" />

サプライズ

yourenext.jpg



(原題:You're Next 2013年/アメリカ 94分)
監督・編集/アダム・ウィンガード 脚本/サイモン・バレット 撮影/アンドリュー・D・パレルモ 美術/トーマス・S・ハモック
出演/シャーニ・ビンソン、ニコラス・トゥッチ、ウェンディ・グレン、AJ・ボーウェン、ジョー・スワンバーグ、バーバラ・クランプトン、ロブ・モラン、タイ・ウェスト、マーガレット・ラニー、エイミー・サイメッツ

概要とあらすじ
カナダのトロント国際映画祭やアメリカのファンタスティック・フェストなど、各国の映画祭で話題を集めたシチュエーションスリラー。両親の結婚35周年を祝うために家族10人が集まる。しかし、そこへ突然キツネやヒツジ、トラといった動物の仮面をつけた集団が現れたことから、逃げ場のない密室で予測不能な事態が次々と巻き起こる。監督は、「V/H/S シンドローム」「ビューティフル・ダイ」などで新世代のサスペンス/ホラー作家として注目を集める新鋭アダム・ウィンガード。脚本もこれまでのウィンガード監督作をすべて手がけているサイモン・バレットが担当。(映画.comより)



キツネ? ヒツジ? ん? ウサギ?

ホラー映画に『サプライズ』という
邦題をつけてしまうセンスには
呆れればいいのか、驚けばいいのか悩ましいところですが
原題の『You're Next』も確信犯的なベタな香りがするので
大目に見ることにしましょう。
マスクを使って殺人鬼のキャラを立てる設定に
またかと、あまり期待していなかったのですが
ゴア表現に偏りがちな近年のホラー映画とは
一線を画す快作でした。ブラボー!

いきなり、ホラー映画定番の
セックスシーンから始まるオープニングににやっとさせられ、
ガラスに血で書かれた警告のメッセージという
クリシェでご挨拶。

ちょっぴり『ファニーゲーム』を思わせる隣の家をスルーして
パーティーの買い出しから車で帰ってきた両親。
母親・オーブリー役のバーバラ・クランプトン
『ZONBIO/死霊のしたたり(1985)』などに出演した
かつてのスクリーミングクイーン。
御年55歳ですが、いやいや美しい。

オーブリーがシャンデリアの揺れに気づき、
2階に異変を感じとっておびえるのをなだめるように
父親・ポール(ロブ・モラン)が2階に様子を見に行き
怪しげなクローゼットのドアノブに手をかけようとしたところに
後ろから次男クリスピアン(AJ・ボーウェン)が登場。
なんだよ、びっくりさせるなよ〜、という
よくあるスカシ系の脅かしですが
映画を観終わってから考え直すと……ああ、そういうことかと。
重要なシーンではないかも知れませんが
よく練られたシナリオだなあと思います。

両親の結婚35周年を祝うために
それぞれのパートナーを連れて集まることになった子どもたち。
各々に絶妙なバランスでキャラクターが振り分けられています。
快活でかわいい、クリスピアンの恋人エリン(シャーニ・ビンソン)
感情移入の対象なのは一目瞭然だし、
いけ好かない性格の長男ドレイク(ジョー・スワンバーグ)には
死亡フラグがびんびんに立っています。
とはいうものの、バランスよく配置されたその他のメンツには
決定的な悪人も善人もおらず、
どういう順番で死んでいくのか思い描きながら観るのが
楽しみのひとつなのです。

エリンが隣の家にミルクを借りに行くシーンは
これまた『ファニーゲーム』への目配せを感じさせるので
もういっそのこと、卵を借りにいけばよかったのにね。
ところどころで繰り返し流れる
ドワイト・トゥイリー・バンド「Lookinng for the magic」
軽薄さが効いています。

いざ家族が揃って、楽しい晩餐になるはずが
ドレイクとクリスピアンの子供っぽい口喧嘩をきっかけに
険悪なムードに。
集まった子どもたちに対する母親オーブリーの
感謝の言葉がむなしい。
そして、ついに最初の犠牲者が……
そうかー、こいつかー。

ボウガンの矢がビュンビュン飛んでくるなか
一気に恐慌状態に陥る家族たち。
思い起こせば、イスを盾にして逃げ惑う家族たちのなかでも
ストーリーの鍵を握るあの人やあの人が
じつはあまり画面に映っていない
のもさりげない演出でした。

嫌味な長男ドレイクの背中にも矢が命中!
そら見たことかと思ったものの
じつはこの長男ドレイクはこの作品のお笑い担当なのです。
痛みに苦しみながら次男クリスピアンに向かって
「このデブ!」と罵り、
「デブっていうな!」と言い返すクリスピアンとのやり取りは
ほとんどコント。
そんなこと言い合ってる場合じゃないでしょ。わはは。
「段々痛みがなくなってきた」という長男ドレイクは
背中に矢が刺さったまんま右往左往するのです。
矢ガモかっ!
映画を観始めたときにはもっとも憎たらしかったドレイクが
終盤で、めった刺しにされてもなかなか死なない姿に
笑いながらグッとくるのです。

家族の中で一番足が速い長女エイミー(エイミー・サイメッツ)
「誰も私の話を聞いてくれないじゃない!」と
積年の思いを訴えて、助けを求めに家の外へ駆け出すシーンの
首をコキコキならしながら位置に付き、
よーい、スタートしてからのスローモーションが意地が悪い。
さようなら、エイミー。

ほかのメンツとは明らかに違う冷静さと適確な判断で
襲撃者に対抗する
エリン(シャーニ・ビンソン)は
地球資源の枯渇を危惧する父親に連れられて
サバイバルキャンプで育ったという経緯の持ち主。
そこでの生活でサバイバル術を身につけたということですが
サバイバルキャンプって、軍隊かよ!と
つっこむのは野暮でしょうな。

襲撃者たちは、キツネ、ヒツジ、トラという
動物のマスクを付けていて、
そのデザインにはそれなりに気を遣ったそうですが
正直、あまり区別がつかない……
「これは…ヒツジか? ん? ウサギ?」と
考えながら観てしまいました。
ウサギはいないよ。たはは。

とにかく強いエリンは男前!
『エイリアン』のリプリーをイメージしたというのも頷けます。
いろんなアイデアを駆使して
襲撃者たちを撃退しようとするようすは
まさに恐怖の『ホームアローン』状態!
『シャイニング』風のドア破りに悲鳴をあげたりもしますが
基本的に冷静。そして容赦なし。
襲撃者に馬乗りになり、ナイフで過剰に刺し続ける姿に
エリンの狂気が現れています。

この作品、次から次へと人が死んでいく
アメリカ映画にもかかわらず
銃が出てこないのが好感が持てます。
(ラストの一発を除いて)
襲撃者たちが使うのはボウガンやハンマー、
エリンが使うのは、包丁や果物ナイフ、ドライバーや釘と
家庭用品ばかりです。なんとミキサーまで!
攻撃を受ける場所も、首に眼に脳天と
リアルな痛さを強調しているのがわかります。
殺し方に懲りまくった挙げ句、まどろこしくなって
リアリティーがなくなるホラー映画とは違って
理にかなった反射的な殺し方が素晴らしく
ギミックよりもシナリオの妙で魅せるサスペンスの要素が
濃いのではないかと思われます。

理不尽なラストシーンには
『ザ・チャイルド』がよぎりましたが
さらに理不尽さをひと乗せした終わり方は
落語の「下げ」のようで
いよっ! と声をかけたくなりました。

僕にしてはめずらしく、
ストーリーの肝心な部分はネタバレしないように心がけましたが
(そうでもないか?)
被害者が反撃するという、ありそでなさそなホラー映画でした。
『サプライズ』という邦題がほのめかすような
大どんでん返しがあるとまでは言えませんが
観客の予想を裏切りつつ、期待に添った痛快さもある
見事な作品でした。





にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ 
↑お気に召したらクリックしていただけますと、もんどりうって喜びます。
関連記事
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

«  | ホーム |  »

プロフィール

のほうず

のほうず
映画が好きで観るのはいいが、
かたっぱしから忘れていくので
オツムのリハビリ的ブログ。
******************
当ブログの文章・画像およびイラストの無断転載を禁じます。引用される場合は、出典の表記と当ブログへのリンクを設定してください。

FC2ブログランキング

FC2Blog Ranking

お気に召したら
クリックお願いします。
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

スポンサードリンク

↓過去の記事はこちらから!↓

検索フォーム

QRコード

QR

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

カウンタ