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陸軍中野学校

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(1966年/日本 95分)
監督/増村保造 脚本/星川清司 企画/関幸輔 撮影/小林節雄 美術/下河原友雄 音楽/山内正 録音/渡辺利一 照明/渡辺長治 編集/中静達治
出演/市川雷蔵、小川真由美、待田京介、E・H・エリック、加東大介、村瀬幸子、早川雄三、仁木多鶴子、三夏伸、仲村隆、井上大吾、森矢雄二、九段吾郎、喜多大八、佐山真次、南堂正樹、河島尚真、ピーター・ウィリアムス

概要とあらすじ
「眠狂四郎多情剣」の星川清司がシナリオを執筆、「刺青(1966)」の増村保造が監督したスパイもの。撮影は「銭のとれる男」の小林節雄。主な出演者は「眠狂四郎多情剣」の市川雷蔵、「座頭市の歌が聞える」の小川真由美、「悪の階段」の加東大介。昭和十三年十月、三好次郎以下十八名の陸軍少尉が九段の靖国神社に集合した。草薙中佐の極秘命令だった。次郎は母と許婚の雪子に行先不明の出張だといって家を出てきたのだ。草薙中佐の目的は次郎らを優秀なスパイに教育することだった…(映画.comより抜粋



冷酷さと滑稽さ

日本に実在したスパイ養成学校を舞台にした
『陸軍中野学校』
戦争映画としてもスパイ映画としても
かなり異色な本作が
傑作であることは間違いないでしょう。
画面の片側に大きな余白をつくる
増村保造監督特有のスタイリッシュな構図も
美しい一本です。

陸軍少尉の三好次郎(市川雷蔵)
母親が営む下宿に住んでいる
雪子(小川真由美)という婚約者がいて
近々結婚する予定。
小川真由美はいかにも「スタア」といった感じで
知的で華があり、はっとする美しさです。
雪子は丸の内で働くOLなのですが、
次郎が新調した軍服は
雪子の貯金によるもの
というのが
冒頭から微妙に引っかかるところではあります。

ある日、帝大卒で柔道二段の次郎は
参謀本部の草薙中佐(加東大介)に呼び出され、
新設するスパイ養成学校=「陸軍中野学校」で
スパイとしての訓練を受けるように言い渡されます。
ほぼほぼ受け入れるほかない命令なのですが、
集められた優秀な学生たちに対する処遇がひどい。
名前を変えられ、戸籍は消され、
一般の社会人として出世する道は完全に断たれたうえ、
いざというときには命を省みずに行動しなければならず、
結果的に与えられる報酬は「名誉」のような
漠然としたものなのです。

草薙中佐という男は
とても不思議なキャラクターで、
いかにも軍人らしい高圧的な人柄ではなく、
参謀本部からも軽視されている諜報機関の拡充に
妙な熱意を燃やしていて、
訓練中に自殺者が出れば
「おれが殺したんだ」と自らの責任を涙ながらに吐露し、
残った学生たちに
辞めたいなら辞めてもいいとまで言います。
挙げ句に諜報活動の目的は「誠」だとし、
世界各国で圧政に苦しむ民衆を正しい道に導くためなのだと
かなりウェットな浪花節で
学生たちの情に訴えかける
のです。
どういうわけか学生たちのほうも
「草薙中佐のためなら」と草薙中佐を慕う始末。
このあたりの心理がとても奇妙かつ恐ろしい。
軍刀を盗んで売った金で愛人に貢ごうとしていた学生に
事実上の粛正を行うシーンでは、
この学校の存続と諜報活動に与えられた使命を
学生たちが自主的に保持しようとする
集団的狂気が描かれるのでした。

訓練シーンでは、
語学や職能の訓練はもちろんのこと、
いわゆるスパイグッズが数々登場し、
手品師や金庫破りが講師として招かれたり、
ダンスや女性とのセックスの仕方まで教育されるさまは
ふざけたコメディのようですが
これまた事実に即しているようで、
このシーンを通じて戦争の馬鹿馬鹿しさを
皮肉っているのではないでしょうか。

突然、行方不明になった次郎を探すため、
参謀本部のタイピストとなった雪子でしたが、
元の勤務先のイギリス人社長(ピーター・ウィリアムス)
「次郎は銃殺された。酷い陸軍に仕返ししよう」とそそのかされ、
図らずもイギリスのスパイになってしまうのでした。
かたや、イギリスの「暗号コードブック」を手に入れた次郎は
直後に暗号が変更された原因が
雪子が流した情報によるものだと知るのでした。

戦争に翻弄された恋人たちの
非常にやるせない悲劇なのですが、
次郎の落ち着きぶり、というか冷淡さが
嫌な後味を残します。

なんとか雪子を逃がしてやれないかと、
またしても情に厚いことを言った草薙中佐が
直後に「いっそのことお前の手で殺してやれ」と
よっぽど酷な提案をすると
すんなりと受け入れる次郎。
自分の軍服を婚約者の貯金であつらえる冒頭のくだりからして
どうも次郎には人間的な情念が感じられません。
スパイの訓練を受ける前から
次郎には他者への愛情や生への執着が
欠落しているように思えるのです。

それこそが市川雷蔵の
浮き世離れした魅力なのかもしれませんが。

薬を盛られても、
次郎を信じたまま死んでいく雪子が痛ましく切ない。
かなりの変化球ではありますが、
やはりこれも戦争の冷酷さと滑稽さを
表現した作品ではないでしょうか。





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