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ニュースの天才

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(原題:Shattered Glass 2003年/アメリカ 94分)
監督・脚本/ビリー・レイ 撮影/マンディ・ウォーカー 音楽/マイケル・ダナ
出演/ヘイデン・クリステンセン、ピーター・サースガード、クロエ・セビニー、スティーブ・ザーン、ハンク・アザリア、メラニー・リンスキー、ロザリオ・ドーソン

概要とあらすじ
98年、政治雑誌「The New Republic」誌の最年少記者スティーブン・グラスはスクープを続々執筆して注目を浴びるが、彼の記事がすべて捏造だったことが判明する。この実話についてのピューリッツアー賞作家バズ・ビッシンジャーの記事を原案に、「ボルケーノ」「ジャスティス」などの脚本家ビリー・レイが脚本を執筆して監督デビュー。主演は「スター・ウォーズ エピソード3」のダースベイダー役ヘイデン・クリステンセン。(映画.comより)



悉く書を信ずれば則ち書無きに如かず

我が国日本では、とくに東日本大震災の直後、
もっと正確に言えば福島第一原発が異常を来した直後から
日頃耳慣れないシーベルトだのベクレルだのの科学用語が飛び交い、
しかもそれがミリだったりマイクロだったり
%年だったり%日だったりするもんだから
あっという間に僕たちは混乱し、
懸命な人は清濁厭わず冷静に情報を集め、
またある人は自分が気に入る情報だけを正義の名の下に採用して
いつしか無益な派閥争いを演じるようになっています。

イソップ寓話のオオカミ少年を引き合いに出すまでもなく
情報というやつは、当然事実であることが前提なのですが
そこには「信じたい」という欲望がからんできて
場合によっては、少々事実と違っていても刺激的な方が好ましいという
情報を受け止める側の人間の心理がからんでくるので
話がややこしくなるのです。

実際の事件を元にした『ニュースの天才』
捏造された記事を掲載してしまうジャーナリズムのモラルを問いながら
情報を扱う人間の心理に重きを置かれているように感じました。

大統領専用機に常備されているほど権威ある雑誌「The New Republic」
記者である弱冠25歳のスティーヴン・ダラス(ヘイデン・クリステンセン)
医者か弁護士になれという両親からのプレッシャーを感じ、
ジャーナリストとして成功して両親を見返したいという前提があるものの
彼の境遇に同情する気にはなれません。
記事の事実を少しずつ「盛る」ことによって
周囲が面白がるのをみてどんどん調子に乗っていったのでしょうが、
とはいえ、小さな嘘を隠すためには、
さらに大きな嘘をつかなければならなくなるわけで
スティーヴンの捏造が正当化されるはずはなく
彼の虚栄心が根本にあるのは否めません。
どこまで事実に基づいているのかわかりませんが
女性の口紅をさりげなく褒めたり、パーティーでの気配りの仕方は
彼が周囲から好意的に見られたいという自己顕示欲
描いていると思います。

かたや、編集部の人間関係においては
社長と口論することも厭わず、スタッフたちからの信望が厚い編集長
マイケル・ケリー(ハンク・アザリア)がクビになり、
いまいち頼りないと思われている
チャック・レーン(ピーター・サースガード)
新たに編集長の座に就いたことがスタッフたちの不信を募らせ
逆説的にスティーヴンに対する盲目的な信頼の強度を増していくのです。
恋愛関係は描かれないものの、二人の同僚女性記者の
スティーヴンに対する接し方に恋愛に似た微妙な親近感を感じました。

ライバル誌の指摘によって、
スティーヴンの捏造は徐々に暴かれていくのですが
捏造の隠蔽工作に躍起になっているスティーヴンに同情の余地はありません。
スティーヴンが追い詰められていくほど
その場しのぎの言い訳を繰り返し、チャックに責任転嫁したりして
あからさまにオロオロしていくさま
醜悪としかいいようがなく、
チャックにクビを宣告されて、一度オフィスから出るものの
しばらくしたらまた戻ってきて泣きながら許しを請うシーンは
見苦しいにもほどがあります。
逆に、途中から人間的深みをどんどん増してくるチャックの演出は
見事だと思いました。

先述したように、ジャーナリズムのモラルに重点が置かれているので
捏造された記事によって被害を被った人は登場しませんが
実際には少なからず被害者は存在するはずです。
できるだけ刺激的な情報を流して、不安を煽り、
短絡的なオツムの持ち主を喜ばせながら
当事者の心情を蹂躙するような自称ジャーナリストは
この国にも実在します。

この作品は、有名ジャーナリストとなったスティーヴンが
出身高校を訪ねて生徒達に講演するシーン
カットバックされながら進んでいきますが
最後に教室にいるのはスティーヴンただひとり。
後輩たちに成功談を語っていたのは、
スティーヴンの虚栄心による妄想なのです。

テレビや新聞を見てもいないのに「マスゴミ」と称して信用せず
なぜかネットの情報は鵜呑みにしてソースもあたらない人は
おそらく今後も後を絶たないんでしょうが
あんまり目線がウエスギにならないように
気をつけましょうね、っと。





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