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宇宙人王(ワン)さんとの遭遇

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(原題:L'arrivo di Wang 2011年/イタリア 82分)
監督/アントニオ・マネッティ、マルコ・マネッティ 脚本/アントニオ・マネッティ 撮影/アレッサンドロ・キオド
出演/フランチェスカ・クティカ、エンニオ・ファンタスティキーニ、ジュリエット・エセイ・ジョセフ、アントネッロ・モッローニ、リ・ヤング

概要とあらすじ
中国語を話す宇宙人がもたらす騒動を描き、無名のキャスト、スタッフながらも2011年・第68回ベネチア国際映画祭でプレミア上映されて大きな話題となった異色作。ある日、イタリアのローマに、一見するとかわいらしい友好的な宇宙人が現れる。しかし、その宇宙人がなぜか中国語を話すことから、不信感を抱いた警察は宇宙人を拘束する。一方、今すぐ中国語の通訳をしてほしいと呼び出された中国語翻訳家のガイアは、2時間で2000ユーロという破格の報酬につられて依頼を承諾。しかし、仕事内容はすべて機密事項だといわれ、迎えに現れた秘密警察の男に目隠しをされて、厳重に警備された地下室に連れて行かれる。ガイアはそこで、自らを「王(ワン)」と名乗る宇宙人と対面する。(映画.comより)



ちなみに、音楽のセンスも悪かったあ。

映画館で予告編を目にした僕は
「中国語を話す宇宙人」という設定に心躍らせ、
これは隆盛を極める中国経済に目配せしつつ、
異文化との折衝と和解を描いた作品なんだなと見当をつけたわけです。
いま思えば、あれは良くできた予告編だったねえとしか
言いようがないのですが。

始まりは順調でした。
中国映画の翻訳をしているガイア(フランチェスカ・クティカ)
中国語を知らない観客にはわからないポイントで
クスッと笑って見せたり、わずかなカットで
ガイアの生活ぶりを説明してみせるオープニングは
とてもよく考えられているし、その後の展開に大きな期待を抱きました。

秘密警察からの依頼によって、目隠しをされたまま
通訳の仕事をするべく、謎の地下室へと連れてこられたガイア。
取り調べを行う一室へ入れられたガイアは
通訳をする相手の姿を見ないように
当初は暗闇の中で取り調べが行なわれるのですが
表情がわからないと言葉のニュアンスを翻訳できないという理由から
部屋の照明をつけてもらうのです。
そして、現れたのが「王(ワン)」と名乗る宇宙人。
わかりやすいイカタコ的造形です。
王を見たガイアは部屋から一度は逃げ出そうとするも
パニックに陥るでもなく、予想外に落ち着いています。
このあたりから、作品のゆくえがきな臭くなってくるのです。

宇宙人である王が中国語を話す理由が
「この星で一番多く使われているから」
というのは
皮肉が効いていてよかったのですが
取り調べを担当する捜査官(?)の
キュルティ(エンニオ・ファンタスティキーニ)の質問が
「目的は何なんだ!」の一点張りだし、
ガイアの王に対する同情と親近感にはまるで根拠がなく
不自然な人道的正義感に駆られる彼女の心境に同調できないのです。
ガイアが、彼女と王にしかわからない中国語で勝手に会話しても
捜査官も誰も注意しないのも随分とご都合主義的ですが
あまりにも極端に演出されたそれぞれの役回りをみていると
ガイアは必ず王に裏切られなければならないという考えに
誰しもが思い当たるはずです。
もしもこのままこの作品が終わることがあれば
それはとんでもないことになると確信するはずです。

人道的正義感の虜となったガイアがついに暴走し、
謎の施設からの脱出、および王の解放のために動くようになってから
オープニングの構成の緻密さはどこへやら。
警備の男はガイアに突き飛ばされてガラスに突っ込んだだけで
這うことしかできないほどの重傷を負うし、
ガイアの抜き足差し足の行動も
なんらサスペンス的昂揚をもたらすことなく
想定された結末へ向けて急ぎ足で進んでいるようにしか見えません。
その間中、律儀に鳴り続ける警報も邪魔でしかなく
まったく緊迫感が伝わってきません。

結局、王を連れて地下から逃げ出したガイアは
宇宙人に攻撃されるローマの街を見て愕然とするのです。
そこで、王がガイアに対して
「お前、バカだな」というのが
オチの決め台詞なのですが、観ているこちらとしては、
「ガイアは必ず王に裏切られなければならない」
と思いながら観ているので、まったくどんでん返しの効果はないのです。
そして、それがこの作品の結末なのです。

要するに、結末を盛り上げるために
それまでの過程があまりにもデフォルメおよび省略されているために
観客が感情移入することができないのです。
「王が言っていることは本当なのか」という点において
信用したり、訝ってみたりをくり返して
もっと登場人物たちの心が揺れなければなりません。
そうやって逡巡しながらも事実を積み上げてこそ
観客はいずれかの登場人物に肩入れするようになるのですが
ガイアも捜査官も一度も自分の考えが揺らぐことはありません。
サスペンスを盛り上げようとする細かいカット割りも邪魔だったし
願わくば、法廷ドラマのように
場所を取調室に限定した密室劇として見せて欲しかったと思います。
もちろん、さらに緻密な脚本が必要となりますが
時折伝言を伝えに来る警備の男のような役もいたわけだし
宇宙人に襲撃されるCGなど使わずとも
ローマの惨状を警備の男が取調室に伝えに来て
人間のふたりが愕然とするなか、
縛られたままの王が高笑いする、とかのほうが
よっぽど気味が悪いと思うのですが、いかがでしょうか。

着想はよかったのに、惜しいことをしたね。
そんな作品でした。





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