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妻は告白する

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(1961年/日本 91分)
監督/増村保造 原作/円山雅也 脚色/井手雅人 撮影/小林節雄 美術/渡辺竹三郎 音楽/北村和夫
出演/若尾文子、川口浩、小沢栄太郎、馬渕晴子、根上淳、高松英郎

概要とあらすじ
文芸春秋所載の円山雅也の『遭難・ある夫婦の場合』を「拳銃野郎に御用心」の井手雅人が脚色「好色一代男」の増村保造が監督した異色篇。撮影は「夕やけ小やけの赤とんぼ」の小林節雄。初夏のある日、北穂高滝谷の、第一尾根岩壁にしがみついていた、三人のパーティの一人が足を滑らせて転落、ザイルで結ばれていた真中の女も、引きずられて宙吊になった。最後部の男によって辛うじて支えられたが、宙吊の男が、近くの岩に飛びつこうと体を揺らせ始めたので、重みに耐えかねた男は絶叫し、その手から血がふき出していた。その時女はナイフで自分の下のザイルを切った……(映画.comより抜粋)



女はなんでも知っている

北穂高滝谷へ登山に出かけた3人は
一人が転落したために、岸壁で宙づりになってしまいます。
最も上にいる若い男は手から血を流しながら
懸命にザイルを引き揚げようとしますが
ぶら下がったふたり分の体重は重く、
真ん中に位置した女は最も下にいる亭主を支えているザイルを
ナイフで切り、亭主は墜落死。
かろうじて生き残った若い男と女でしたが
女が殺意を疑われて事件となり……

という前提で、いきなり法廷のシーンから始まります。
当然、裁判の争点は
ザイルを切った滝川彩子(若尾文子)に殺意があったのか
はたまた「緊急避難」なのかということになります。
法律用語で「緊急避難」とは
自分自身に生命の危機が迫っている時、
その原因を排除した結果、人を傷つけたとしても許されるというもので
要するに「仕方がなかった」といえる状況のことです。

とはいえ、法廷ミステリーの要素はほとんどありません。
なにしろ遭難したのは事実だし、
ザイルを切ったことに殺意があったかどうかが問題なので
検察側の追求も状況証拠ばかりです。
「妻たるもの、最後まで亭主の命を守ろうとするのが当然」
という巡査の証言が失笑をかうシーンがあったり、
「死体を見ても平然とした表情だった」という
印象に過ぎないものばかりで
殺意を断定するにはほど遠いのです。

裁判の進行に伴って、証言を再現するように
挟み込まれるシーンを見れば
彩子が亭主の滝川亮吉(小沢栄太郎)に不満を募らせ
一番上でザイルを支えていた若い男・幸田修(川口浩)
想いを寄せていることは明らかで
彩子が殺意を持ってザイルを切り、
亮吉を故意に落としたとしか考えられません。
そのような再現シーンのすべてが嘘の証言によるもので
最後に大どんでん返しが待ち受けているわけでもないので
この作品のテーマが事件の謎解きではないことは明白です。

この作品で描かれているのは
恐ろしいまでの女の業です。
『清作の妻』と同様に、彩子に扮する若尾文子は
自分が愛する男のためなら
社会から疎外されても、なんなら邪魔者を排除してでも
愛する自由と権利を貫き通そうとするのです。
だから裁判で浮気を疑われている幸田に
会いたいと思えば、平気で会いに行けるのです。

遠回しだが明らかに迫ってくる彩子に
幸田は同情の感情しか持っていないと主張しますが
幸田の婚約者の理恵(馬渕晴子)にはお見通し。
女の直感、恐ろしや。

理恵の予想通り、
やがて幸田も彩子のことを愛するようになりますが
彩子の愛情は徐々に狂気を帯びていき
裁判で無罪を勝ち取ったあと、
亮吉がかけていた保険金500万円
(現在だと約7,000万円くらい?)で
彩子は高級マンションを借り、
殺意を持ってザイルを切ったことを幸田に打ち明けます。
ショックを受けた幸田は彩子との別れを決意するものの
雨でずぶ濡れになった着物姿の彩子
幸田の会社に現れ、さらにすがります。
それでも幸田は彩子を振り切るのですが
失意のどん底にある彩子はトイレで青酸カリを飲み
自殺します。
幸田当てに残された封筒には
500万円の小切手と一緒に
「保険金は、あなたと
婚約者の理恵さんとの幸せのために使ってください」

と書かれた手紙が入っていたのです。
怖い……怖すぎる。

ミステリーとしてのどんでん返しはないものの、
(時系列が前後しますが)
理恵が幸田に対して
「私もあなたをほんとうに愛していたかわからない。
 ほんとうに誰かを愛していたのは彩子さんだけよ!」

というセリフに、ハッとしました。

彩子は、幸田のことをただ愛していただけ。
それは法律を犯したり、倫理にそぐわなかったり
するかもしれないが
理由はいたってシンプル。ただ愛していただけ。

とはいえ、彩子の愛情を受け止めるには
相当の覚悟が必要だと思いますよ。
男女の違いを問わず、人はそれぞれ、意識していなくとも
いろいろとそろばんを弾きながら生きているものですから
愛情だけを頼りに生きる彩子の姿は
うらやましくもあり、恐ろしくもあり。





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