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ザ・チャイルド(2012)

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(原題:Come Out and Play 2012年/メキシコ 87分)
監督・脚本/マキノフ 音楽/ジョルジ・フアレス・オルタ
出演/ビネッサ・ショウ、エボン・モス=バクラック、ダニエル・ヒメネス・カチョ

概要とあらすじ
ある島へ観光にやってきた若い夫婦が、大人を惨殺する子どもたちに襲われる恐怖を描いたスペイン製カルトホラー「ザ・チャイルド」(1976)をメキシコでリメイク。新婚カップルのフランシスとベスは、休暇を利用してスペイン沖の島へやってくる。しかし、その島にはなぜか子どもしかおらず、大人の姿が見えない。徐々に不安を募らせていく2人は、ようやくひとりの老人を目撃するが、笑いながら駆け寄ってきた少女が、その老人を無残に殴り殺してしまう。(映画.comより)



少しは頭使え、バカ!

1976年のスペイン映画『ザ・チャイルド』
僕にとって、まさにトラウマ映画で
長い時を経て、30年記念DVDが発売されたのを機に再見しても
その異様な空気感はちっとも色褪せていなかったのです。
そんな、自分にとって大事な作品だからこそ
リメイク版が公開されたからといって、いそいそと観に行く気にもなれず
スルーしているうちに公開期間が過ぎていったのですが
どういうわけか『ザ・チャイルド』目当てで
このブログを訪れてくれる方が多く、
DVDが出たということだし、いっちょ観てみようと思った次第です。

とはいえ、オリジナルの『ザ・チャイルド』に
それ相応の思い入れがある僕にとっては、
リメイクなど作ってみたところで、オリジナルを超えられるわけもなく
期待を膨らませる要素はあまりないのですが
やっぱり、文句を言うなら観てから言うべき。
可能な限り余計な先入観を振り払って、いざ再生スタートしたのです。

オリジナルの冒頭にある、世界中の戦争や紛争によって
虐げられる子どもたちをとらえた8分間にも及ぶ記録映像はカットされ、
舞台をスペインからメキシコに移したこの作品は
カーニバルの最中、ボートを貸してくれる相手を探す
フランシス(エボン・モス=バクラック)の不安げな表情で始まります。
ほうほう、こういう切り口できましたかと思ったのですが
冒頭の記録映像を捨て去るということは
歴史的に子どもたちが大人によって被害者になってきたという
オリジナルのテーマが持つ大義名分を捨て去ることであり、
それはこの作品がホラーもしくはサスペンスとして
純粋にエンターテイメントに徹するという宣言でもあるわけでしょう。
それについては、監督の意図ですから問題ありません。
ただ、おろおろと汗まみれになってボートを探すフランシスは
すでに不安な要素を携えていて、
さらに彼が一人っきりであることが
この後の展開の前振りとしていかがなものかと思いました。
ホラー映画の定石からいっても、やはりバカンスにやってきた
呑気な夫婦の弛緩した雰囲気を感じさせるべきではないでしょうか。

マキノフ監督は、なぜか意味のないところで
謎めいたような演出をする
のですが
フランシスがなんとかボートを貸してくれる相手を見つけ、
ホテルの部屋に帰ってきたときも、
しばらくは妻ベス(ヴィネッサ・ショウ)は声だけで姿が映りません。
そこをもったいぶることになんの意味があるのかわかりませんが
この時点では、この夫婦は離島へ行くことを楽しみにしているはずですから
普通にベスの顔をとらえて、観客にちゃんと紹介してもらいたいものです。
オリジナルでは、このホテルに到るまでに
夫婦のうきうきしたバカンス気分が演出されながら、
ビーチに流れ着いた死体やテレビから流れるちょっとした嫌なニュースから
じわじわと不吉な雰囲気を漂わせています。

フランシスに扮するエボン・モス=バクラックは、まあいいとしても
妻ベスに扮するヴィネッサ・ショウの大根ぶりは眼も当てられません。
彼女のいかなる表情にも
ベスという女性を表現できているとは思えないのですが
お腹の赤ちゃんに「刺される」といいながら息絶えるシーンの演技など
まるで学芸会のようで、ずっこけました。
そもそも、軽く太っているのがすでに美しくなく、
たしかに妊娠中だから少々太っているくらいが本当でしょうが
そんなことは映画で許される嘘をついてでも、可憐な感じにしてほしいところ。

基本的に、オリジナルをなぞるようにして展開していくのですが
なにひとつ新しいアイデアを感じることができません。
もうほんとに、ずべてが改悪としかいいようがなく
「ザ・チャイルドごっこ」を観ているようです。

島には人がいないんだから、無音であることが重要なのに
シンセサウンドによる余計な劇判をつけることによって
真っ昼間の無人の街が放つ不安感が台無しです。
老人が子どもたちに、よってたかって痛めつけられるシーンは
オリジナルでは、逆さで宙づりにされた老人が
鎌のようなものでザクザクいじられるのですが
これは冒頭のカーニバルで、割れるとあめ玉が落ちてくる
くす玉割り(?)をする子どもたちが伏線になっていて
子どもたちが遊びの延長で人殺しをやっているという意味が出てくるのですが
この作品での子どもたちは、ただナイフでグサグサと
老人を刺し殺すので衝撃が半減するうえ、不可解なだけです。

どうも、マキノフ監督はこのような薄っぺらいゴア表現が
過激だと思っている
ふしがあって
子どもたちが死体の手脚を切り刻んだり、眼球や生首で遊んだり、
ちぎった耳のネックレスをつくってみたりと
オリジナルにはない演出があるものの
「怖い」と「グロい」を勘違いしているように思えます。
必然性のないグロ表現は、ハンバーグを作る姿を見るのと同様に
少しも恐怖を煽りません。
そのくせ、演出として絶対必要であろうと思われるような
決定的な瞬間は見せないのです。

僕がオリジナルを観てトラウマになっているひとつに
教会でのシーンがありますが
オリジナルでの、死んだ女性の胸をまさぐる少年たちのかわりに
この作品では顔と腹をえぐって解体でもしているような
描写になっています。
なんすか、これは?
やっぱりどうも、こういうことがショッキングだと思っているようですが
死体のおっぱいをまさぐる少年たちのほうが
圧倒的に気味が悪く、ショッキングです。

ベスが窓から子どもに銃で撃たれそうになるシーンは
オリジナルでは、おかっぱ頭のいかにも愛らしい男の子
ニコニコしながら銃を向けることに怖さがあったのですが
この作品の男の子は眉間に皺を寄せて、ちっとも愛らしくありません。
このシーンに限らず、全体を通して
「釣り人くん」に代表される子どもたちのキャラクターが
曖昧で魅力に欠けるのもいただけません。

オリジナルとの違いをあげつらうことが目的ではありませんが
ホラーやサスペンスの技法的な力不足が眼につき
それじゃ、ちっとも恐がれないんだよなーと思うところが多かったのですが
もっともがっかりしたのはラストシーンです。

フランシスが桟橋にたどり着くまでの
スリリングな昂揚もまるっきりないのですが
とにかく襲いかかってくる子どもたちの人数が少なすぎ。
そして、最も肝心だと思われるのは
襲ってくる子どもたちを振り払っているフランシスが
やってきた巡視艇に助けを求めるでもなく
フランシスを見つけた巡視艇もすかさずフランシスを射殺してしまう
ことです。
襲ってくる子どもからなんとか逃げようとするフランシスが
巡視艇から見れば子どもを襲っているようにしか見えないという
不条理がまったく無視されています。
これは看過できない大問題です。
このオリジナルのラストシーンの不条理こそが、
僕にトラウマを植え付けたのですが
このマキノフとかいう監督は、この不条理をまったく理解していないようです。
しかも、水中からのカメラでとらえた
巡視艇に撃たれて海に浮かんだフランシスは
まばたきしてやがった! なにやってんだよ!!

名作と呼ばれるような作品のリメイクを作ることが
それはそれは難しいのはわかりますし、
それなりに優しい眼で見守る必要があるのかもしれませんが
オリジナルを忠実に再現するなら完璧に、
そうでないなら大胆な新解釈を施してもらわないといけません。
もし、このリメイク版しか観たことがない方がいらっしゃれば
ぜひ、オリジナル版をご覧になってください。
クオリティーの差に唖然としますよ。





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