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ABC・オブ・デス

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(原題:The ABCs of Death 2012年/アメリカ・ニュージーランド合作 129分)
企画・制作/アント・ティンプソン、ティム・リーグ 監督/オムニバス 出演/いろんな方々

概要とあらすじ
世界15カ国から気鋭のホラー監督26人が参加したオムニバス。それぞれが与えられたアルファベット1文字から、自由な発想・手法で「死」をテーマに5分間の短編ホラーを製作した。日本からも「片腕マシンガール」の井口昇、「東京残酷警察」の西村喜廣、「地獄甲子園」の山口雄大が参加。そのほか「フロンティア」のザビエ・ジャン、「ホーボー・ウィズ・ショットガン」のジェイソン・アイズナー、「心霊写真」のバンジョン・ピサヤタナクーンら各国のホラー作家が顔をそろえた。(映画.comより)



ごきげんに狂った大人の知恵比べ

どういうわけか、最近は3時間を超える長尺の映画が多く
それだけの上映時間が必然の面白い作品もあれば
ただ大作ぶるために時間稼ぎをしたような作品があるのも事実。
そんななか、5分間という制限を設けて
アイデア一発で監督たちがしのぎを削っているのが
『ABC・オブ・デス』です。デスです。

ありがたいことに、Youtubeでは
10分以内から30分くらいのものまで
さまざまな短編映画が気軽に観られたりして
ときおり観ては楽しんでいるのですが
上映時間が短いから安上がりで簡単だろうと思うのは早計。
たしかに撮影期間は短くて済むのかもしれませんが
5分だろうが2時間だろうが、セットはセット。演技は演技。
むしろ、時間を使って呑気にシチュエーションを説明している暇などなく
それでいて観客に内容を理解してもらわなければならない短編映画は
制作するのが難しく、逆に言うと作り手の腕の見せ所となるのです。
はたまた観客の想像力も試されます。

物語を楽しみながらアルファベットの習得ができる
「Ant and Bee(1950/アンジェラ・バンナ)」という絵本から
着想を得たというアント・ティンプソンティム・リーグの企画は
5分以内で死にまつわる話ならなんでもあり。
死を描いていればいいので、すべてホラーというわけでもありません。
世界中から選ばれた監督たちの狂宴です。
それでは、ひとつひとつ口を挟んでいくのデス!

[ A ] Apocalypse(アポカリプス)/監督:ナチョ・ビガロンド
療養中らしき初老の男性がベッドでパンを食べていると
男性に襲いかかる包丁を手にした女性。
男性の左手がビローン! 喉グッサー! 
一回戻って、煮えたぎった油をバッサー!
でも死なない男性。
女性はこの男性を殺すべく、随分前から食事に毒を盛っていたようですが
時間切れなので凶行に及んだとのこと。
部屋の外からは暴動でも起きているような喧噪が聞こえてきます。
男性はゾンビになりかけで、完全にゾンビになってしまう前に
奥さんの女性が殺してしまおうとしたんでしょうな。
切ないのう。

[ B ] Bigfoot(ビッグフット)/監督:アドリアン・ガルシア・ボグリアーノ
雪の降らないメキシコで
男と女が、イチャイチャエロエロしたいんだけど
家に預かってる少女が寝ないからできないじゃんってんで
(20:00はちょっと早いと思うが)
早く寝ないと雪男がくるぞ〜って言ってると
本当に来ちゃったよというお話。
殺され方はショック度低めです。

[ C ] Cycle(サイクル)/監督:エルネスト・ディアス・エスピノーザ
庭に血があるからなんだろうと思っていると
草むらが謎のループトンネルになっていて
自分で自分を殺したときの血でしたよというお話。
自分を殺さないといけない理由が不明で
この尺でやるには説明不足すぎて、頭でっかちな印象でした。

[ D ] Dogfight(ドッグファイト)/監督:マルセル・サーミエント
『ファイト・クラブ』的な賭け闘技場。でも戦う相手は犬です。
牙をむき出しにして襲いかかってくる犬は
男の腕、太もも、そして喉に噛み付きます。
ついに犬に殺されてしまったと思った瞬間に……
犬の演技(?)とスローモーションを多用した映像が美しい。
一切セリフ無しですが、この短い尺でもしっかり伏線が敷かれ
物語に引き込まれるのは見事としかいいようがありません。
犬との格闘の中にもちゃんと攻防の起伏があり、
本当に素晴らしい作品で、僕のイチ押しです。

[ E ] Exterminate(駆除)/監督:アンジェラ・ベティス
監督は女優さんなんですね。
部屋にでた蜘蛛に刺された男が
オナニーしたりしながら暮らしているうちに
ついに蜘蛛を始末することに成功するものの身体に異変が生じ……
卵を産み付けられたってことでよろしかったでしょうか?
(↑ファミレス風)
日にちをまたぐのは短編向きではないんじゃないのという印象です。

[ F ] Fart(おなら)/監督:井口 昇
出ました、日本が誇る変態監督。
怒った神様がおならをしてみんなが死んでいくなかで
どうせ死ぬなら憧れの女教師のおならを嗅ぎながら死のうとする
女子高生(中学生?)。どういうこと? わはは!
願いが叶った少女はなぜか女教師の肛門に吸い込まれて……
もちろん福島第一原発の放射能漏れをおならで揶揄しているこの作品は
全作品のなかでも突出したくだらなさです。
(もちろん、いい意味で)

[ G ] Gravity(重力)/監督:アンドリュー・トラウキ
POVです。サーフィンをしようと海に入ったら
波に飲まれちゃったってことでよろしかったでしょうか?
(↑ファミレス風。2回目)
重力? ピンと来ません。

[ H ] Hydro-Electric(水電拡散)/監督:トーマス・マリング
なぜか犬仕様のパイロットが
なぜか犬仕様のストリッパーに見とれていると
ストリッパーは実はナチで……説得力なし。

どうでもいいことですが、
この作品の上映がレイトショーということもあって
いくらかのアルコールを摂取していた僕はこのあたりで鈍い尿意を感じ始め
「H、I、J……Z。まだ半分終わってないよ……」と
アルファベットを指折り数えるようになったのですが
この映画の場合、途中でトイレに行くと
そのときのアルファベットの作品をまるまる見逃すことになりかねないので
天に祈るような心持ちで尿意に立ち向かっていたのです。
がんばれ、オレ。ここが勝負だ。

[ I ] Ingrown(内向)/監督:ホルヘ・ミッチェル・グラウ
バスタブのなかで手脚を縛られた女と注射器を持つ男。
関係性がよくわかりませんでした。
なにしろ、尿意が……すまぬ。

[ J ] Jidai-geki(時代劇)/監督:山口雄大
二人目の日本代表です。
すっかりおとうさんに似てきた仁科貴が切腹の介錯役ですが
切腹する男の表情がどんどん変化して
切腹における「死の美学」をコケにしていると感じました。

[ K ] Klutz(不器用)/監督:アンダース・モーガンタラー
絵がかわいいアニメです。
ひねりだしたうんこがどうしても流れず、
結局おしりに里帰りして死ぬのですね。わかります。
わかるかっ!

[ L ] Libido(性欲)/監督:ティモ・ティヤハヤント
「D」の「Dogfight」と同じく、地下の賭場もの。
ただ、椅子に縛られた状態で競うのは射精までのスピードです。
これなら僕でも勝てそうだと思ったのですが、わはは、
13回たて続けはいくらなんでも降参します。

[ M ] Miscarriage(流産)/監督:タイ・ウェスト
トイレもの、多いな〜と思っていたら
全作品のなかでもっともあっさりと終わります。
尿意と戦っている観客にとっては非常にありがたい作品です。

[ N ] Nuptials(結婚)/監督:バンジョン・ピサヤタナクーン
キッチンで食事の支度をするふくよかな女性に
オウムに覚えさせた口説き文句を言わせて
気の利いたプロポーズをしようとする男ですが
オウムは男が浮気の最中の言葉も覚えていて女は激怒。
だからって殺さなくても。

[ O ] Orgasm(オーガズム)/監督:ブルーノ・フォルザーニ&エレーヌ・カテト
幻想的な映像に彩られた作品ですが
MV的なイメージの羅列が、短編映画としては
やっぱりちゃらいと感じてしまいます。

[ P ] Pressure(重圧)/監督:サイモン・ライリー
家族のために身を削る売春婦の重厚な物語。
家族のためとはいえ、身体を売るよりも
もっと非道いことをして一線を越えてしまう売春婦。
このプロットで長編でもいけそうです。

[ Q ] Quack(アヒル)/監督:アダム・ウィンガード
これだけ多くの作品があったら、ひとつくらいは
こういうスカしたのがあるだろうね、というメタ・フィクション。
『ABC・オブ・デス』に選ばれたはいいが、
「Q」だってよ、どうする? っていうわけですが
真剣勝負を挑んでいるほかの監督たちに対して
このやり方はやっぱりずるいと思います。
オチは嫌いじゃありませんけど。

[ R ] Remoyed(切除)/監督:スルジャン・スパソイェヴィッチ
患者のただれた皮膚を剥がすとフォルムが。
過去の映画の表面だけ搾取している現代の映画界に対する揶揄でしょうか。

[ S ] Speed(スピード)/監督:ジェイク・ウェスト
クライム・アクションでしょう。
疾走する車の「スピード」とドラッグの「スピード」が
かかってます。

[ T ] Toilet(トイレ)/監督:リー・ハードキャッスル
『ABC・オブ・デス』の作品群のなかで
唯一公募された「T」枠を見事射止めたのがこの作品。
この人のクレイアニメはYoutubeで何度か観たことがありました。
男の子の初めてのトイレを巡る皮肉な物語です。いいね。

[ U ] Unearthed(発掘)/監督:ベン・ウィートリー
悪魔側からのPOVオカルト。
短編ならではの設定です。

[ V ] Vagitus(産声)/監督:カーレ・アンドリュース
近未来SFです。アクションが凝っていて
どんでん返しまである秀作です。

[ W ]WTF!(カオス)/監督:ジョン・シュネップ
「Q」の「Quack」と同じくメタ・フィクションかと思いきや
「W」にまつわるボツったネタが総掛かりで襲ってきて
ぐっちゃんぐっちゃんになります。

[ X ]XXL(ダブルエックスエル)/監督:ザヴィエ・ジャン
太っていることをバカにされていた女性が
自分の身体を切り刻んで痩せようとします。んなアホな。
女性がそこまで肥満に悩んでいるように見えないのが難点。
もう、ひとひねり欲しい。

[ Y ]Youngbuck(ティーンエイジャー)/監督:ジェイソン・アイズナー
少年好きな変態用務員のおっさんが
少年に報復されるというお話。う、うん。

[ Z ]Zetsumetsu(絶滅)/監督:西村喜廣
大トリを飾るのは3人目の日本代表。
原発を取りまく日本の状況を皮肉ったエログロナンセンス。
濃厚な演出は、作品群の中でもっとも怒りに溢れています。
日本人が喰ってるのはアメリカのザーメンなのだ!

……というわけで、
なんとか尿意を乗り越えて最後まで見通すことができました。
ふうぅ。

「5分以内で死にまつわる物語」というほかに
赤のクローズアップで入って終わるというのもルールのようでしたが
僕が気になったのは、
作品が終わった後にその作品のタイトルが出るという構成です。
タイトルを先に知ることによって
ネタバレになることを懸念したのかもしれませんが
次の作品に移るときに心構えができず、
また前の作品の余韻に浸ることもできませんでした。
また、血の上に浮かんだブロック状のタイトル
ゆらゆら揺れているので単純に読みづらく
作品とのメリハリを損ねていると感じました。
シンプルに、黒バック(もしくは赤バック)に白抜き文字で
アルファベットとタイトルが先に出るなどのほうが
いいと思うんですけど、どうでしょうか。

この企画は大好評らしく、すでに続編が決定しているそうです。
そして、日本からは園子温監督が参戦するとのこと。
楽しみですな。





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