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シリアル・ママ

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(原題:Serial Mam 1994年/アメリカ 94分)
監督・脚本/ジョン・ウォーターズ 撮影/ロバート・スティーブンス 美術/ヴィンセント・ペラーニオ 音楽/ベイジル・ポールドゥリス 編集/ジャニス・ハンプトン、エリカ・ハギンズ 衣裳/ヴァン・スミス
出演/キャスリーン・ターナー、サム・ウォーターストン、リッキー・レイク、マシュー・リラード、ジャスティン・ホーリン、トレイシー・ローズ、パトリシア・ハースト、スザンヌ・サマーズ、ミンク・ストール

概要とあらすじ
社会に溢れる理不尽な輩に怒りの鉄槌を降り下ろし、殺人を繰り返す良き家庭の平凡な主婦の姿を通して、現代人の心の中に巣食うフラストレーションと怒りと殺人衝動を鋭くえぐる悪趣味なブラックユーモアに満ちたホーム・ドラマ。ドラマは実録形式で描かれ、アメリカにおける犯罪とメディアの関係、裁判や死刑問題に対する風刺も痛烈。監督・脚本は「ピンク・フラミンゴ」「クライ・ベイビー」などで知られるカルト映画作家ジョン・ウォーターズ。(映画.comより抜粋)



絶対に逆らっちゃダメ!

僕がまだ童貞をこじらせていた頃、
『ピンク・フラミンゴ』『ポリエステル』『ヘアスプレー』といった
ディヴァイン主演のジョン・ウォーターズ監督作を
名画座を廻ってはワクワクしながら観ておりました。
そんな映画をワクワクしながら観ているから
童貞をこじらせることになるんだと
若い自分を戒めてやりたい気分です。

久しぶりに観たジョン・ウォーターズ監督作品『シリアル・ママ』
先に挙げたディヴァイン作品と比べると
うんこがおしっこになったくらい、上品です。

かつてのアメリカのTVドラマで観るような
いかにもセット感あふれる室内と薄っぺらい照明による
当時の模範的な中流家庭からして皮肉たっぷりに感じるのですが
「シリアル・ママ」=ビヴァリーに扮するキャスリーン・ターナー
全編を通して、機嫌が良さそうな表情と立ち振る舞いが
この作品の軸をなしているのは明らかです。

ビヴァリーが近所のヒンクル夫人(ミンク・ストール)
イタズラ電話をかけるシーンから
キャスリーン・ターナーのノリノリな態度が窺えるのですが
キャスリーン・ターナーという名女優が
口汚い言葉を連発すること自体が
ショッキングだったのかもしれませんね。
イタズラ電話から始まって、
ビヴァリーはまったく悪びれる様子もなく、それどころか上機嫌で
最初っからイケイケで凶行を繰り返すのですが
逆に、なんでその歳になるまで普通に生きてこられたのかと
つっこむのは野暮というもの。

ビヴァリーの「常識的な正義感」は至極真っ当ではあるものの
だからといって、相手を殺してもいいわけないのは、言わずもがな。
とはいえ、ゴミの出し方やレジの順番待ちだとかで
非常識な行動を取る人間に遭遇すると
「死ねばいいのに」と思ってしまうことはあるはず。
少なくとも僕は妄想で何人殺したかわかりません。
そんな、誰もが一度は考えた事があるはずの「死ねばいいのに」を
あっけらかんと実行に移してくれるのがビヴァリーなのです。
ま、息子のチップ(マシュー・リラード)の担任教師を
車でひき殺すのに、なんの大義もありませんが。ははは。
ちなみに、オープニングで「これは実話です」みたいに
言っているのはフェイクです。

ビヴァリーが、犯行に及んでもまったく慌てることなく
堂々としていて、むしろチャーミングに見えるあたり、
完全に狂っているのですが
息子のアルバイト先のレンタルビデオ屋に
テープを巻き戻さないで返しに来たばあさんをストーキングして
ラム肉のかたまりで殴り殺すところを目撃した息子の友だちを
包丁を握って追いかけるシーンは壮絶です。
素晴らしいですねぇ。
水玉のワンピースと、たすき掛けしたショルダーバッグが
効いています。

そんなビヴァリーのご機嫌な殺戮を笑いながら観ていると、
ついに逮捕されたビヴァリーの裁判のシーンになってからは
そう笑ってもいられなくなります。
自分で自分の弁護をやると言い出したビヴァリーが
ただの陽気なキチガイではなく、
屁理屈に長けた頭脳派でもあることがわかるのです。
物的証拠は山ほどあるはずなのに
証言による状況証拠を中心に裁判が行なわれるのはご愛敬ですが
ビヴァリーの犯行を証言する証人に対して
きりかえすビヴァリーの反論が
「質問に質問で返す」ことに一貫しているのは見事です。
「この人はイタズラ電話をかけてきました」
「そのとき、あなたお酒を飲んでたでしょ?」

てな具合で、イタズラ電話をかけた事実そのものの否定には
まったくなっていないのですが
「それはさておき、あなたはどうなんですか?」と返すのです。
「ビヴァリーの出したゴミには、猟奇的な内容の本があった」
「あなたの出したゴミには、ポルノ雑誌があったわ」

というのも、同様です。
本当の裁判なら、裁判長から注意されるべき質問ですが
このような、口がたつ人間の屁理屈によるディベート術は
日常でもよく見られます。

ビヴァリーの犯行は、
彼女の信じる「正義」によって行なわれているのですが
行動の根拠が「正義」であることがやっかいです。
東京・大久保でヘイトスピーチを繰り返す連中や
放射能に対する恐怖のあまり、当事者の人々を傷つけていることに
気づきもしない「放射脳」たちは
「シリアル・ママ」と同じ穴の狢だと、僕は考えます。
「正義」を訴えるということは、結構危なっかしいものなのです。

DVDにあったドキュメンタリーの中で、ジョン・ウォーターズ監督は
これはアメリカ特有の現象だと言っていますが
ビヴァリーの「狂った正義」に加えて、
殺人者をヒーローに祭り上げる大衆の野次馬根性も描いています。
それほどまでに、日常とは退屈なもので
メディアの中で語られることだけが活き活きと映るんでしょうかねぇ。

こんなふうに書いてくると
まるで風刺が効いた社会派映画みたいですが
(それも間違ってるわけじゃないけれども)
ジョン・ウォーターズ特有の下品なジョークも満載です。

フリーマーケットに出される「ピーウィー人形」
『ピーウィーの大冒険』で一躍大人気になったポール・ルーベンス
ポルノ映画館でオナニーしているところを逮捕されたことが
ネタにされているし、
息子のチップが部屋で友人たちと観ていたビデオは
ジョン・ウォーターズ自身が若いころにドライブインシアターで観ていた
『血の祝祭日』というゴア映画です。

爆笑したのは、ライブハウスのシーン。
「ラクダの唇」という名前の女性ロックバンド
(演奏しているのはL7という実在するバンドだそうで)
履いているぴっちりしたパンツの股間が
まさに「ラクダの唇」! わはは!
別の言い方だと「キャメル・トゥー(ラクダのつま先)」そのまんま!
わかる人だけわかっていただければ……。

娘のミスティ(リッキー・レイク)が想いを寄せるカールが
フリーマーケットで殺される前に連れ添っていた女性は、
なんとポルノクイーンのトレイシー・ローズ!
(僕もお世話になったことがあるようなないような……)
裁判中に登場する、ビヴァリーも予想外だった証人に対して
ビヴァリーがデスクの下で股をぱかぱか広げて見せるのは
『氷の微笑(1992年)』 のパロディじゃないでしょうか?

そして、無罪を勝ち取った直後のビヴァリーに
「秋に白い靴を履くのは非常識」という理由で殴り殺される陪審員は
新聞王ウィリアム・ランドルフ・ハーストの孫娘・パトリシア・ハーストで、
左翼過激派シンバイオニーズ解放軍(SLA)に誘拐されて
人質になっているうちに、なにがなんだか感化されて
一緒に銀行強盗まで働くほどテロリストの同志になっちゃったお嬢さん。
彼女を描いたドキュメンタリー映画があったと思いますが
そんな彼女が
「いまのファッションは、昔と違うの!」っていいながら
殴り殺されるんですから。
そりゃ、おもろいわ。





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