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原子力戦争 Lost Love

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(1978年/日本 106分)
監督/黒木和雄 脚本/鴨井達比古 原作/田原総一朗 撮影/根岸栄 美術/丸山裕司 音楽/松村禎三 録音/安田哲男 照明/伴野功 編集/浅井弘
出演/原田芳雄、山口小夜子、風吹ジュン、石山雄大、浜村純、佐藤慶、岡田英次、磯村みどり、阿藤快

概要とあらすじ
原子力発電にスポットを当て、青年ヤクザが目撃した、ある港町の原子力発電所をめぐる賛成派と反対派の利権争いを描く。田原総一郎原作の同題名小説の映画化。脚本は「こちら葛飾区亀有公園前派出所」の鴨井達比古、監督は「祭りの準備」の黒木和雄、撮影は「ある機関助士」の根岸栄がそれぞれ担当。(映画.comより)



お食事と原子力みやげ

およそ35年前に公開された『原子力戦争 Lost Love』
一度はビデオ化されるも廃盤になり、
観るのも難しい状況になっていたそうですが
東日本大震災による福島第一原子力発電所の事故発生を受けて
2011年にDVDが発売された、という経緯があるようです。
この経緯から鑑みても
たとえ危険があるとわかっていても
実際に問題が起きるまでは
僕たちがいかにその危険に無頓着だったかが窺えます。

心中と思われる男と女の死体が
砂浜に打ち上げられるオープニングのあと、
「お食事と原子力みやげ」という
あっけらかんとした看板が掲げられた港町に
全身白で固めた素性の知れない男、坂田(原田芳雄)が辿り着き、
青葉望(能登智子)の行方を住民に聞いて廻ることから始まります。

その坂田を自分のスクープのために利用しようと企んでいるのが
港町の支社に左遷されている新聞記者・野上(佐藤慶)です。
坂田と野上の奇妙な共闘(友情)関係を軸にして
心中事件にまつわる謎解きの物語が展開していきます。
二人の親近感は、坂田が野上の吸っているハイライトを
野上に断りもなく一本抜いて吸うのに対し、
警察に捕まった坂田が刑事にたばこを勧められると
「ハイライトは吸わねえんだ」と断ることからもわかります。
残念ながら、原田芳雄も佐藤慶も亡くなってしまいましたが
二人とも本当に個性的な演技を見せてくれています。
とくに原田芳雄はいつものように無頼漢を演じていますが
この作品での原田芳雄は、いまでいうなら
ベニチオ・デル・トロと見紛うばかりの男の色気!

東京の大学に進学したものの中退して
ソープ嬢となった青葉望のヒモが坂田(原田芳雄)なのですが
坂田は青葉望が心中したことに納得がいきません。
しかも青葉望は地元の有力者の娘で
父親や兄は青葉望の心中による死をひた隠しにしています。
坂田はとにかく青葉望の死の真相を知りたいがために行動し、
野上は坂田の直情的な行動力を利用して取材をするうちに
心中事件の男が原発の技術者だったことから
どんどん原発にまつわる地域ぐるみの暗部に触れていきます。

基本的にはフィクションですが
途中で挿入される福島第二原子力発電所の入口詰め所のシーンは
ゲリラ撮影
です。無許可で施設に突入し
「撮影しないでください」という係員の制止を受けながらも続行。
原田芳雄も半分だけ役に入っている感じで
勝手に施設内に入ろうとします。
DVDの特典映像には、原作者である田原総一朗
映画評論家の真魚八重子の対談が収録されていましたが(録音最悪)
「このシーンで原田芳雄が逮捕されなかったのが物足りない」
ふたりとも語っておりました。特典映像なのにダメ出し。
しかし、このシーンの施設の警備員たちの過剰な反応は
原発施設がアンタッチャブルな存在であることを際だたせています。

それはともかく、坂田を慕う青葉望の妹・翼に扮する風吹ジュン
可憐さといったらこの上なし!
名演技というべきかどうか迷うほど自然な振る舞いで
男をはねつけながらも甘えるような雰囲気がたまらないのです。

まったく化粧っ気のない純真なイメージの風吹ジュンとは対照的に
心中したとされる山崎の妻・明日香に扮する山口小夜子
いつものとおりの山口小夜子。(なんだこの言い方)
モード全開ばっちりメイクの悪女です。
この作品の中で、明日香の存在がもっとも虚構性が高いと思われますが
とにかくその時点でもっとも強い存在に取り入っては
周囲を翻弄する明日香は、人間の持つ魔性の象徴ではないかと
思えてくるのですが、深読みでしょうかね。

原発を巡る得体の知れない陰謀の正体に徐々に近づくなかで
新聞記者・野上と原子力研究の権威である神山教授(岡田英次)
長い一本道を歩きながら話すシーンは
この作品が原発の裏に潜む巨悪の存在を暴き、告発することだけが
目的ではないことを示しています。
神山教授は、原子力発電所の技師・山崎が死の前に残した
原発事故に関する資料を見て一笑に付し、
野上をあしらう態度はまさに「御用学者」そのものでしょうが
神山教授が語る、輸入による石油燃料に頼りきった
現状の日本が抱えるエネルギー問題に対する指摘は
的外れなものではないと思えますし、
「チャイナ・アクシデント」という表現を
(おそらくチャイナ・シンドローム=メルトダウンのこと)
マスコミがエキセントリックに使いたがることに対する苦言は
科学者として真っ当だと思うし、311以降の僕たちが
実感していることでもあるでしょう。
「大事故が起きる可能性は?」と食い下がる野上に対して
「君がここで隕石に当たる可能性だってあるよ」と返す
神山教授のセリフが印象的です。

さて、「隕石に当たった」現在の僕たちは
日本政府や東京電力という巨悪の不手際に腹を立て
(場合によっては、子どもや女性を人質にして)
放射能の恐怖に恐れおののいているわけですが
この作品で描かれているのは
そのようなわかりやすい敵を仕立て上げ
短絡的で感情的な反原発の思想を語ることではなく
原発のある街の住民たちの切実な生活の実態です。
さびれた漁港の経済は原発が担っているという事実は
フィクションではなく、現実の深刻な問題です。
この住民たちが抱える生活の問題も含めてクリアしなければ
本当の脱原発とは言えないのではないでしょうか。

坂田と一緒にいた翼は、住民によって連れ去られ
坂田は死体となって砂浜に打ち上げられます。
ラストで、坂田が青葉望にプレゼントした傘を差し、
トンネルを抜けていく翼は
それまでの純真な表情とは一変して
魂が抜けたような佇まいでした。





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