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コード・アンノウン

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(原題:CODE INCONNU: RECIT INCOMPLET DE DIVERS VOYAGES 
2000年/フランス/ドイツ/ルーマニア 113分)
監督・脚本/ミヒャエル・ハネケ 製作/マラン・カルミッツ、アラン・サルド 製作総指揮/イヴォン・クレン 撮影/ユルゲン・ユルゲス
出演/ジュリエット・ビノシュ、ティエリー・ヌーヴィック、ヨーゼフ・ビアビヒラー、アレクサンドル・ハミド

概要とあらすじ
『コード・アンノウン』(仏: Code inconnu: Récit incomplet de divers voyages、英: Code Unknown)はフランス・ドイツ・ルーマニアの合作映画で、2000年に制作された。カンヌ国際映画祭人道賞受賞。(Wikipediaより



深刻さを増すコミュニケーション不全

日本では劇場未公開の
ミヒャエル・ハネケ監督『コード・アンノウン』
ハネケ監督作品に通底する主題が
あからさまに表現されているような気がします。
それは「コミュニケーション不全」
そう考えれば本作は比較的わかりやすい(?)
作品となっています。

出だしから、聾学校で
おびえているような演技をする少女。

子供達がジェスチャーゲームのようなことをしてるのですが、
手話によって解答する子供達は
全く正解できません。
目に涙をたたえて首を横に振る少女は
自分のジェスチャーに込めた意図が伝わらなかったことに
おびえているようにもみえます。

その後、「いくつかの旅の未完の物語」という
スーパーが入って始まる物語は、
一見群像劇のようでありますが、
登場人物たちがすれ違いによる関わりを持つものの、
あくまでそれぞれが独立したエピソードで
「コミュニケーション不全」のモチーフを
羅列している
印象です。

まずは、
女優アンヌ(ジュリエット・ビノシュ)の恋人の弟ジャンが
農場を継がせようとする父親に反発して家出してくる
長回しのシーン。
ジャンはアンヌと兄を頼って突然現れたのですが、
オートロックの暗証番号が変更されていたため、
アパートに入れなかったとのこと。
タイトルが示しているのは
ラストシーンでも繰り返される
暗証番号(コード)が不明(アンノウン)な状況のこと。
理解したくても理解できない、または意思疎通を拒絶されていることの
メタファです。

やさぐれたクソガキのジャンは
アンヌに買ってもらったパンの包み紙を
路上に座り込んでいた女性に投げつけます。
それを目撃したマリからきた移民二世のアマドゥ
ジャンを捕らえて、女性に謝るように詰め寄りますが、
駆けつけた警官は
アマドゥのほうを連行してしまうのです。
なんたる理不尽。
このアマドゥには白人女性の恋人がいるのですが、
レストランでのデートのとき、
アマドゥが恋人の腕時計を似合っていないというと
その恋人は腕時計を灰皿に捨ててしまいます。
おそらく彼女は、
黒人(移民)に対する差別意識がないことを実践しようとするあまり、
アマドゥの理不尽な要求にも応えてしまう
のでは
あるまいか。

また、アンヌは
自宅でアイロンがけをしているときに
子供の悲鳴のような声を聞き、
アパートのどこかの部屋で虐待が行なわれているのではないかと
疑います
が、とくに行動には出ることなく、
不審な手紙を受け取った後、
どうやら幼い子供の葬式に参列しています。
亡くなったのは、あの悲鳴を上げていた子供なのか。
はっきりしませんが、嫌な余韻を残します。

アンヌの恋人ジョルジョは報道カメラマンで
紛争中のコソボに取材に行っていたのですが、
友人からジャーナリズムの欺瞞を指摘されます。
もともと優柔不断なジョルジュは
アンヌからも互いの関係を巡って叱責され、
やっと自分に向き合った(ようにみえる)ジョルジュは
電車に乗り込み、
首にぶら下げたカメラで向かいに座った乗客を撮影するという
アラーキーみたいな創作活動を実施。
しかし、それが本当に被写体と真摯に向き合っているといえるのか。

ほかにも、農場へ戻ったジャンの機嫌を取るために
父親がバイクを買い与えても
結局ジャンは再び行方をくらましてしまうし、
ジャンにゴミを投げつけられた女性は
ルーマニアからの不法入国者
彼女が抱え込んでいる事情は誰にも理解されないし、
電車でアンヌにからんでくるチンピラが非道なのは言うに及ばず、
ほとんどの乗客が無視を決め込む状況など、
「コミュニケーション不全」に基づいた
理不尽な暴力が列挙されるのです。

最後は、ハネケ監督にしては珍しく、
学校のドラム隊の演奏がBGMのように鳴り続け、
冒頭と同じ街角に現れた不法移民の女性が
あいかわらず追い立てられ、
アンヌに暗証番号を変更されたジョルジョが
雨の中で戸惑うのでした。

本当に、人間の嫌なところばかりに
フォーカスするなあというハネケ監督ですが、
彼がシニカルな表現で繰り返し訴えているにもかかわらず、
あいかわらず現実の「コミュニケーション不全」は
深刻さを深めているのでした。







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