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エッセンシャル・キリング

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(原題:Essential Killing 2010年/ポーランド・ノルウェー・アイルランド・ハンガリー合作 83分)
監督/イエジー・スコリモフスキ 脚本/イエジー・スコリモフスキ、エバ・ピャフコフスカ 撮影/アダム・シコラ 美術/ヨアンナ・カチンスカ 編集/レーカ・レムヘニュイ 音楽/パベル・ミキーティン
出演/ビンセント・ギャロ、エマニュエル・セニエ

概要とあらすじ
ポーランドの巨匠イエジー・スコリモフスキ監督が83分間セリフなしで撮り上げ、第87回ベネチア国際映画祭で審査員特別賞、最優秀男優賞を受賞したサバイバルアクション。アフガニスタンで米兵を殺害したアラブ人兵士ムハマンドは、ヘリの爆撃を受け、一時的に聴力を失う。米軍に捕まりどこかへ移送される途中、護送車のアクシデントにまぎれて脱走したムハマンドは、雪に閉ざされた深い森の中を逃走する。主演はビンセント・ギャロ。(映画.comより)



また、めんどくさい映画を観てしまった……

イエジー・スコリモフスキ監督といえば
『バリエラ(1966)』『早春(1971)』
日本で起きた事件を元に着想した『アンナと過ごした4日間(2008)』など
社会風刺を交えながら、ちょっと斜に構えた作風が特徴で
個人的に好きな監督なのですが
この『エッセンシャル・キリング』の突き放し方は
めんどくさい……考えるのがめんどくさい……。
それでも考えざるを得ないような作りになっているので
一応はバカなりに思いを巡らせてみることにしますが
監督の意図にどれほど近づけるか見当も付きません。
もう、いっそのこと、この作品を観なかったことにしようと
思うくらいなのです。わはは。

9.11後、いまだ潜伏するタリバンのテロリストを摘発するべく
捜索を続けているアメリカ軍が
ひとりのアラブ人兵士ムハマンド(ビンセント・ギャロ)を捕らえます。
頭を黒いずきんで覆われて、捕虜収容所に連行されたムハマンドは
尋問を受けるものの、爆撃によって聴覚に障害を負って声が聞こえません。
その後、ほかの捕虜たちと一緒に運ばれる途中に護送車が事故に遭い、
隙を見てムハマンドは逃亡する……というのがことの発端。

ここから先は、ず〜っとムハマンドの山中での逃亡生活
淡々と描いていくのです。
しかも、ムハマンドが叫ぶことはあっても終始無言でセリフなしなのです。
おそらくは、9.11を頂点とする
キリスト教とイスラム教の原理主義・排他主義による紛争から
着想を得ているのでしょうが
それはイエジー・スコリモフスキ監督がこの作品で表現しようとすることの
口実くらいにしか考えていないのではないでしょうか。
また、ムハマンドが逃走を続けなくてはならないことの
一応の動機でしかないように思います。

傷を負い、すんでの所まで追い詰められながらも
次々とタイミング良く新たなチャンスが訪れて
ムハマンドはなんとか生きのびています。
いつしかムハマンドの逃亡の日々は
アメリカ軍との戦いではなく、飢えとの戦いになっていきます。
樹木の皮を食い、蟻を食い、木の実を食い、
釣り人から盗んだ生魚にかぶりつきます。
ついには、自転車に乗っていて転んだついでに
赤ん坊に母乳を飲ませる母親に銃を突きつけ、
もう片方の乳房にむさぼりつく
のです。

ムハマンドが最終的に白い服を身につけて、
雪に覆われた背景と同化したのは偶然ではないでしょう。
誰に追われ、誰から逃げているのか判然としなくなったムハマンドは
いつしか自然=獣となろうとしているのです。
ときおり挿入される、アラーの教えを説くようなショットは
ムハマンドにかろうじて残された人間性なのではないでしょうか。
彼の過酷なサバイバルの唯一の拠り所が信仰なのです。
青い布が川に流れ、それをまとった女性が現れたのは
極限まで衰弱したムハマンドが見た幻想か……。

やがてムハマンドは、命からがら訪れた家の女性に
(これまた聾唖でしゃべれない)
傷の手当てをしてもらい、服を借ります。
翌朝、食事も振る舞われますが、口もつけずに
白い馬に乗って出発し、息絶えるのです。

『エッセンシャル・キリング』というタイトルの
エッセンシャル(Essential)とは、本質的、根本的、必須という意味。
すなわち「本質的に必要な殺し」ということになりますが
このタイトルに監督の意図が隠されているように思えます。
世界中で終わることのない紛争は
大雑把にみれば、それぞれが生き残るための殺し合いですし、
それは蟻を食べることとも、木の実を食べることとも
なんなら人が釣った魚を横取りすることとも同じではないか、
ということを極限の状態を使って描写することで
表現しているのではないでしょうか。

誰しも自分が生きていくために、他のなにかを殺しているのだと。





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