" />

竜馬暗殺

ryoumaansatsu.jpg



(1974年/日本 118分)
監督/黒木和雄 脚本/清水邦夫、田辺泰志 撮影/田村正毅 美術/山下宏 音楽/松村禎三 編集/浅井弘 スチル/浅井慎平 題字/野坂昭如
出演/原田芳雄、石橋蓮司、中川梨絵、松田優作、桃井かおり、粟津號、野呂圭介、田村亮、外波山文明

概要とあらすじ
幕末という動乱期を背景に、暗殺された坂本竜馬の死をめぐって、その真実、その背後にある無名戦士たちの生と死、青春の栄光と孤独、繁栄と悲惨を描く。脚本は清水邦夫と「空、みたか?」の田村泰志、監督は「日本の悪霊」の黒木和雄、撮影は「日本妖怪伝 サトリ」の田村正毅がそれぞれ担当。慶応三年十一月十三日。氷雨の下、京の街並を走り抜けていく男がいた。海援隊の常宿“酢屋”から“近江屋”の土蔵へ身を移す、坂本竜馬である。新しい時代を求めて、抗争と内紛の絶えなかったこの頃、身の危険を感じての竜馬の逃亡だったが、佐幕派の密偵がこれを見逃すはずがなかった……(映画.comより抜粋)



福山雅治じゃないほうの。

子どもの頃から、
数学や英語のように公式や文法を「応用」させる学科は好きなのに
とにかく「暗記」がつまらなくて、苦手だった僕は
いまだに歴史や地理に対する自らの無知によって
ときおり苦しんでおる次第です。
さすがに坂本竜馬の名前くらいは知っているのですが
「海援隊」と聞けば金八先生の馬づらが真っ先に眼に浮かんでしまい、
坂本竜馬にまつわる人物たちの多さにくらくらするだけなのです。

そんなわけで、この『竜馬暗殺』
どの程度史実に忠実なのか、はたまた創作なのか十分にはわかりません。
坂本竜馬や幕末について、少しばかりは調べてみたものの
所詮は付け焼き刃に過ぎず、
そのあたりに詳しい幕末ファンも大勢いらっしゃることですから
史実と照らし合わせた検証はほかに譲ることとします。

16ミリモノクロで撮影されたスタンダードサイズの映像
白と黒のコントラストが高く、ギラギラしてザラザラしています。
坂本龍馬が暗殺されるまでの三日間を描いた本作は
「慶応3年(1867年)11月13日」というように
やがて訪れる修羅場までをカウントダウンしていきます。
三日間なので、三部構成と言えなくもないと思いますが
日付とは別に挿入される、「竜馬、○○○…ナリ」というスーパーも
アクセントになっていて、単に状況を説明するためのものではなく
ユーモラスな味わいを加わえています。

冒頭から登場する桃井かおりの初々しさに、はっとさせられますが
その後、雨の中を走る坂本竜馬(原田芳雄)の白いケツのマヌケさが
作品のテーマのひとつを表しているようにも思えます。

刺客から逃れるために、近江屋の土蔵に身を隠している竜馬は
酒飲みで女ったらし。
どうみても、日本を背負って立つ男のようには見えませんが
絵になる男、原田芳雄の存在感はハンパなく
坂本竜馬のカリスマ性を表現するにはもってこいです。

竜馬の人間的な魅力を引き立てているのが
竜馬の盟友・中岡慎太郎に扮する石橋蓮司です。
これがまた、若くてかっこいいのですが
最近では『アウトレイジ』でも見せていたような
ふざけた演技が随所に見られ、つくづくすごい役者なんだなーと
感じさせてくれます。

竜馬とねんごろになる、気が狂ったようなファム・ファタールの
幡(中川梨絵)の弟、右太に扮する松田優作がまたしても若々しく、
自分の演技力を見せつけてやろうという野心がプンプンします。
原田芳雄と石橋蓮司、そのふたりに食らいつこうとする松田優作という
三人の俳優たちの演技バトルも見どころのひとつです。

竜馬(原田芳雄)と慎太郎(石橋蓮司)は
気心が知れ合った仲でありながら、わずかな思想の違いから
お互いを隙あらば殺してしまおうと考えています。
ことあるごとにふたりは揉めているのですが
いざ刀を向け合って真剣勝負をしているときでも
「荷物が届きました〜」と言われると
「あ、そう」と勝負を止め、
普段通りに肩を並べて話しているのです。
または、慎太郎が竜馬を殺そうと刀に手をやると
「まあ、怒るなよ。いまは飲もうぜ」と竜馬に言われ
結局、宴会になったりします。
竜馬と慎太郎の不思議な関係には
男同士の友情を超えたホモセクシャルな関係を感じます。

右太(松田優作)は、反射的に人を斬ってしまうほど未成熟で
まさに思春期の鬱屈を表しているように思えます。
姉である幡(中川梨絵)との近親相姦的な関係も窺えます。
そんな右太は、竜馬を殺すべく近づいてきた刺客なのですが
行動を共にするうちに、竜馬の人間的な魅力に惹かれていくのです。

竜馬の命を狙う慎太郎も
身内である「陸援隊」の隊士たちから命を狙われ、
竜馬、慎太郎、右太の三人は
「ええじゃないか」の騒乱に紛れ込み、
顔を白く塗り、紅を差し、女物の着物を着て逃げ惑います。
この一連のシーンには、命を狙われているという緊張感はなく
それどころか非常にコミカルで
どこかジム・ジャームッシュの『ダウン・バイ・ロー』のような
ノリを思い起こさせます。
肥だめにはまって、慌てふためく白塗りの石橋蓮司は
確実に悪のりでふざけきっていて、最高です。
調達できなかったライフルの代わりに届いた写真機で
記念撮影をしようとする(結局、失敗に終わる)三人+幡が
正装して並ぶ姿は滑稽でもあり、愛おしくも感じます。

僕がいくら歴史に疎いとはいえ、
この作品が史実を再現することに重きを置いていないことは
十分に察しがつきました。
この作品は、国家または社会を変えることができるという
革命精神に魅了される反面、
徒党を組んでは仲間割れを繰り返し、
目の前の欲望に抗えない若者の青春群像劇なのです。
公開が1974年という時代から考えれば
この作品が連合赤軍の実体を揶揄しているように思えてなりません。
慎太郎はとにかく幕府を倒すことを目的としていますが
竜馬は「権力を倒した後には、必ず別の誰かが権力を持ちたがるんだ」
「俺たちは身内同士で揉めて、なにをやってるんだ」
と言うのです。
このあたり、竜馬の意見は客観的で理性的なように見えますが
竜馬自身もどうしていいかわからず、悩んでいるのです。
まさに時代が抱えた苦悩を表現していると
言えるのではないでしょうか。

若者の爆発的な行動力は
新しい何かを生み出す力となりますが
若者は若者であるがゆえに
爆発的な行動力を自分でコントロールできないというのは
いつの時代も同じなんでしょうかねぇ。

とにかく、役者の演技と映像の凄味を
とくと味わっていただきたい作品です。
松田優作さんも原田芳雄さんもなき今、
石橋蓮司さんには長生きして欲しいな……
(↓この予告編、かっこいいよ!)





にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ 
↑お気に召したらクリックしていただけますと、もんどりうって喜びます。
関連記事
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

«  | ホーム |  »

プロフィール

のほうず

のほうず
映画が好きで観るのはいいが、
かたっぱしから忘れていくので
オツムのリハビリ的ブログ。
******************
当ブログの文章・画像およびイラストの無断転載を禁じます。引用される場合は、出典の表記と当ブログへのリンクを設定してください。

FC2ブログランキング

FC2Blog Ranking

お気に召したら
クリックお願いします。
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

スポンサードリンク

↓過去の記事はこちらから!↓

検索フォーム

QRコード

QR

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

カウンタ