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ザ・スクエア 思いやりの聖域

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(原題:The Square 2017年/スウェーデン・ドイツ・フランス・デンマーク合作 151分)
監督・脚本/リューベン・オストルンド 製作/エリク・ヘンメンドルフ、フィリップ・ボベール 撮影/フレデリック・ウェンツェル 美術/ヨセフィン・オースバリ 衣装/ソフィー・クルネゴート 編集/リューベン・オストルンド、ヤコプ・セカー・シュールシンガー
出演/クレス・バング、エリザベス・モス、ドミニク・ウェスト、テリー・ノタリー

概要とあらすじ
「フレンチアルプスで起きたこと」で注目されたスウェーデンのリューベン・オストルンド監督が、2017年・第70回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞したヒューマンドラマ。アート界で成功を収めた男性がさまざまなトラブルに見舞われる様子をエレガントかつ痛烈な笑いを込めて描き、他者への無関心や欺瞞、階層間の断絶といった現代社会の問題を浮き彫りにした。現代アート美術館のキュレーターとして周囲から尊敬を集めるクリスティアンは、離婚歴があるものの2人の娘の良き父親で、電気自動車に乗り、慈善活動を支援している。彼が次に手がける展示「ザ・スクエア」は、通りかかる人々を利他主義へと導くインスタレーションで、他人を思いやる人間としての役割を訴えかけるものだ。そんなある日、携帯電話と財布を盗まれたクリスティアンは、その犯人に対して取った愚かな行動によって予想外の状況に陥ってしまう。出演にテレビシリーズ「マッドメン」のエリザベス・モス、「300 スリーハンドレッド」のドミニク・ウェスト。(映画.comより



陽気なハネケ。

家族を守らず、反射的に雪崩から逃げてしまった主人公が
じわじわと執拗に懲らしめられる
『フレンチアルプスで起きたこと』
リューベン・オストルンド監督作、
『ザ・スクエア 思いやりの聖域』。

またしても意地の悪い映画をお作りになられたようで。
ただし、オストルンド監督の作品は
そこはかとないユーモアにあふれているのが特徴で
いわば、陽気なハネケ。

「あの男に殺される!」と助けを求めて叫ぶ女性と出くわした
美術館のキュレーター、
クリスティアン(クレス・バング)
女性の相手をしているうちに
スマホと財布、それにカフスボタンまで
盗まれてしまいます。
のっけから善意が裏目に出る皮肉な設定。
本作はこのような善意と悪意の裏返し
さまざまなエピソードを通じて繰り返します。
また、災いの当事者だけでなく、
「傍観者効果」によって周囲の人々がもたらす、
消極的行動、もしくは積極的無関心までをも
独特ないやみったらしい語り口であぶり出していきます。
(大声で騒いでいるほうがかえって他人の注目を浴びない、
 ということを利用して、逃亡しようとする
 コメディ映画を観た記憶があるけれど
 なんの映画だったか……)

単純にスリの被害に遭ったのだから、
警察に届け出ればいいのにと思うのですが、
なぜかクリスティアンは、スマホのGPS機能を利用して
自力で盗品奪還をもくろむのです。
彼が警察に通報するとまずいことがあるわけでもなく、
ここはかなり疑問。
ま、それじゃお話にならないのかもしれませんが
そのほかのエピソードにも
かなり作為的に「あつらえられた」印象はぬぐえません。

それはともかく、部下のアイデアで
目星をつけた低所得者層が住むマンションの各部屋に
かたっぱしから「盗んだものをコンビニに届け出ろ」という
脅迫状を配ることに。
部下とのグズグズなやりとりもさることながら、
センサーで反応するマンションの廊下の照明が妙に小刻みで、
クリスティアンの焦りを煽ります。
すると数日後、財布とスマホが無事に返却され、
作戦成功かと思いきや、
泥棒扱いされたと激高する少年が現れ、
クリスティアンは追い詰められることに。

かたや、クリスティアンが目下計画している展示会は
地面に白線で書いた四角の中に入った者は
「すべての人が平等の権利を持ち、公平に扱われる」という
コンセプトの作品。
この「ザ・スクエア」は監督自身が
実際に行なったアートプロジェクト
なんだとか。
しかし、そのあまりに牧歌的な「正しさ」では
訴求力に足りないと考えた広告代理店は
より過激な「炎上狙い」の広報戦略を練るのでした。
現代美術に対する揶揄は大いにあるけれど、
本作の本質はそこではありません。
広告代理店が考え出したPR動画は
「ザ・スクエア」に入った貧しい少女(金髪)が
木っ端みじんに吹き飛ぶ
という、
作品のコンセプトとは真逆のもの。
しかし、スリ問題で心ここにあらずのクリスティアンは
内容を確認せずにスルーしてしまい、
PR動画が世に出てしまいます。
当然、炎上。
話題性だけを重視する広告代理店は大喜びですが
批判を浴びたクリスティアンは窮地に立たされるのでした。

とまあ、嫌みなショート・コントのつるべ打ちなのです。
とくに、赤ん坊の泣き声やスマホの着信音、
よくわからないアート作品が放つノイズ

ことごとくシーンをひっかきます。
正直、赤ん坊が泣いていては会議の邪魔になるのですが
職場に赤ん坊を連れてくることは否定できないがゆえの
なんともむずがゆいいらだち。

これと同じエピソードでより過激なのが、
インタビューの最中に
「出てけ!」「おっぱい見せろ!」「マ●コ!」と
手をたたきながら叫ぶ観客。
この人物は病気だということでしたが、
意図せずに卑猥なまたは冒涜的な言葉を発する
「トゥレット障害」というものがあるそうで
なんとも厄介です。
要するに、彼が発する汚い言葉は赤ん坊の泣き声のようなもので
病人(赤ん坊)だからといって排除してはいけない、
というわけなのですが、
これだけインタビューの進行を阻害してもなお
トゥレット障害の人を同席させるのは
さすがに違うんじゃないの? と、
なんともはや、ビミョーなのです。

極めつけは、美術館のパトロンたちが集まった
パーティーに登場した猿人パフォーマー(テリー・ノタリー)
「ここはジャングルです。彼は凶暴ですが
 堂々としている人には襲いかかりません」という紹介で
現れた猿人パフォーマーを
最初のうちは微笑ましく見守るセレブたち。
しかし、それだけならただの面白い猿まね芸人です。
徐々にエスカレートする猿人パフォーマーは
会場の空気を凍り付かせ、挙げ句の果てに
ひとりの女性の髪を引っ張り、のしかかるのです。

猿人パフォーマーの行為を芸術だとすれば、
野生=反人間性をコンセプトとしているであろう
彼の芸術的行為は全うされているはず
です。
しかし、パーティーに集まった人々が考えている芸術とは
額縁(=スクエア)によって制御されたもの。
猿人パフォーマーの動向を身を固くしてうつむくパーティー参加者は
自分は関わりたくないと願いながら、
胸の内で「これは芸術なんだ」と念仏を唱えていたことでしょう。
ところが、常軌を逸した猿人パフォーマーに
ひとりの男性が立ち上がると、
それまでうつむいているだけだった男性たちが
一気呵成に猿人パフォーマーに襲いかかるのです。
これぞ「炎上」の構図ではないでしょうか。

同じことをより具体的に示したのが
「ザ・スクエア」のPR動画により辞任へと追いやられた
クリスティアンの辞任会見。
PR動画の内容に関与していなかったと釈明しても
憎悪と嘲笑をもとに
クリスティアンに対する個人攻撃を繰り返す記者(?)たち。
責任者としてクリスティアンが処分されるのは当然だし、
内容に関与していなかったことに対する責任を問われるのは
仕方ないとしても、
PR動画の問題を追及されるとともに、
逆にPR動画について釈明したことを
お前の判断で表現の自由を蹂躙するのかと問いただされ、
もう、八方ふさがりのクリスティアン。
「正当に」非難してもかまわない相手をターゲットにしたときの
容赦ない全否定。

現代あるあるですね。

だらしないところはあるにせよ、
そもそもクリスティアンは卑劣な悪党ではなく、
むしろ「善人」です。
少なくとも善人でいたいと願っているはず。
(かろうじて、砂のインスタレーション作品が
 掃除夫によって壊されたときに
 事実の隠蔽を計りましたが、
 まあ、あんなもん、誰がどのように砂を盛っても
 同じですよ)
だからこそ、脅迫状の不当さを訴えてきた少年を
階段で突き飛ばしたことに
「助けて」という幻聴が聞こえるほど良心の呵責に耐えかね、
彼の元を訪れて正式な謝罪をしようとしたのでしょう。
しかし、彼の善意は報われませんでした。

若干、箱庭的ではあるものの、
嫌なニュアンスを紡ぎ出す手腕は卓越していると思います。
チンパンジーを飼っている女性記者から
理不尽に詰問されたりして
さんざんな目に遭ったクリスティアンでしたが、
自分を見つめ直した彼に、幸あれ。





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