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クロニクル

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(原題:Chronicle 2012年/アメリカ 84分)
監督/ジョシュ・トランク 脚本/マックス・ランディス 撮影/マシュー・ジェンセン 美術/スティーブン・アルトマン 編集/エリオット・グリーンバーグ
出演/デイン・デハーン、アレックス・ラッセル、マイケル・B・ジョーダン、マイケル・ケリー、アシュレイ・ヒンショウ、ボー・ピーターセン、アンナ・ウッド

概要とあらすじ
超能力を手にした高校生たちが、その力に翻弄されていく姿をファウンドフッテージ形式で描いたSFアクション。平凡で退屈な日常生活を送る3人の高校生アンドリュー、マット、スティーブは、ある日、特殊な能力に目覚める。手を触れずに女子のスカートをめくったり、雲の上まで飛んでアメフトをしたり、3人は手に入れた力を使って刺激的な遊びに夢中になっていく。しかし、そんなある時、あおってきた後続車両にいら立ったアンドリューが力を使って事故にあわせたことから、3人は次第に自らの力に翻弄され、事態は予期せぬ方向へと発展していく。(映画.comより)



せめて、童貞を捨てさせてあげたかった

全米ランキング4週連続1位の大ヒットを記録したというから
鳴り物入りで公開されてもおかしくないはずの
『クロニクル』ですが
なぜか、首都圏限定でしかも2週間のみの公開。
しかも1,000円という特別料金で
たたき売りのようにして公開されました。
その後、話題が話題を呼び、平日でも満員御礼で
めでたく公開延長することになったのですが
日本の配給会社の審美眼が疑われても致し方なく、
また、観客が求めるものを理解していないことも窺われ、
良作を啓蒙することも、逆に大衆に迎合することもできない
日本の配給会社のだめっぷりが浮き彫りになります。
ま、そんなことは置いといて
随分前から予告編を観て胸躍らせていた僕は
やっと本作にお目にかかることができたのです。

主人公の高校生アンドリュー(デイン・デハーン)
母親は重病、父親は働かずに朝から酔っぱらってるという
最悪に辛い状況で、しかもいじめられっ子。
しかも、童貞。
デイン・デハーンといえば、
『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命』
ライアン・ゴズリングの息子役が記憶に新しいのですが
いかにも鬱屈した顔つきがアンドリュー役にはまっています。
ライムスター宇多丸氏も同じように表現していたので
受け売りみたいで嫌だけど
「デカプー+デルトロ」としか言いようがありません。
すでに後退の兆しを見せる前髪をみるに
今後、歳を重ねると
さらにジャック・ニコルソンが加わることも予想されます。

アンドリューは、手に入れたカメラを使って
とくに目的もなく自分の日常を撮影しているのですが
オープニングから鏡に映った自分を撮影していることから
彼が「もっと自分をみて欲しい」という欲求を持ち、
またファインダー越しにしか世間と接することができないという
この作品全体のテーマを表現しています。
実際、いわゆる「自画撮り」の映像を
自らネット上にアップする人たちは少なからずいるのですから
(場合によっては興味を惹くために裸になって)
現代の過度な「承認欲求」を満たすためには
一度メディアを介在させる必要がある
(と感じている)ということなのかもしれません。

この自画撮りはPOV(ポイント・オブ・ビュー)と
いわれていたのが、いつのまにか
「ファウンド・フッテージ」(登場人物が記録した映像という設定)
という表現に変わっていて
『クローバー・フィールド』に代表されるような
数多くの作品にさんざん使われ、
モキュメンタリーとすることで
CGに驚かなくなった観客にリアリティーを提供していたものの、
食傷気味の感は否めず、
さらにはカメラを持っている撮影者の姿が映ることは当然ないので
場合によっては、感情移入の妨げになることもあると
感じていたのですが
この作品の場合は、アンドリューがカメラを宙に浮かせ、
自在に操ることができるという設定のおかげで
「ファウンド・フッテージ」でありながら、
登場人物全員の表情を同時にとらえることが出来、
しかも、ありがちな荒れた手ぶれ映像でもないという
なんとも言えない不思議な効果を上げています。
さらには、アンドリュー所有のカメラにも固執せず
いとこのマット(アレックス・ラッセル)が想いを寄せる
ケイシー(アシュレイ・ヒンショウ)が撮影する映像も交えているので
「ファインダー越しの現実」という作品のテーマが
より克明になってきます。

正体不明の洞穴を見つけたアンドリューと
マット、スティーブ(マイケル・B・ジョーダン)の3人は
穴の中でなにやら結晶のようなものに遭遇して恐慌に見舞われ、
アンドリューが撮影していた画面が
真っ暗になって暗転したあと、
次のシーンでは、
すでに「念動力(テレキネシス)」を身につけた3人が
芝生の上で「念動力」の腕試しをしながらじゃれているという
シーンのジャンプの仕方が素晴らしい。
なにしろ、洞穴の中でカメラをなくしてしまって
撮影できなかったのですから
その間の映像がないのは当然だし、
無駄な説明を省いたうえで、観客が疑問を抱くことのない編集は
見事としかいいようがありません。

ここからが、僕が予告編を観て
この作品は面白いに違いないっ、と思った展開です。
念動力を手にした3人がやることは
スーパーで他人のカートに余計な商品を入れたり
(テディベアのくだりは『TED』かな?)
駐車してある車の位置を変えたり、
果てはスカートめくりをしたりと、本当にくだらなく、
もし自分に念動力があったなら
まっさきにやってみたいことばかりです。

やがて、念動力によってものを動かせるということは
自分の身体を動かせば空を飛べるじゃん!ってことに気づき、
ぐっと物語が加速します。
ここでも、さきほどのシーンのジャンプと同様に
自分を浮かべることに目覚めた3人は
次のシーンでは、雲をかき分けながら
大空をぎゅんぎゅん飛び回っているのです。
それはそれは、爽快なのです。

タネも仕掛けもないマジックで
一躍人気者になったアンドリューでしたが
慣れない酒を飲み過ぎて、童貞喪失に失敗。
これで童貞どころか、人格をこじらせたアンドリューは
どんどん暴走していくのです。
自分が「頂点捕食者」であるという考えに到ったアンドリューは
「ほんとは僕は強いんだからな!」という
自己承認欲求を爆発させるのです。

ラストへ向かうクライマックスは
監督自ら公言しているとおり、
大友克洋の『AKIRA』や『童夢』の影響が多く見られます。
アンドリューは『AKIRA』の鉄男そのものですし、
いとこのマットは、さしずめ金田の役回りか。
シアトルの街中を飛び回るシーンは
『童夢』を読んでいたときの浮遊感を実感できます。
また、アンドリューのキャラクターには
『キャリー』の要素も感じられます。

重要だと思われるのは
ものを自在に動かしたり、自在に飛び回ったりするのが
少しも馬鹿馬鹿しいことに思えないことではないでしょうか。
これは「ファウンド・フッテージ」というスタイルが
突拍子もない設定に説得力を与えているからかも知れません。
ものの浮かび方や、パトカーの引きずられ方など、
とんでもない豪奢なCGを使っているとは思えないものの
その動きにかえってリアリティーがある
のです。

クライマックスでは、今、いったいだれのカメラ(目線)なのか
わからなくなるところもありましたが
ときおり監視カメラの映像や、ニュース映像を盛り込んだりと、
自分の眼で目撃したことよりも
残された映像(証拠≒クロニクル)のほうに
リアリティーを感じている我々の現実を
表現しているかのように感じました。

これが監督デビュー作となるジョシュ・トランク監督
注目を浴びるきっかけとなったのは、2007年にYouTubeに投稿した
「Stabbing At Leila’s 22nd Birthday」という
1分半ほどの作品だったとか。
ドキュメンタリーを撮ったこともあるという監督のこういった経歴は
もしかしたらアンドリューに反映されているのかも知れませんし、
誰もが発信者・表現者となりうる時代なんだなと
改めて思いました。

当然、ジョシュ・トランク監督が
Youtubeに投稿した映像のクオリティが高かったからこそですが
動画をアップしてから一週間後には
エージェントから連絡があったという話を聞くと
この作品を最小規模でしか公開しないような日本では
そんなことは不可能だろうと暗澹たる気持ちにもなりますね。

元ネタは、日本の『AKIRA』なのに。







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コメント

早稲田松竹にて

最初は映像が粗いし手持ちのカメラで進む演出に、じじぃはついてゆけるか不安でしたが、暫くしたら値段の高いカメラに変わって画面も綺麗になって一安心。テンポも良く楽しかったぁ。
監督一作目でこのレベルは先が楽しみです。人物の描き方もそれなりだったし…。最後迄、撮られたカメラ映像で終わらせる(ラストは?だったけど…)根性はカッコいいです。

映画館を出たあと若いカップルが「ひとひねり足りないねぇ」「そうだねぇ♪」って会話していましたが、変にオタク臭も感じない直球の作りでいいじゃんって思いましたけどね。

主人公のお兄ちゃんはホント後半はディカプリオのアビゲイター状態になっていましたね。黒人のお兄ちゃんはザック・エフロンの新作とかにも出ていてなんか売れそう。

アップされているYouTubuの動画観させてもらいましたがあれがきっかけになるとは…。いやはやアメリカのプロデューサー達の観る目は凄いっ。じじぃは全く良さが見えなかったです。

2014/02/04 (火) 15:18:11 | URL | OKU #- [ 編集 ]

Re: 早稲田松竹にて

OKUさん
やりつくされた感のあるPOVで、超能力でカメラを自在に操る(=手に持っていなくてもOK)という設定が見事です。(一回しか使えないけど)さらに「自画撮り」の多用で自意識過剰な思春期も表現できているのが素晴らしいと思います。
> いやはやアメリカのプロデューサー達の観る目は凄いっ。
くだらないと言われがちなハリウッドですが、エンタメの目利きとしてはやはりプロでしょうね。どんどん新しい血を入れるのを厭わないのはハリウッドのいいところでは?

2014/02/05 (水) 13:45:30 | URL | のほうず #- [ 編集 ]

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