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薮の中の黒猫

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(1968年/日本 108分)
監督・脚本/新藤兼人 撮影/黒田清巳 美術/丸茂孝、井川徳道 音楽/林光
出演/中村吉右衛門、太地喜和子、乙羽信子、佐藤慶、戸浦六宏、殿山泰司、観世栄夫、江角英明

概要とあらすじ
平安時代、京の羅生門に妖怪が出没していた。退治を仰せつかった侍が赴くと、それは自分の母と妻の亡霊だった。幻想時代劇。 (allcinemaより)



『陽だまりの彼女』ならぬ、暗がりの彼女(たち)

なにやら最近『陽だまりの彼女』とかいう
化け猫映画が公開されたようで
その原作本は「女子が男子に読んでほしい恋愛小説No.1」という
ふれ込みでベストセラーになったそうですな。
『陽だまりの彼女』は、
とっても頭は悪いけどとってもかわいい女の子を
なにがなんでも口説きたいときくらいしか観る動機のない作品ですが
女はみんな化け猫だということにおいては納得がいきます。
『陽だまりの彼女』から遡ること45年前、
母娘そろって化け猫になってしまったのが
『薮の中の黒猫』です。

固定されたカメラに映し出される
田園の一角を見つめていると
奥の林からわさわさと野武士の群れが現れます。
相当な飢えと渇きに耐えてきたような野武士たちは
小川というより溝を流れる水をこぞって飲み、
かたわらに建っていた小屋に押し入ります。

小屋の中で食事中だったのは
おヨネ(乙羽信子)おシゲ(太地喜和子)
突然押し入ってきた野武士たちは
手当たり次第に眼につく食糧にかぶりつき、
母娘ともども輪姦したうえに小屋を焼き払ってしまいます。

炭と灰だけになった小屋の中に横たわる母娘は
焼け焦げた焼死体ではなく、まるで無傷のよう。
そこに一匹の黒猫が現れるのです。
(横になっている乙羽信子の腹が
 呼吸によって明らかに膨らんだのは
 見なかったことにしよう)

というのが、この物語のすべての発端で
ここから先は、非業な死を遂げて怨霊となった母娘の
リベンジ・ムービー
なのです。

通りすがりを装ったおシゲが
次々とかつてなぶり者にされた侍たちを誘惑し、
藪の中の屋敷に連れ込んでは殺していくのですが
かつての野武士たちはみな、それなりに立派になっています。
作品の舞台となる平安中期は
武士がめきめきと台頭した時代でもあったのです。
おシゲとおヨネが暮らす屋敷とは、
かつて焼き払われた小屋があった場所なのです。

このままおシゲとおヨネのリベンジが進んでいけば
最後にラスボスが登場して決闘になるわけですが
そう簡単に物語は進まず、
元どん百姓の銀時(中村吉右衛門)が登場し、
手柄を上げてすっかり「サムライ」となり
化け猫退治を任命されることで話がややこしくなります。
親分の頼光(佐藤慶)の命を受けて
化け猫退治に馳せ参じる銀時ですが
すぐに化け猫たちが自分の母・おヨネと
妻・おシゲ
だと悟るのです。

お互いに苦渋の決断を強いられる格好ですが
「天地の魔神」との契約によって
化け猫としての復讐を許されているおシゲとおヨネは
「サムライ」を殺すことで魂を繋げているのです。
おシゲは銀時への愛しい想いに負け、
7日間という限定密月期間を経て地獄へ落とされます。

銀時のほうも、このふたりが
自分の母であり、妻であることは察しているはずですが
この状況を打開するだけの妙案は浮かびません。
わずかながら、銀時は
やっと手にしたサムライとしての名誉を
捨てきれないでいるようすも窺えます。

現在でも「サムライ・ジャパン」とかいって
「サムライ」はなにかと美化されやすい対象ですが
銀時が畑で鍬を振るっているときにいきなり連れて行かれたように
本来は日本人のほとんどが百姓で
「サムライ」というのは、やくざと同様、
一部の乱暴者だったということがわかります。

『薮の中の黒猫』は
第21回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品されたものの
トリュフォーやゴダールなどの政治的な反発による
「カンヌ国際映画祭粉砕事件」によって
映画祭自体がおじゃんになってしまいました。

「サムライ」批判に加えて
演劇的というか舞踏的な要素も兼ね備えた作品だと思いますが
時代の波にもまれてしまったこの作品は
正当な評価も「藪の中」なんでしょうかね。
(ウマイコト、キメタ!)





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