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かぞくのくに

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(2012年/日本 100分)
監督・原案・脚本/ヤン・ヨンヒ 撮影/戸田義久 編集/菊井貴繁 音楽/岩代太郎
出演/安藤サクラ、井浦新、ヤン・イクチュン、京野ことみ、大森立嗣、村上淳、省吾、諏訪太朗、宮崎美子、津嘉山正種

概要とあらすじ
ドキュメンタリー「愛しきソナ」で知られる在日コリアン2世のヤン・ヨンヒ監督が、自らの体験を題材に、国家の分断によって離れ離れになった家族が傷つきながらもたくましく生きていく姿を描いたドラマ。北朝鮮の「帰国事業」により日本と北朝鮮に別れて暮らしていた兄ソンホと妹リエ。病気療養のためソンホが25年ぶりに日本へ戻り、2人は再会を果たす。異なる環境で育った2人がともに暮らすことで露呈する価値観の違いや、それでも変わらない家族の絆を描き出していく。妹リエに安藤サクラ、兄ソンホに井浦新(ARATA)。(映画.comより)



ARATAは新たに井浦新

現在進行形で近くて遠い国、北朝鮮。
やっかいな隣人といったところですが
語弊を恐れずに言うと、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)
世界的に見ても恐るべきチンピラ国家です。
「恐るべき」というのは、
当然、北朝鮮の国力や影響力に依るものではなく
なにをしでかすかわからないことからくる恐怖なのです。

そんな日本と北朝鮮の
どうにも割り切れない関係を描いた『かぞくのくに』
在日二世のヤン・ヨンヒ監督が自身の体験を元に作った
初めての長編映画で
安藤サクラが演じるリエが監督本人そのものなのです。

「帰国事業」で北朝鮮に渡った
リエ(安藤サクラ)の兄ソンホ(井浦新)
脳に腫瘍が見つかったために、その治療を目的として
25年ぶりに日本への帰国を許されます。
1959年から84年まで行われた「帰国事業」
日本と北朝鮮それぞれの思惑によって計画され、
様々な理由で日本にいた朝鮮人たちのうち9万人以上が
当時「地上の楽園」と謳われた北朝鮮へと旅立ったのです。
北朝鮮のみならず日本国内でも、当時の知識人たちによって
「北朝鮮に行けば衣食住の心配がない」と喧伝されたそうですが
行ったが最後、国交のない日本への再入国は
ほとんど許されていないのが現状です。
北朝鮮が「地上の楽園」ではないことは
現在の僕たちだから分かることなのです。
また、北朝鮮だけがうまい話を並べて
在日朝鮮人を誘惑したのではなく
日本側も朝鮮人を厄介払いする目的があったようです。

ヤン・ヨンヒ監督の実体験では、
3人の兄が「帰国事業」で北朝鮮へと渡ったそうですが
僕がいまひとつ状況を理解できなかったのは
たとえ、「地上の楽園」と言われていようとも
16歳の息子ソンホを全く知らない国へ
ひとりで行かせる父(津嘉山正種)の心境でした。
朝鮮総連の重役を務める父は、政治思想的に
北朝鮮に賛同している立場ではあるのですが
いくらなんでも、それで息子をたったひとりで
知らない国へと仕向けるものかと思ったのですが
ヤン・ヨンヒ監督のインタビューを読むと
当時は北朝鮮に明るい未来があると本当に強く信じられており、
まして、在日朝鮮人として日本にいることは、
ヤン・ヨンヒ監督の父親いわく
「ゴミとしているよりもひどいもの」だったそうです。
(今でも、新大久保あたりでヘイトスピーチを
 繰り返している連中もいますが)
父としては、こんな日本にいるより北朝鮮にいったほうがマシだと
思うだけの理由は十分にあったのです。

このように、ややこしい時代背景があることを考えれば
映画の中で説明に費やされる演出が増えるのは
致し方ないと思えるのですが
やはり監督の主張が全面に出過ぎているように感じるシーンは
多くありました。
国家間の政治的都合による家族のやるせない分断は
監督自身の体験なので、その想いに異を唱えるつもりはありませんが
日本で暮らすことが一方的に正しくて幸せであるかのように
受け取られる場面は少なからずあったのです。
一般的に見て北朝鮮よりは日本のほうがマシでしょうが
朝鮮人が日本で暮らすことにも
それなりの葛藤があるというところまで描くことができれば
さらに深いテーマを表現できたのではないかと思ってしまいます。

ソンホが帰国後、初めて食べる母(宮崎美子)の手料理は
いかにも美味しそうな演出がほしいところですし、
とくに、オカマのチョリ(省吾=ポカスカジャン!)の店で
行なわれた同窓会のシーンでは
次から次へと、北朝鮮や在日朝鮮人であることの
シリアスな話題が出てきて一同しんみりするのですが
それ以前に25年ぶりに再会したソンホに対して
「変わんないね〜」「やっぱ痩せたんじゃない?」などの言葉が
一切なかったのは首をかしげます。
たとえ病気中とはいえ、ソンホがもう少し
はしゃぐような態度を見せてもいいんじゃないかと思うのです。

ソンホを北朝鮮へ送った父は
政治的、思想的には深い考えがなく、感情的になりがちだったという
監督の父親像を反映しているようですが
どこかのシーンで、父が自身の考えを吐露するシーンが
あっても良かったのではと思います。
これもさきほどの主張の偏りと同様に
父を単純な悪者にせず、父なりの言い分があるところを
見せて欲しかったように思います。

これは、ソンホの監視役・ヤン同志
(『息もできない』監督・主演のヤン・イクチュン)
にも
言えることで、家族の心情を理解しながらも役割に徹するヤンが
ソンホの母が用意したスーツと餞別を受け取ったあと
動揺を示す若干の表現があるものの
あいかわらずソンホを急かすような態度を見せるのは
いかがなものかと。
運転手が急ぎたがるのを制止するようなカットがあれば
ヤンの葛藤も並大抵のものではないことを
描くことができたのではないでしょうか。
たとえそれが現実にはあり得ない行動だったとしても
映画の中では許される範囲のフィクションだと思うのです。

基本的に、北朝鮮から一時帰国したソンホにまつわる不条理さ
中心に物語は進んでいくので
ソンホが突然帰国を命令されたときの絶望感が
物足りないものになってしまっているのも残念なところ。
滞在3か月では期間が短いことを理由に
脳の手術を断られた後、ソンホの元カノ・スニ(京野ことみ)
旦那が医者であることから、手術の見通しが立って
これで安心だ、となったあとに強制帰国を知らされたほうが
よかったんじゃないでしょうか。

とはいえ、このような扱いづらいテーマに取り組んだ姿勢は
十分評価に値すると思うし、
監督の実体験に裏付けされている物語には
強い説得力があると感じます。

当初のプロットは、在日ファミリーのコメディータッチの会話劇
「7days」という仮題がつけられていたそうですが
むしろそのコメディータッチの作品のほうを観てみたい気がします。
むろん、脚色はさらに難易度が高くなるでしょうが
理不尽で不条理としかいいようのない状況を
コメディーにして笑ってしまうというのは
表現者のひとつの態度のあり方ではないでしょうか。





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