魅力的な物語になっています。
ラブコメ作品が多いというニコラス・ロペス監督の経験が
活かされているのでしょうか。

彼らが順番に殺されていき、
ゴアな死に方にワーキャーいうだけなら
カイリーとモニカ(アンドレア・オズヴァルト)が異母兄弟で
モニカには中絶の経験があることや
イリーナ(ナターシャ・ヤロヴェンコ)が
モデルとしてじつは結構稼いでいることなどのキャラクター設定は
必要ないのではないでしょうか。
このように綿密に練られた人物描写が
どんな登場人物にもそれぞれの人生があることを感じさせ、
ひとりひとりの命が安くないことを物語っています。

グリンゴとポヨが険悪なムードになり、
カイリーとモニカが口論しているところで、ついに地震発生。
当然、僕たち日本人にとっては
東日本大震災発生当日の記憶が蘇ります。
『ヒア・アフター』のオープニング
ちょっと直視できないほど恐ろしいシーンでしたが
この作品は地震の恐怖を描こうとしているのではなく
地震はあくまでも不慮の災いのきっかけでしかないのです。
それは善人も悪人も分け隔てなく襲いかかってくるものです。
ロープウェイ(?)乗り場でのやり取りは
グッとくるものがありますが
乗り場のおっちゃんの
「警報が鳴っても津波が来たことはない!」
というセリフには考えさせられました。

ところが、地震よりももっと恐ろしいものがあった。
それが人間です。
地震によって崩壊した刑務所から凶悪な犯罪者たちが逃げ出し、
ここぞとばかりに好き放題やり始めるのです。
とはいえ、大量のモブによる略奪シーンなどはなく
視点は限られ、脱獄犯たちもわりと少人数なのは
予算の問題でしょうか。

とにかく、地震が起こってからの後半は
裏切りの連続です。
掃除のおばちゃんの首がスポーンから始まって
これで大丈夫だと思うとたたみかけるように事態が急激に変化して
期待を裏切りません。
とくに、地下道でグリンゴが瓦礫の下敷きになったシーン
人間の嫌らしさ、弱さ、そして強さを表していて
なんともいえないシーンです。
瓦礫の下敷きになったまま、脱獄犯たちにいたぶられ
ついに隠れていたカイリーとイリーナの居場所を
眼線で白状してしまうグリンゴの責められない弱さ。
そして、イリーナをレイプする男に向けて
グリンゴが力なく放つ礫。
結局グリンゴは瓦礫の下敷きになったまま火を付けられ
イリーナも助かったと思った直後に射殺されるのです。

なんと、終盤を迎える前に
最初に登場した男3人が死んでしまうのですが
執拗に迫ってくる脱獄犯たちのキャラクターはそれほど強調されず
最後もどうなったのかはっきりわからないのは
確かにスッキリしないところではありますが
僕はわりと肯定的にとらえています。
なぜなら彼ら脱獄犯は、地震と同じように
不意に訪れる抵抗しがたい暴力のメタファだと感じるからです。
弟の誕生日だとか、ディティールがないわけではありませんが
脱獄犯には匿名性が必要だったのではないでしょうか。

ゴア表現ばかりを取りあげるよりも
もっと見るべきところがあるんじゃないかと思わせる
上質な作品でした。





にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ 
↑お気に召したらクリックしていただけますと、もんどりうって喜びます。
関連記事
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

«  | ホーム |  »

プロフィール

のほうず

のほうず
映画が好きで観るのはいいが、
かたっぱしから忘れていくので
オツムのリハビリ的ブログ。
******************
当ブログの文章・画像およびイラストの無断転載を禁じます。引用される場合は、出典の表記と当ブログへのリンクを設定してください。

FC2ブログランキング

FC2Blog Ranking

お気に召したら
クリックお願いします。
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

スポンサードリンク

↓過去の記事はこちらから!↓

検索フォーム

QRコード

QR

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

カウンタ