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気狂いピエロの決闘

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(原題:Balada triste de trompeta 2010年/スペイン・フランス合作 107分)
監督・脚本/アレックス・デ・ラ・イグレシア 撮影/キコ・デ・ラ・リカ 音楽/ロケ・バニョス
出演/カルロス・アレセス、アントニオ・デ・ラ・トレ、カロリーナ・バング、マヌエル・タリャフェ、アレハンドロ・テヘリア、エンリケ・ビレン

概要とあらすじ
「みんなのしあわせ」「マカロニ・ウエスタン 800発の銃弾」などでカルト的人気を誇るスペインのアレックス・デ・ラ・イグレシア監督が、ピエロ同士の狂気に満ちた戦いを描いた異色作。2010年・第67回ベネチア国際映画祭で審査員長のクエンティン・タランティーノも賞賛し、監督賞と脚本賞を受賞した。「泣き虫ピエロ」としてサーカス団で働き始めたハビエルだったが、人気道化師で「怒りのピエロ」役をしているセルジオが、妻のナタリアを殴っている現場を目撃。ナタリアを助けたハビエルは、セルジオと争うようになり、やがて2人の戦いは常軌を逸した市街戦へと発展していく。カンヌ、ベルリン、ベネチアの3大映画祭受賞作を中心に日本未公開だった作品を一挙上映する「三大映画祭週間2012」で公開。 (映画.comより)



すわ、刑事コジャック!

あきらかにゴダールの『気狂いピエロ』をもじったであろう
『気狂いピエロの決闘』という邦題は
むしろゴダールのそれよりも
作品の内容をストレートに表しています。

画面に配給会社などのロゴが出るタイミングに合わせて
子どもの笑い声が起きるオープニングからして
いろいろとコケにしている作品であることがわかって面白いのですが
その笑い声がそのままピエロの演技に笑う観客席の子どもたちへと変わり
そこから怒濤の戦闘シーンへと移行するくだりが素晴らしいのです。
さまざまな記録映像や映画のカット(食人族!)がコラージュされた
オープニング
は、BGMとともに
カッコイイ! としか言いようがないのです。

スペイン内戦時代を舞台に始まる『気狂いピエロの決闘』は
祖父と父を引き継いで、泣き虫ピエロとなる
ハビエル(カルロス・アレセス)を中心として展開していきますが
そもそもサーカスやピエロには
華やかさと笑いの裏に隠されたうら悲しさがつきもので
狂気に満ちた存在だと言えるのではないでしょうか。
とくに、バカにされ笑われることを生業としているピエロには
常にどこか暗さが漂うのです。

ピエロとしての腕は確かだが
傲慢なセルヒオ(アントニオ・デ・ラ・トーレ)
その恋人の曲芸師ナタリア(カロリーナ・バング)の関係は
男女の愛憎の不可思議さの典型ですが
そんなビッチ・ナタリアに
ハビエルが一目惚れしてしまったから話が面倒なことになります。
どうみても冴えない風貌のハビエルのような男が
ナタリアみたいな百戦錬磨のビッチに
中途半端になつかれたら始末に負えません。
セルヒオとナタリアが交尾中のふざけたシルエットのあと、
ついにハビエルはトランペットでセルヒオをボコボコに殴るのです。

ブタの出産くらいしかやったことがない獣医の手によって
なんとか一命を取り留めたセルヒオの顔は
醜い化け物のようになってしまいますが
後半のハビエルが苛性ソーダとアイロンを使って
自分の顔をピエロに整形してしまうことと相まって
そもそものピエロのメイクがそうであるように
顔が変わることによって本性を現したと言えるのかも知れません。

逃亡したハビエルが、森の中で野性を身につけたからなのか
完全に狂ったハビエルは急に凶暴化していきます。
(引退した?)元独裁者フランコの手にハビエルが噛み付くシーン
スペイン国民なら快哉の雄叫びをあげたかも知れませんが
個人的に、このあたりから作品の雲行きが怪しくなってきました。

凶暴かつ、なぜか怪力まで手に入れたハビエルは
街中で銃をぶっぱなし、あとに待つのは破滅しかない状況ですが
クライマックスの巨大な十字架に到るまでが
おそらくは意図的に、いかにもありがちな劇判で煽る
アクション映画的なエンターテイメントに完全にシフトしたのは
正直、ちょっとがっかりしました。
巨大十字架の上で繰り広げられる、
まさにがけっぷちのサスペンス=文字通り宙づり状態は
誰もがどこかで見たことのある典型的なクライマックスで
このような映画的手法による快楽が
意図して組み込まれているのは理解できるものの、
なんとか映画表現の全てを盛り込んでやろうと考えているように感じられ、
映画が終盤に向かうに従って、軽さが際だってくる演出に
個人的にはカタルシスを削がれたのです。
コメディー、ホラー、サスペンス、ドラマ、アクションと
映画のジャンル表現を網羅しようとするかのごとき演出
それこそ、まさに「サーカス」そのものなのですが
前半に感じた期待感を裏切られたように感じるのです。
もっともそれは、観客がどのように映画を観始めるかという態度に
拘わってくるのかもしれませんが
自分の期待したものと違ったからケチをつけるわけではなく
裏切られるなら、気持ちよく裏切られたいのです。
だんだん萎えてくるのは、ちょっと、ねぇ。

ラストのハビエルとセルヒオの泣き笑いのような表情も
ふたりのどちらにも感情移入しそこなった僕には
いまいちグッとくるシーンにはなりませんでした。

とはいえ、映画的要素が盛りだくさんなこの作品は
楽しむべき所も多いのです。
茶化しているように見えつつも、フランコ政権下のスペインが
理不尽な状況だったことが背景にあるのは十分に感じられるので
ところどころに挿入されるニュース映像や首相暗殺テロなどの事実を
知ったうえで見直せば、新たな発見があって
アレックス・デ・ラ・イグレシア監督のおふざけの真意を
もっと深く理解できるのかも知れません。
ま、知らずに観ても楽しいけどね。





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