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自転車吐息

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(1990年/日本 93分)
監督/園子温 脚本/斎藤久志、園子温 撮影/北沢弘之 美術/鈴木卓爾 編集/石原肇
出演/園子温、杉山正弘、河西宏美、山本浩子、山道亮介、高木陽子、園いずみ、平野勝之、袴田浩之、園音巳、井口昇

概要とあらすじ
憂欝な日々を送る二人の予備校生の心情を描く青春映画。脚本・監督は8ミリ出身で「決戦!女子寮対男子寮」の園子温。共同脚本は8ミリ「ふたつくくり」の斎藤久志。撮影は北沢弘之がそれぞれ担当。(16ミリ)(映画.comより)



ここにジャクソン・ポロックが立っていた

『男の花道(1987年)』
PFF(ぴあフィルムフェスティバル)グランプリ受賞を受けて
PFFスカラシップ作品として製作された『自転車吐息』
スカラシップ(=奨学金)作品は
PFFグランプリなどの賞を獲得した監督たちだけに資格が与えられ
さらにその中から今後が期待される監督1名が選ばれ
劇場用映画監督デビューの援助を受けることができるのです。
近頃では「クールジャパン」というスローガンの元で
「無償で作品を募集しよう」とか
「クリエーターとは作品を作らせてくださいと頭を下げるものだ」
などと
平気で言い放ち、一儲けをもくろむ守銭奴もいるなかで
PFFのこのような活動には賛辞を惜しみません。
なにしろ活動の主催者側には「今後が期待される」才能を見抜く
目利きであること
が求められるのですから
「なんか、アニメとか日本のものが海外で受けてるそうじゃないか。
 ここはひとつあいつらに勝手に作品を作らせてだな……」
などと考える連中とは月とスッポン、雲泥の差なのです。

それはさておき、園子温『自転車吐息』は
『俺は園子温だ!(1985年)』(PFF入選)から
『男の花道(1987年)』を経てテーマ的につながっている作品のようです。
「ようです」なんつってるのは、もちろん僕が
『男の花道』を観ていないからなのです。たはは。無念。
園子温の過去作が収録されたDVD-BOXが発売され、
その中には伝説の『BAD FILM』も含まれているのですが
……いかんせん、価格が。貧乏ってイヤね、もう。

今になって観ると、主演もつとめる園子温がとにかく若い!
(あたりまえだけど)
当時の実年齢は28〜29歳ですから、
大学受験を控えた高校生を演じるにしては
年齢をとりすぎているように思えるものの
全く違和感を感じない若々しさです。
……などと自分で書きながら気づいたのですが
映画を観ている最中は園子温が本当に18〜19歳だと思いながら観ていて
「高校生でこんなことを考えていたのか!」と
作品の完成度と脚本の深みに驚いていたのでした。
劇場用映画監督デビューということで、
それはそれは荒削りだろうと思われるかもしれませんが
俳優陣のセリフ回しのつたなさを除けば
そのポテンシャルの高さに驚くはずで
この時点で、現在の園子温作品の源泉があることは
誰の目にもあきらかです。

北史郎(園子温)と親友の田村圭太(杉山正弘)
同じ新聞配達のアルバイトをしながら楽しくやっているものの
大学受験を控えている時期であり、
史郎の誕生日が元旦であることをはじめとして
新しい自分に変わりたい、というよりも
変わらざるを得ない状況に追い込まれているといったほうが
いいかもしれません。

史郎は遠くに行きたいといいながらも
かつて圭太といっしょに作った「一塁」という未完の自主製作映画の
続きを撮ろうとするあたりに
すぐに訪れる決断の時を引き延ばしているように見えます。
かたや、圭太は医者である父親(熊の着ぐるみ)の要請に応えるためにも
現実と向き合うことを受け入れているようにも見えますが
かつて惚れていた京子(山本浩子)への想いを引きずっています。
史郎や圭太よりひとつふたつ年上であろう京子は
すでに実家に連れてくるほど深い仲の大学の先輩の彼氏がいて
たばこをふかす様もすっかり大人です。
園子温作品において、男にとっての女は
つねに先を行かれる、決してかなわない存在なのです。
(激しく同意!)

そんな青春の通過儀礼に右往左往する主人公たちを横目に
やや達観しているかのように思えるのが
史郎の妹・方子(河西宏美)です。
小児麻痺による脚の不自由さを自力で克服した方子は
自分の脚で歩くことの重要さとありがたみを
すでに知っているのではないでしょうか。
過去の自分と決別し、新しい自分と立ち向かうために
かつて自分が乗っていた自転車を土に埋めたにもかかわらず
史郎はその自転車を掘り起こしてしまいます。
その後、「私」と書かれた旗を掲げて屋根の上で籠城した方子は
兄・史郎のふがいなさを本人よりも敏感に感じ取り
史郎のあるべき姿を自ら示して見せたように思えます。
そんな方子の行動に触発されたか
史郎は「俺」と書かれた旗を掲げて元旦を迎えたばかりの商店街を
『汚れた血』のドニ・ラバンのように駆け抜けます。

植物状態の圭太を自転車の荷台に乗せて
透明人間がしいた白線に沿って逃走する史郎は
燃える自転車を残して忽然と姿を消します。
途絶えた白線の続きを牛乳で描いた方子は
解き放たれたかのように、いつしか新宿のセンターラインを
どこかへ向かって歩いていくのです。

若者が作った未熟な作品とあなどるなかれ。
園子温らしさが存分に詰まった作品でした。
また、『片腕マシンガール』の井口昇や
『監督失格』の平野勝之らが出演しているのも
才能あふれる若者たちが互いに惹かれあっているさまがうかがえて
ほほえましい気持ちになります。





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