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LOOPER /ルーパー

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(原題:Looper 2012年/アメリカ 118分)
監督・脚本/ライアン・ジョンソン
出演/ブルース・ウィリス、ジョセフ・ゴードン=レビット、エミリー・ブラント、ポール・ダノ

概要とあらすじ
「BRICK ブリック」のライアン・ジョンソン監督とジョセフ・ゴードン=レビットが再タッグを組んだSFアクション。ブルース・ウィリスとゴードン=レビットの主演で、30年後からやってきた未来の自分と対じする暗殺者の姿を描く。タイムマシンの開発が実現するも、法律で使用が禁じられている近未来。法を恐れぬ犯罪組織が、消したい標的をタイムマシンで30年前に送り込み、そこにいる「ルーパー」と呼ばれる暗殺者に標的を殺させていた。凄腕ルーパーのジョーはある日、いつものようにターゲットの抹殺指令を受けるが、未来から送られてきた標的は30年後の自分自身だった。(映画.comより)



もし過去に戻れるなら、何歳のとき?

……なんていう妄想を誰もが一度はしたことがあるでしょう。
中学生? 高校生? いやいやせめて結婚する前の自分に
「もっとよく考えたほうがいいぞ」と忠告するか……
そんな妄想を疑似体験させてくれるのも映画の愉しみのひとつです。
「あたしは今が幸せだから、過去に戻りたいなんて思わないわ」
なんていう挫折知らずのリア充さんは……
とりあえず引っ込んでろ(笑)。

なんだかのどかな場所に、手持ちぶさたにたたずむ男。
懐中時計に目をやる。地面に敷かれたシート。
観客が状況を把握しきれないでいるとき、
突然シートの上に膝を突いた人間が出現するやいなや
男は即座に銃を放ち、その人間を撃ち殺してしまう。
この人間の出現から射殺されるまでのタイミングが素晴らしい。
これで観客は一気に作品世界へ「トリップ」させられてしまいます。

『LOOPER/ルーパー』の複雑さは、物語そのものよりも
タイムマシンによって時間を行き来する設定と仕組みを
常に頭の中で再確認しながら見ていないと
作品世界から取り残されるところにあります。
この世界観を説明するのに序盤で長い時間が必要なのは
致し方ないのですが、それでも説明的な演出は最小限に抑えられて
もしくは説明的と思わせない演出だったのではないかと思います。

2074年では、ナノテクノロジーの発達により
人体に埋め込まれたナノマシンによってその人間の居場所や生死が
すぐに判明してしまうため、殺したいやつがいても殺せない。
だから殺したいやつをタイムマシンで30年前に送ってから殺す、と。
その処刑執行人の役割を担った者は、その処刑システムを口外しないように
送られてきた30年後の自分を大金と引き替えに殺し、
大金を手にした自分は、また30年経ったのちにタイムマシンで送り返され、
若い自分に殺される。そして、また30年が経ち……
というふうに延々と続くので、彼らは「ルーパー」と呼ばれているのです。

脚本は、主人公ルーパーのヤング・ジョーに扮する
ジョセフ・ゴードン=レビットのアテ書きだそうですが、
アテ書きにもかかわらず、オールド・ジョー(30年後のジョー)に扮する
ブルース・ウィリスに似せた特殊メイクを施し、
喋り方や仕草まで研究したそうで、
それをアテ書きと言えるのかどうかは別にして、面白いですね。

オールド・ジョーことブルース・ウィリスは
年は取ったもののそれだけ経験も積んでいるわけで
ヤング・ジョーに比べて強いったらありゃしない。
銃を構える姿もおなじみなのですが
『LOOPER/ルーパー』の上映前、2013年2月にロードショーされる
『ダイ・ハード/ラスト・デイ』の予告編が流れ、
さらにその新作とは、ジョン・マクレーンが
息子と一緒に悪と戦うという非常に紛らわしい内容
それでなくともややこしいのに勘弁してくれと思いましたよ。はは。

この作品は近未来を描いたSFでありながら
未来を感じさせるようなプロダクトやファッションが登場しません。
現在と地続きであることを強調し、むしろ古風にさえ見えます。
SFの世界でさえも,未来を明るいもの、今より発達したものとして描くのは
困難なほど、現在は行き詰まっているのでしょうか。
本筋とは直接関係のないエピソードとして、2044年を
富裕層と貧困層の格差が絶望的に広がっている世界として描いています。
エネルギーに関する問題も小さく扱われていますが
監督が明らかに意図して現代の世界に対する悲観的なメッセージ
表現していると思われます。
パーティーで浮かれ、ラリったヤング・ジョーたちが
貧困層の子どもを車で轢きそうになるシーンで
子どもを呆然と見つめるヤング・ジョーは何を思ったのでしょうか。
幼少期の自分の姿か……はたまた、
子ども=未来を台無しにしてしまう社会か……

「ルーパー」としての本来の役割を果たしたヤング・ジョーは
(要するに30年後から送られてきたオールド・ジョーを殺し、
 やがてオールド・ジョーになるヤング・ジョー。めんどくさっ)
手にした大金を元手に上海で余生を過ごします。
パンフレットによると、もともとの脚本では
フランスのパリに設定されていたところ、中国の配給会社が
上海ロケを提案してきたので変更したとあります。
ヤング・ジョーがフランス語を勉強していたのはそのためで、
ルーパーたちのボスがヤング・ジョーに中国をすすめるのは
ボスが30年後のヤング・ジョーを知っているからでしょうね。
(ボスは30年後から送られてきているのです)
上海ロケが偶然から生まれたとはいえ、結果的に
『ブレードランナー』から連なる西洋人から見た東洋のSF感を受け継ぎ、
現在の中国経済の驚異的な隆盛も採り入れることで
監督が伝えたい陰のメッセージをより強化することに成功したと思います。

*追記
 よくよく考えてみると、上海ロケの打診を受けて脚本を変更するなら
 パリを上海に置き換えるだけでよく、ジョーが初めから上海に行くつもりで
 中国語を勉強していたことにすれば問題がないはずなのに
 パリ行きのエピソードをあえて残した監督の意図があるとすれば
 当初の脚本通りにジョーがパリ(もしくは上海)に素直に行くよりも
 もう一捻り加えることができると考えたことではないか。
 そもそも目的地がパリである必然性はないので、
 途中で気が変わって目的地を上海にしたとしても不思議はなく、
 将来自分の気が変わることを知らないジョーが
 当然ながらこの時点では未来に対して無自覚であることも強調できる。
 ヤングとオールドがテーブルを挟んで向かい合うシーンでの
 オールドの「フランス語の勉強は順調か?」というセリフは
 ヤングに対する冷やかし(すなわちオールドの自虐)も含まれ、
 本当は腹の中では「頼むから中国語を勉強してくれよ」と思っているという
 観客だけ(+オールドとボス)が知る事実による笑いどころとなった。
 オールドが真意を腹の中で留めたのは
 自分の過去であるヤングに余計な影響を与えないためだと思われる。
 (ほかでさんざん影響を与えているけどw)
 結果的に「今はそのつもりでも先のことはわからないよ」という時間にまつわる
 エッセンスを加えることに成功したのはケガの功名であり、監督グッジョブ。

最も怪演だったのは
シドに扮するピアース・ギャニオンちゃんです。
シドはこの物語の重要な鍵を握る存在なので
詳細はあえて伏せるとして
その顔の「なーんか癪に障るガキ」感が素晴らしいのです。
前半の、逆『ターミネーター』的設定から
後半はこのシドを中心に『オーメン』を彷彿とさせる恐怖と
『AKIRA』もしくは『童夢』さながらのサイキックな展開で
盛りだくさんです。
シドは母親(エミリー・ブラント)と九九のゲームをしていて癇癪を起こすのですが
その時、母親は金庫のような場所に逃げ込むのです。
「おまえが逃げるんかい!」と思ったものの、
今になって考えてみると、あ、そういうことか、と。
どういうこと? うん、そういうことか、と。ぬふふ。
余談ですが、もよおしたエミリー・ブラントがヤング・ジョーを呼びつけ、
エッチしたあとにエミリーが煙草を吹かしてるのは
ちょっと笑えました。
「おまえが吸うんかい!」

しかし、ここで大きな疑問が……
もちろん「タイムマシンなんてありえねーよ」などと
子供じみたことを言うつもりは毛頭ありません。
当然「タイムマシン」を含めたこの作品の世界観は理解したうえで
どうしても拭いきれない疑問……それは……

殺したいやつを、わざわざ30年前に送り返す必要なくね?

元も子もないことを言うなとお叱りを受けそうですが
ラストシーンでこの不毛なループを断ち切るため、
ヤング・ジョーは自らの命を絶ち、
その瞬間にオールド・ジョーは消滅します。
ヤング・ジョーのルーパー仲間であるセスの場合は
ヤング・セスが体を切り刻まれることで
オールド・セスの体も指、腕、脚と無くなっていきます。
そもそもオールド・ジョーは幼少期の「レインメーカー」を殺せば
2077年の「レインメーカー」を消せるから
タイムトリップして来ているのです。だとしたら、
30年前の殺したい相手を始末すれば済むんじゃないの?
間違ってますか? あはは。えへへ。

監督自身がインタビューで答えているとおり、
「タイムトラベル」を深く考えすぎると
最終的には破綻してしまうのでしょう。
オールド・ジョーは
ヤング・ジョーの経験によって存在しているのですから
ヤング・ジョーの前にオールド・ジョーが現れることも
オールド・ジョーは経験済みなワケで
オールド・ジョーによるヤング・ジョーに対する影響も
オールド・ジョーは避けられないと考えられるし、
ヤング・ジョーがヤングなときに死んだのならそもそもオールド・ジョーはオールドになるどころか存在できないオールド・ジョーはヤング・ジョーにしてみればオールド・ジョーにおけるヤング・ジョーたるオールド・ジョー的なヤング・ジョーったらいやんもういけず。

とにかく! 作品世界に翻弄されるのを楽しむ、そんな作品です。
「タイムトラベル」という設定自体が
「前提によってもたらされる答えが前提を否定してしまう」という
パラドックスそのものなのでしょうね。

なにが正しいかは、クレタ島人に聞いてみないとわかりませんな。





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